デートという名のおでかけ ①
土曜日がやってきた。それまでの間に、花音にプレゼントの存在を知られたらと少しだけハラハラしていたが、なんとか当日までプレゼントのことを悟られることはなかった。
その当日の日、花音は朝から俺の部屋にやってきた。俺が寝ているうちにもう朝食の準備をしていて、
「きー君、起きてください」
眠っている俺の事を起こしにきた。
「……ん」
「きー君、寝ぼけてます? 可愛いー。起きてくださいよー。今日はデートの日ですよ。デートの日」
そんな大きな花音の声に、俺は目を覚ます。
そうすれば、にこにこと笑っている花音の顔を見て、朝かと目を覚ます。
パジャマのまま、椅子に座って花音の作ってくれた朝食を食べる。花音もまだパジャマのままだ。隣の部屋だからとパジャマで家に入り込んでいい物だろうかと思うが、花音が気にしていないならいいか。
「きー君、今日はデートですよ。9時ぐらいから出かけましょうね。それまでに私もきっちりおしゃれしますから」
「……あー。そうだ。花音」
どのタイミングで花音にプレゼントをあげるべきかというのが分からなかったが、花音が気に入ってくれて帽子をかぶってくれたらなと思って、出かける前に渡すことにした。
朝食を食べ終えて急に部屋に戻る俺に花音は不思議そうな顔をしている。
俺は洋服ダンスの中にしまいこんでいたプレゼントを持ってくる。
後ろに隠して持ってきたけれど、花音は俺が何かを持ってきたことが分かったのか、「なんですか、それ」と朝から元気だ。
「……花音、これ」
「おお、なんですか、これ!!」
ラッピングしてもらったプレゼントを見て、花音はキラキラした目を向けている。
「いつも世話になっているから、プレゼント」
「本当ですか? わー、開けます開けます!!」
花音は俺からのプレゼントしって嬉しそうに笑う。そしてラッピングをあげる。
そして中に入っている帽子が出てくると、花音は目を輝かせる。
「わー、帽子ですか!! 可愛い帽子!!」
花音、思った通り大興奮である。パジャマなのに被ってみて、「似合います?」と聞いてくる。ついでに花音は写真を撮ってほしいというので、撮っておいた。
それにしても花音にやっぱりこの帽子似合うな。買って良かったと思った。
「きー君、私、この帽子をデートで被りますね!! ふふふ、きー君、ありがとうございます。私うれしかよー」
にこにこ笑いながら、花音はずっと帽子をかぶっている。
9時に出かける予定で、今はまだ7時半。まだここでのんびりするという花音は、ずっと帽子をかぶったままだ。
帽子をかぶったまま、ソファに座り、朝からニュースを見ている。
「ふふふふふ~ん」
鼻歌まで歌ってご機嫌だ。
「喜んでもらえて良かったよ」
「喜ばないわけないじゃないですかー。だってきー君が私のために選んでくれたものですよ? 私はきー君とデート出来るだけでも楽しみだって喜んでいたのに、きー君がプレゼントまでくれるなんて!! 私嬉しくて仕方なかもん。きー君は私を幸せにしてくれますね」
「そうか……」
いや、本当、そこまではっきり言われると照れる。花音がこんなに喜んでくれると嬉しいけど。
「ふふ、きー君、照れてます? 私きー君のこと大好きですよー? きー君といると楽しいですもん!!」
花音が俺をもっと照れさせようとそんなことを言っていた。何だか面白くないので、仕返しをすることにする。
「はいはい。俺も花音の事大好きだぞー。楽しいからな。これだけ俺のあげたものを喜んでくれるの可愛いしなー」
若干恥ずかしいが、こっちばかり恥ずかしがっているのはなんか嫌だし、本心を口にする。
「な、きー君!!」
花音が恥ずかしがった。花音はこちらを向いて、「むぅー、きー君は私のことを凄い甘やかしていて、甘やかし上手です!! そんなに甘やかし上手で優しくて、かっこいい先輩ですよー。きー君と一緒だと、凄い楽しいですもん。きー君といると幸せなんですからねー」と仕返しみたいにまた花音が言う。
顔を赤くしそうだけど、このままずっと恥ずかしがらせられるのもやっぱり嫌なので「花音は――」と俺も続け、なぜか互いに褒めあい? みたいなのになった。あとから二人して我に返って、休日の朝から何をやっているんだと顔を見合わせて笑ってしまった。
「じゃあきー君、私着替えてきますね!!」
「おう。俺も着替える」
「きー君のおめかし楽しみですよー。私も悩殺しちゃいますからね!! 帽子もかぶりますね!!」
8時すぎになって、互いに着替えをすることになり、花音は部屋へ一旦戻っていくのだった。