表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/88

体育祭明けの学園

「朝から花音ちゃん見れて幸せだった」

「なんかいつもより着く時間少し遅いよな」





 ……教室に辿り着いたら、花音の話がされていた。それにしてもアレか、俺の家でのんびりしていたからいつもより通学が遅くなったとか、そんな感じなのだろうか。





 それにしても学年も違うのに花音の話がされていて凄いな思う。


 本当に花音が朝から俺の家にいたとか、毎日のように俺の家に入り浸っているとか、そういうの知られたらどうなるんだろうか……とハラハラする。





「喜一、おはよう」

「ゆうき、おはよう」





 ゆうきと浅の挨拶をすれば、においがしたのか「カレー食べたのか?」と問いかけられた。





 カレーは匂いがつくからな。花音は匂いを落とすって言ってなんかしていたけれど、朝から「嗅いでみてください」と腕を差し出されて困惑したっけ。

 なんだか、どんどん花音が益々無防備な様を俺に見せている気がする。年頃の女の子としてそれはいいのだろうかといった気持ちになる。





「昨日はカレーを大量に作ったからな。しばらく俺の家はカレーだ」

「へぇ……」





 ゆうきは含みのある笑みを浮かべたかと思えば、「そうそう」と続ける。





「これやるよ」




 そう言って渡されたのは、封筒である。

 中身を取り出して慌ててしまう。






「ゆうき、これって」

「体育祭の写真。写真部が販売してたから買ってきた」

「……何で俺のも?」





 小声でこそこそと問いかける。





 前に凛久さんが花音の体育祭の写真を欲しがっていると俺が言った事をゆうきはちゃんと覚えていたらしい。

 それでちゃんと写真部から花音の写真を買ってくれたらしい。

 ……それはいいんだけど、何で俺の写真もあるんだか。写真部は平等に色んな写真を撮っていたみたいで、俺が競技を行っている写真も撮っていたようだ。しかし、何故俺の写真までこの封筒に?






「欲しいかと思って。あの人が」

「あー……」





 ゆうきの声にそんな声が漏れる。確かに花音は俺との記念写真とかいってパシャパシャスマホで撮っているぐらいだし、俺の写真も欲しがるかもしれない。

 ……花音が喜ぶかと思えば、渡すのもアリか、と思うのは大分俺が花音の喜ぶ顔を見るのが好きになっている証かもしれない。





「ゆうき、これの代金は?」

「いいぞ、そのくらい気にしなくて」

「いや、結構あるぞ。気にするだろ」





 ゆうきは代金は払わなくていいといいが、なんだか悪い気持ちになる。代わりにゆうきに何か出来ないかと関あげて一つ思いついたのは、




「ゆうき、今夜、カレー食べに来ないか? これのお礼に」





 ゆうきに夕飯をごちそうするということである。まぁ、ごちそうとはいってもカレーだけど。





「いいのか?」

「ああ。構わないだろう。一応確認はしとく」





 夕食にゆうきを呼ぶなら花音に連絡したほうがいいだろう。花音とゆうきは会ったことがあるとはいえ、いきなりゆうきが居たら花音も驚くかもしれない。

 そう思って早速花音に連絡を取る。






『今日の夕飯、ゆうきも一緒でいいか?』

『問題ないです!! カツ焼いてカツカレーにしましょう!!』

『そうだな』





 花音は普通に了承してくれた。まぁ、花音が断るとは全く思っていなかったけど。

 俺が連絡を終えて、「いいって」とゆうきに向かって口にすれば、ゆうきは「当たり前のようにいるな」と笑いながら言う。





 ……花音が夕食に居るのは本当に当たり前になっている。体育祭の日からは、朝食も。……結構花音がいるの当たり前になっているなと思う。俺も楽しいから問題はないが。





「何の話しているの。上林君、永沢君、楽しそうだけど」





 ゆうきと話していたら明知が近寄ってきた。話しかけてくるとは思っていなかったので驚く。封筒をさっさと鞄にしまっておいてよかった。花音の写真を購入している生徒は多いだろうけど、見られてややこしいことになったら面倒だ。

 それにしても体育祭で少なからず話したからだろうか、クラスメイトとの距離が少しだけ縮まった気がする。





「今日は喜一の家でご飯をごちそうされるんだよ」

「そうなの? 上林君と永沢君は仲良しね。羽目は外さないようにね」





 明知はにこにこと笑う。クラスメイトが仲よくしているのが嬉しいらしい。羽目をはずさないように? ってなんだろうと不思議そうな顔をしてしまえば、明知が小声で言う。





「体育祭の後の集まりで、羽目をはずしてお酒を飲んでいた生徒もいたみたいなの。それで見つかって数日の停学処分にされたみたいで……」

「そうなのか? 知らなかった」





 盛り上がってお酒を飲んだ生徒がいたらしい。それでたまたま学園に知られてしまったのか、停学になっているらしかった。それもあって明知はそういうことを言ったらしい。





「大丈夫だ。俺も喜一もそういうことはしないから」

「そうね。上林君も永沢君も結構真面目だものね」





 体育祭で真面目に競技に取り組んでいたからか、真面目認定がされているらしい。俺が真面目かっていうと、普通だと自分では思う。特に授業中に遊んだり、寝たりはしないけど、真面目に聞いているふりして別のことを考えていることはあるし……、成績も可もなく不可もなくって感じだしな。





 明知はその後、にこにこと笑って席に戻っていくのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ