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お出かけ①

 花音と一緒にお出かけをする。

 不思議な気持ちになりながら、嬉しそうに笑う花音を見る。




「きー君、バレないようにこの格好の時は違う呼び名をしてくださいね! かのちゃんとか、のんちゃんとかでいいですよ!!」

「ノリノリすぎないか?」

「ふふふ。きー君の心地よい低音でかのちゃんやのんちゃん呼びって想像しただけでもこう……良い!!」




 何だか花音は変装(そう言っていいのか分からないが)にノリノリだった。そして俺に違う呼び方で呼ばれるのを望んでいるらしい。



「かのちゃん」

「……いいですねっ!」





 よく分からないが、花音が喜んでいるので出かけている間はかのちゃんと呼ぶことにする。

 それにしてもただ出かけているだけなのに機嫌がよさそうで、こちらまで笑顔になる。




「それでどうするんだ。本屋行くか? ネカフェで読むか?」

「本屋行きましょう!! ネカフェでもいいですけど、出来れば欲しいなーと」

「何巻まで出ているんだ?」

「ニ十巻らしいです!!」





 結構巻数が出ている。花音は全巻購入するつもりだろうか。結構な値段になりそうだが……、そのあたりは花音が自分で考えるか。



 しばらく花音と二人で歩きながら会話を交わす。

 朝早いというのもあってすれ違う人も少なくて助かる。





 10分ほど歩いて目的の本屋にたどり着いた。





 ショッピングセンターに入っている大きな本屋である。俺も本を買うときは此処を訪れている。



 俺と花音は真っ直ぐに本屋に向かった。丁度開店してすぐだったので、客もそんなにいない。

 花音が目的としている漫画はアニメが放映される前だというのもあって、平積みされていた。



「素敵な絵! 表紙からして面白そうですね!!」



 コミックスを手に取って、花音は声をあげる。その目は興奮したように輝いている。


「そうだな」



 確かに花音の手にしているコミックスは、躍動感のある表紙が特徴的で面白そうだと素直に思えるものだった。

 花音はニ十巻全てこの本屋にそろっているのを確認して悩んでいるようだ。何巻まで買うかということだろう。

 少し悩んだ様子を見せた花音ははっとしたように俺の方を見る。




「きー君、きー君」

「なんだ?」

「きー君も『煉獄戦記』気になりますよね?」

「そうだな。読みたいとは思っている」

「じゃあ、半分ずつ買いませんか?」

「半分ずつ?」

「そうです! 一巻~十巻までを私が買って、十一巻~二十巻をきー君が買うみたいな! 流石にニ十巻までの大人買いはなぁーって思ったので」

「それ、縁が切れた時にもめないか?」

「もめませんよー。そもそもきー君と縁を切る予定ありませんし。もしそんなことになったら互いが持っていない巻数を読みたいなら買いなおせばいいだけですし。駄目ですか?」



 高校生でコミックスを二十巻大人買いは確かに厳しいものがある。俺も花音も親のお金で生活している身であるし、漫画のために仕送りを増やしてくれというのもアレだしな。

 それに花音はすっかり『煉獄戦記』を全巻読みたい気持ちになっているらしい。




「じゃあ、そうするか」

「やったー。きー君、ありがとう!!」



 俺も読みたかったし、花音が喜んでいるしいいかと俺も十冊分購入するのであった。


 会話をしながらレジに並んで十冊ずつ二人で購入したら、店員さんに「可愛い彼女さんですね」なんて言われてしまった。否定はしたが、生暖かい目で見られてしまうのだった。



「きー君、本当にありがとうございます!! 家に帰ったら読みましょう」

「ああ。俺も花音――かのちゃんの後に読む」



 花音と呼んでしまって、かのちゃんと慌てて直す。いつも花音と呼んでいるから気を付けないとかのちゃん呼びは出来ない。

 花音は俺がちゃんとかのちゃんと呼びなおしたのを見て、にっこりと笑った。本当にノリノリだよなぁ……。



「きー君、このまま帰りますか?」

「いや、ご飯がないから買い物してから帰ろう」

「あ、そうですね。ショッピングモールの食品エリアは一階ですね。行きましょう」

「ああ。かのちゃんは何を食べたい?」

「そうですね、何でもいいですが……見てから決めましょう。きー君は何か食べたいとかありますか?」

「そうだな。カレーでも作っておけば数日作らずに楽かなと」

「いいですね!! 私もカレー食べたくなってきました」

「沢山作っておけば、数日は夕飯それでいいし」

「ですね!! あ、でもきー君家ってそこまで大きな鍋ありませんよね?」

「一人暮らし用の鍋だしな」

「じゃあ、大きな鍋も買って帰りましょうよ。二人で使うし割勘で買いましょう!!」



 花音はそう言って笑いながら俺の手を引く。

 そういうわけで先に鍋を買いに向かうのだった。


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