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体育祭①

 天気は晴天だ。

 今日は体育祭が行われる日である。運動をすることが得意ではない俺は、それなりに頑張ろうと思っている。




 花音も朝から元気に、通学前に俺の家にやってきたものだ。朝からやってくることが初めてだったから正直驚いた。

 朝からやってきた花音はテンションが高かった。






「きー君、今日は体育祭ですね!! 私頑張るので、ちゃんと見ててくださいね」

「……わざわざそれを言いに来たのか?」

「そうですよー。きー君が見守ってくれるって思った方がやる気出るんですもん。私もきー君のことしーっかり見ますからね?」

「……そうか」

「そうですよ! きー君、写真撮りましょう!! 体育祭できー君の写真撮れるか分からないから今のうちに撮りたいのです!」

「そんなもの取ってどうするんだ?」

「思い出にするんですよー。あとはお兄ちゃんに自慢します!!」







 よく分からない所で凛久さんと張り合っている花音であった。そんな会話をして、一緒に朝食を食べてから時間をずらして通学した。花音のことを「行ってらっしゃい」と見送るのは何だか新鮮な気持ちになった。





 さてそんな花音とのやり取りを終えて、今は学園にいる。





「上林君、おはよう」






 笑いかけてくれるのは、学級委員の明知である。明知は子の体育祭を皆でやりきりたいとクラスメイト全員に「頑張ろうね」と声をかけている。

 こうやって一人一人声をかけてもらえると、やる気が出るものである。実際に少しだけやる気がなさそうにしていたクラスメイトも、「頑張るよ」とやる気を出していた。というか、一人一人のことをちゃんと見て声をかけるってよく考えると凄いよな。俺は真似出来ない。





 グラウンドに向かって、開会式がこれから行われることになっている。







「天道さん」

「天道さん、体操服着てても可愛い」






 さて、そんな声が聞こえてちらりっとそちらを見る。花音がクラスメイト達に囲まれ、学年が違う生徒たちさえも花音をチラチラ見ている。





 聖母のようだと言える笑みを浮かべている花音を見ると不思議な気持ちになる。家でいつも表情豊かな花音を見ているからだろう。こういう花音を見るのも新鮮だとは思うが、違和感が大きいのは家にいる表情豊かな花音の方が共にいることが多いから当然と言えば当然である。とはいってもどんな花音も花音なわけだけど。







「花音ちゃん、本当に可愛いよなぁ。上林もそう思うだろ?」





 急に隣にいた倉敷にそんなことを聞かれた。






「そうだな」

「だよなー。本当、花音ちゃんはどんな格好をしていても可愛いよなぁ。俺、頑張って此処で良い所を見せるんだ」





 倉敷は花音に良い所を見せたいという思いであふれているらしく、そんな風に言っていた。


 開会式では、校長や生徒会長のあいさつなどが行われる。正直、そこまで真面目に聞いている人はほとんどいなかった。花音を含む、目立つ生徒に対して視線を向けていたり、眠っていたり、別のことを考えているような生徒が多かった。





 校長先生の話って、長いからなぁ。ただちらりっと見た花音は真面目に話を聞いている様子だった。実際に何を考えているかは不明だが。……目が遭ったら、少しだけ花音が笑った。そしたら周りの生徒が少しだけざわめいた。花音の影響力は凄いなと思った。





 準備運動も行われる。

 運動をするにおいて、準備運動をしていなかったら怪我をしてしまうこともあるからな。俺なりに頑張ろうと決めているので、真面目に行う。





 それが終わればクラスの応援席に向かった。クラスごとにテントがわけて建てられている形なのだ。花音のクラスのテントは結構遠い。ただ花音は目立っているし、周りの声でどこにいるかすぐわかる。





 花音に見ててくださいと言われたから、なるべく花音を見るように心がけようと思う。ちゃんと意識してないと、自分の出番以外はぼーっとしそうだしな。

 ……っていうか、花音は俺のこと見ておくとかいってたけど、俺が花音を見るのは楽だけど花音が俺を見るのって難しい気がする。と、そんなことを考えながら俺は体育祭は始まるのだった。

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