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話しかけられる

荷物を届けた件から、なぜか天道花音から視線を感じていたが俺は放置していた。


 こちらから聖母のようだと言われている隣人に話しかける気にはならなかったし、何か気になることでもあるのだろう。そのうち飽きるだろうと考えて早二週間。



 今も飽きずに何を考えているのか、天道花音は俺に視線を向けている。とはいえ、遭遇した時にだけ視線を感じるだけで、ストーカーなどといった案件でもない。ただ何故なのか見ているのだ。





「……飲み物が、無くなってきた」





 その日は特に暑い猛暑日だった。





 それもあって買っておいた飲み物をどんどん飲んでしまった。この暑い日に飲むものがないのは辛い。まだ昼間で太陽は元気に顔を出しているが、背に腹は代えられない。そう思って買い物に出かけることにした。

 暑い夏の日の日中に外に出ることは望んでいないことだったが、仕方がないとあきらめた。



 外に出てスーパーに向かい、買い物を始める。

 買い物をしていると正直言って目移りしてしまう。本来買う予定なのは飲み物だけだったはずなのに、お菓子やアイスなど、様々なものに目がいく。

 暑いからというのもあるが、誘惑に負けて必要以上にものを買い込んでしまいそうだった。


 しかし親の金で生活をしている身なので必要以上に買い込むことははばかれた。どうするかなぁと思いながらもチョコクッキーのカップアイスとバニラのカップアイスでどちらを食べるか悩んだ。アイス一つとペットボトルを幾つか買い込んで、マンションへと戻る。


 相変わらず暑い。

 汗が流れ、暑さにくらくらしてしまいそうになる。






 エレベーターを使い、自分の部屋のある階で降りる。そして部屋に向かって歩いていれば、視界に天道花音の姿が入った。


 自分の部屋の前にいる。誰かを待っているのだろうか。天道花音は俺に気づいて、こちらを見た。目が合った。





 まさか、俺の事を待っていたというわけではあるまい。そう考えながら天道花音の視線に気づいていないふりをし部屋に入ろうと思った。視線を外して、移動していれば、





「あの」






 まさかの、声を掛けられた。


 この二週間、なぜか視線は向けてくるものの話しかけることなどなかったため、話しかけられることはないだろうと思っていたので驚いた。


 恐る恐るといった様子で俺に話しかけた天道花音。

 此処には俺と天道花音しかいない。俺に話しかけていることは明確なので諦めて視線を合わせる。






 天道花音は、この前初めて話した時とはまた違う雰囲気だった。いや、学園でたまに見かける時とは違う雰囲気な気がする。何処か表情は硬く、なぜか緊張しているように見えた。






「……ええっと、何か用か?」

「……好きなんです」

「は?」




 好きなんです、と謎の発言をされたことに耳を疑う。意味が分からない。俺と天道天音が会ったのは、あの誤送された荷物を届けた時だけである。

 こんな言葉を美少女から聞かされれば勘違いしてしまうものもいるかもしれないが、俺は生憎そんな勘違いが出来るほど能天気ではない。






「はっ、ち、違いますよ!! 勘違いしないでくださいね!! 貴方のことが好きだとか、告白しているわけではありませんから!!」

「いや、それは分かっているけど」




 俺が驚いた声以上何も言わないのを、勘違いしていると思ったのか声をあげた天道花音に答える。





「私が言っているのは、貴方の声のことです!! その声、凄く好みなんです!!」

「はい?」





 声がすごく好みだ、などと突然言われて俺が驚愕するのも当然である。こんな美少女の後輩が急にそんなことを言ってくるなんて思わないだろう。


 というか、この日差しが暑い中で外で話しているのも気になる。手に持っている飲み物がぬるくなるし、アイスが溶けてしまうだろう。俺ははやくエアコンの効いた部屋の中に入りたかった。





「……暑いから話すなら外で話すのはやめないか? 俺は部屋の中に入りたい」

「そうですね!! では、上林先輩の部屋でいいですよ!! 入りましょう」





 ……年頃の女の子が、ホイホイ男の部屋に入っていいのか。そして俺の名前を知っていたのかという疑問も芽生えたものの、それより暑くて仕方がなかったので俺は突っ込まなかった。


 そして俺は天道天音のことを家の中へと入れることになった。

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