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後輩の兄の襲来 5

「泊まるのは明日休みだし、別にいいんですけど……、寝る場所どうしますか?」





 正直、泊りたいというのならば泊まってもらっても問題はない。凛久さんも花音に似ていて話しやすいし、今は凛久さんにとって俺は警戒して仕方がない相手かもしれないが、仲良くなれたらきっと楽しいと思う。






 俺の家ってそんなに広いわけじゃない。1LDKなので一人暮らしには十分な広さだが、ベッドとソファはある。あとは来客用の布団もあるが……。三人でどう寝た方がいいのだろうかと考えると悩むものだ。



 この前は花音がソファで眠ってしまったからそのままにしたわけだけど。というか、眠ってしまって泊まる以外で花音が俺の家に泊るとか想像もしていなかった。花音と仲良くなれた事も含めて、現実は予想外の事が多いと思う。







「はいはーい!! 布団とかあるなら皆で雑魚寝して寝たいでーす!! きー君とお兄ちゃんと一緒にこう、布団でゴロゴロしながらゲームしたりしてお話しながら眠ったら楽しそう!!」

「……いや、それはどうなんだ? 凛久さんと花音は兄妹だからいいとして……」

「なんですか、その顔―。年頃の男女な事を心配してるんですか? 大丈夫ですよー。お兄ちゃんいるし!! っていうか、きー君がそんな事をする人じゃないって知ってますしね。それに実家でも家族と一緒に寝たりたまにしてたんです。寂しくなると一緒に寝たいっていうとお母さんもお父さんもお兄ちゃんも一緒に寝てくれたんですよ!!」






 ……まぁ、家族が「一緒に寝たい」とか可愛く頼んだらそりゃあ喜んで他の家族は了承するだろう。

 でもそれって家族だからこそじゃないのか……そして、花音は好き勝手言っているが、凛久さんはそれでいいのだろうか。そう思ってちらりと凛久さんの方を見る。

 凛久さんは少し考えたような仕草をしていた。






「私は一人暮らしして寂しいんですよ!! だからベッドにぬいぐるみ沢山おいてるんです!! お泊りするなら皆でおしゃべりしながら仲良く過ごしたいんですよ!!」



 なんか凛久さんの反応を待っていたら花音は力説しだした。……家族と仲良く過ごしていたからこそ、一人暮らしで寂しいらしい。上目遣いで訴えてこられると、否とは言いづらい。

 花音って人にお願いする天才か何かかとも最近思ったりする。だって少なくとも俺は花音に頼まれるとあまり断る気にはならない。







「花音!! そんなに寂しかったのか!! お兄ちゃんがこれからちょくちょく見にくるからな!!」

「ちょ、お兄ちゃん!! いきなり抱き着かないで!! びっくりするやんか」

「ごめんごめん。あまりにも花音が可愛いから!!」




 急に凛久さんが花音の事を抱きしめて俺はびっくりした。

 驚いて目をぱちくりさせていると、凛久さんが得意げにこちらの方を向いて言う。







「ふふん。喜一、うらやましいだろう!! これは俺が花音と兄妹だからこそ出来る特権――」

「あ、もしかしたらきー君も私、抱きしめたかったりするんですか!! よし、変な事しないならいいですよ!!」

「って、花音!! 駄目だろう!! そんなに簡単に男に抱き着いて良い許可なんて出して良いわけないんだぞぉおお」

「ちょ、お兄ちゃん。耳元で叫ばないで煩さかよ!! 唾も飛ぶやんか、もー!!」




 いや、これは凛久さんに同意だ。変な事しないなら抱き着いて良い許可を出すとか駄目だと思う。本当に花音はすぐに人に心を許し過ぎだ。






「う、すまない。花音。とりあえず、そうだな。抱き着きの許可は花音が許しても俺は許さない。喜一は抱き着きたくても我慢してくれ」

「えー。私はいいって言ってるのに」

「いや、俺は抱き着かなくていいです」

「「なんで!?」」






 ……いや、何でそこで二人して同じ顔してこちらを見る。






「まさか、こんなに可愛い花音に抱き着きたくないとかいうのか!? 嘘だろ? 花音は思わず抱き着きたくなるほど愛らしいんだぞ?」

「まさか、こんなに可愛い私に抱き着きたくないんですか、きーくん、私の事嫌いなんですか!? 私はきー君に抱き着かれても構わないってくらいきー君の事、好きなのにっ!」

「……えっと、凛久さんは俺が花音に抱き着くの反対なんですか、賛成なんですか。あと花音はそう簡単にそういう発言をするのはやめた方がいいと言ってるだろう。花音の事は嫌いじゃないし、寧ろ楽しいし好きだけど、抱き着くのは違うからな? あと寝る場所の話していたんだから、脱線しすぎだから」






 そう口にしたら二人とも冷静になってくれた。何でこんな俺が花音に抱き着くがどうのこうのって話になったんだろうか……。






 それから最初の寝るときどうするのかって話になった。抱き着くというインパクトのある話をした後だからか、雑魚寝ぐらいはいいかと凛久さんの中でなったらしく、なぜかテレビの前で机などをどけて布団を二つ引いて雑魚寝する事になった。

 二つの布団に三人寝るのは狭くないか? と言ったのだが、花音は一緒に寝ると譲らなかった。しかも、真ん中に寝る気満々らしい。


 ……いいんだろうかと思うが、花音が楽しそうだしいいのだろう。


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