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夕飯と乙女ゲーム

 驚くほどにどんどん死んでいく登場人物たち。ヒロインが死ぬルートもいくつかあったり、攻略対象が死んだり、友人キャラが死んだり、ぶっちゃけ、やりながら死にすぎだろという突っ込みしか湧かない。




 なんとか一度ヒロインが死なずにエンドまでいけたが、それでは誰ともくっつけることは出来なかった。割と登場人物は死亡していたし。一旦そこで休憩がてらに夕飯を食べることにした。






 今日は生姜焼きである。

 作るのは天道がやってくれた。作ってくれている間も俺は乙女ゲームを進めていたので、少しだけ天道に悪い気もしたのだが、天道は寧ろ俺に進めてほしいとばかりに「夕飯は私が準備します!!」と言っていたのでお言葉に甘えた。







「俺、あまり死にルート多数のゲームやったことなかったけど、こんなに死ぬんだ」

「死ぬものは結構死にますよ。このゲームは主人公も気を抜くと死にますからねー。色々と考えてやらなければならないんです。その代わり、設定とか細かかったり、声優さんが豪華だったりもするんですけど。ルートによっては人が死んじゃうのって嫌な人は嫌かもしれないんですが、私は好きなんですよねー。結構、人は死ぬけど、楽しいですよね?」

「ああ。バンバン人は死ぬけど、ストーリーとしては楽しいな」

「楽しんでもらえているようで嬉しいです!!」





 天道はにこにこ笑いながら生姜焼きを食べている。俺が乙女ゲームを気に入った事がよほど嬉しいらしい。





「やりかけのギャルゲーよりもやっぱり難しいな」

「そうですね。あのギャルゲーは比較的優しいものだったので。今回の乙女ゲームはキャラクターがどんどん死にますからねー。っていうか、これ、今度アニメ化するとか言っているんですよね。どのルートでどんなふうにまとめていくのか凄く楽しみなんですよねー。一緒に見ません?」

「アニメ化か。それは気になるから見たい」





 このどんどん登場人物たちが死んでいく乙女ゲームがアニメ化かぁ、というのが正直な感想だ。

 俺は乙女ゲームが原作のアニメをそんなに見た事がないというのもあって、どんな風に作られていくのかというのがいまいちぴんと来ない。少しやっただけでもキャラクターが死んでいくものなので、アニメになっても死んでいくのだろうか。





「ですよねー。凄く気になっているんですよね。どんな風にストーリー進めてくれるかとか、最終的なエンドをどんなふうに持っていくかとか凄く気になりますよねー」





 天道はよっぽど楽しみなのだろう、目を輝かせている。






「冬の新作アニメに入っているんですよねー。一緒に見ましょうよ。そしてそれまでに是非ともやりこみましょう!」

「……おう」



 天道が冬になっても俺と仲よくする気満々な発言をしていて、そんな未来が来るのが想像が出来ない俺はとりあえず頷くだけ頷いておいた。





「上林先輩的にはどの攻略対象が好きとかあります? 友達になりたいと思うキャラとか、性格が好みってキャラとか。ちなみにこの中で私の推しは隠しキャラなので、上林先輩が隠しキャラを出現させてから語らせてもらいますねー」

「おう」

「それで、上林先輩は現状、どのキャラが好きですか?」

「今の所は……魔術師の真面目少年か。なんかいろいろ苦労しながら頑張っているみたいだから応援したくはなる」

「あー、わかります!! とっても可愛い頑張る美少年ってすごくいいですよね。あれで十六歳って設定って、中学生とかにしか見えなくて童顔美少年とか、本当可愛い良きキャラですよねー。家庭環境で苦労しているけれど、一生懸命頑張ってて真面目ですよねー。ヒロインの事も何だかんだ真面目だから放っておけなくて面倒みてくれたりして。めっちゃ可愛いですよね。たまに死にますけど」

「……こいつも死ぬのか。今の所死んでないが」

「というか、死なないキャラの方が少ないはずですよ。ある一定の条件満たすと死にますよ。どうせだったら死にルートも全部含めて攻略して、〇〇君の事をよく知ってもらいたいです!! あと〇〇君と結ばれるルートも是非やりましょう」

「とりあえずどの選択肢で死ぬか分からないから少しずつ試してみる」

「はい。そうしてください。色んなルートを試してみる事で、キャラクターたちや世界観について深く知る事が出来ますし、もっと楽しめますからね!!」






 天道は魔術師は推しではないらしいが、このゲームの登場キャラクターたちすべてが気に入っているようで、本当に楽しそうに話している。

 好きな事を話している天道は生き生きしていた。






「隠しキャラも是非出しましょうね。あ、もちろん、やりかけのギャルゲーの方も進めてほしいですけど。そしてそれらが完全攻略終わったらまだまだやってほしいゲームもあるのですよ!!」

「そうか」

「はい! あ、もちろん、ちょっとやってみて飽きたとかならすぐに言ってやめてもらって構いませんからね? 上林先輩、私がやってほしいとかいうとなんでもやってくれてる感があるので、ちゃんと嫌ならお断りしていいので」

「嫌ならちゃんと断るさ」





 あまりにも俺が天道のやりたいことを断ったりしないので、前に言われたようなことをまた言われた。が、流石に嫌なら断る。

 




 夕飯を食べ終わった後も、俺が乙女ゲームをやるのを天道はずっと横でみていた。





 夕飯の時に話していた魔術師少年を攻略しようとして死なせてしまったりしながら時間は過ぎていった。






「じゃあ、私帰りますねー。あと、その乙女ゲームも貸しておくので、進めれるなら進めちゃってください。じゃあ、また明日来ます!」

「ああ。また明日」






 そしてまた明日来ると宣言して天道は隣室に帰っていた。




 天道が去っていくのを見ながら夏休みは後四日ほどで終わるが、2学期に突入したら天道との関係はどうなるのだろうかと少しだけ考えるのだった。

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