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匂いで目を覚ます。

 食欲を誘うような良い匂いがして、俺は目を覚ました。

 寝ぼけた頭で、体を起こす。

 そしてリビングの方へ向かえば、予想していなかった声が聞こえてきた。






「あ、おはようございます。上林先輩!!」

「おはよう……って、天道?」





 寝ぼけたまま挨拶を返して、天道が朝から俺の家にいることに驚く。





「上林先輩、寝ぼけてます? 昨日はごめんなさい!! 私、眠ってしまっていたみたいで起きたら上林先輩の家でびっくりしました。掛布団までかけてもらって、ありがとうございます!!」





 勢いよく頭を下げてくる天道の言葉を聞いて、ああ、そういえばと俺は思い出す。そうだ。天道は昨日、俺がギャルゲーをしている間に眠ってしまっていた。そして何度呼んでも起きなかったからあきらめてそのままにしておいたんだっけ。



 一日眠ったら天道が俺の家で寝ていた事何て忘れてしまっていた。

 天道の言葉で少し、頭が目覚めた俺は返事をする。






「別に気にしなくていい」

「もー、上林先輩は本当に私の事を甘やかそうとしますね!! はっ、それとも誰にでもこんなに甘やかしてるんですか? 駄目ですよー? あんまり甘やかすと私みたいに調子に乗りますよ!! どんどん甘えちゃう女の子が増えちゃいますよ!!」





 なんか天道がよく分からないことを言い始めた。甘やかすとかそういうつもりもないし、そもそもそんな風に俺に甘えようとしてくる存在なんてそんないないだろう。





「何を馬鹿なことを言っているんだ。それよりも、この匂いは?」

「あ、そうそう、昨日寝てしまってまた迷惑かけてしまった! って思って朝食を作っておいたのですよ。みそ汁の素もあったので、作りましたよ!! なので、どうぞ、召し上がれ!!」

「……朝から天道は元気だなぁ。あと朝食作ってくれたのは、ありがとう」

「私は超元気ですよ!! 逆に上林先輩は朝だとちょっと元気じゃないんですね。まだ目覚めてない感じですか? 顔とか洗ってきてくださいよ。朝食はこちらで並べておきますので」

「……ああ」





 俺は朝から元気すぎる天道の声を聞きながら洗面所に向かった。顔を洗う。洗面所に立って、パジャマ姿のままなことを思い出す。俺パジャマのまま天道と話していたのか。……もう見られているししばらく着替えなくていいかななどと思いながらリビングに戻った。

 そういえば天道は服が昨日と違う、一度戻って着替えたりしたのかもしれない。





「「いただきます」」



 そして二人で朝食をとる。よく考えたら昨日の夕飯も天道と取り、朝食も天道と取っているのか……。なんかいろいろ妙なことになっているなと言う気分になった。



「上林先輩、朝食を食べ終わったらどうしますか? 上林先輩がよければまた台詞言ってもらったりしたいんですけど!! 是非とも朝から上林先輩の声に浸って養分を取りたいっていうか」





 まだ寝起きでそんなにしゃべる気の起きない俺は、天道は本当に朝から元気だなぁと思ってならない。



「……このままずっといるつもりか」

「はい! このまま今日は上林先輩と遊べたらなーって思います!! もしかして駄目ですか? 駄目ならはっきり言ってくださいね」

「いや、駄目ではなく、驚いただけだ。別に予定もないし、居てもらって構わない」

「本当ですか? わーい、ありがとうございます!!」



 天道は俺の言葉に無邪気な、子供のような笑みを溢して笑った。



「そういえば、上林先輩、昨日読んだ漫画、すごくおもしろかったです!! 〇〇が凄いかっこよくて、××も可愛くて――。上林先輩もそう思いません?」

「そうだな。俺はあのシーンが好きだ。××が攫われた時に助けに行く時に――」

「わかります。わかります!! あのシーンいいですよね!!」

「あの話は続編があって、今、家には――」

「え、続編? 読みたいです!! 出してください!!」

「おう。ご飯食べてからな」

「はーい」





 天道は昨日読んでいた漫画をいたく気に入っているらしい。俺も好きな漫画だから天道が気に入ってくれたのは嬉しく思う。自分の好きなものを好きだと言ってくれて、その話が出来るというのはとても良いことだ。

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