4.3話 チュートリアル③
『続いて、チュートリアル3、この世界とダンジョンについて、を開始します』
チュートリアル3、流石にこれでラストかな?
もう1時間くらいはチュートリアルに時間を使っているし、もうそろそろ終わりにしてもらいたい。
それにしても、1時間って、リアルでやる脱出ゲームはもちろん、普通のテレビゲームのチュートリアルですらそんなに時間をかけるゲームは無いと思う。このゲーム?の本番はどれだけ時間が掛かることやら……
嫌な想像はやめよう。
結局、俺は指示に従うしかできないわけだし、指示してくれてるだけ良心的だ。小説なんかじゃ、目が覚めたら急に荒野に投げ出されてるようなこともあるしな。
『説明をするため、一度テレポーターでリアクタールームまで戻ってください』
リアクタールーム?最初にいた部屋のことかな?
けど、あそこは酸素がな……
ま、まあ、流石にそれでゲームオーバーなんてことは……ないよな?
酸素が無くなる前に脱出しろ!みたいな脱出ゲームだったらどうしよ……
不安は残るが、ひとまずテレポーターへと向かうことにする。
……ただのドアだと思ってたけど、テレポーターってもしかしてエレベーターみたいな感じなのかな?後ろの空間とリアクタールームのサイズが噛み合わないな。
『チュートリアル用の仮アイテムは持ち込むことができません。ここで破棄してください』
破棄?えっと、その辺に置いとけばいい……のか?
今持ってるのはステータスタブレットとオブジェクトセレクターだが、この2つを捨てればいいのだろうか?
考えても仕方がないので、とりあえずその2つを適当な地面の上に置いてみた。
『破棄を確認しました。お進みください』
ふむ、とりあえず指示に従うか。というか、次のチュートリアルじゃ、あの2つは使わないってことなのか?
テレポーターに足を踏み入れると、最初の時と同じように後ろで扉が閉まり、直後に前の扉が開いた。1度目はびっくりしたが、流石に2度目はもう驚いたりはしない。
テレポーターを抜けた先は、最初の部屋、アナウンスによるとリアクタールーム。
さっきまで外にいたせいか、石で囲まれたこの部屋は最初よりも余計に窮屈に感じられる。
『リアクターの更新が完了しました。再確認のため再度リアクターに触れてください』
……ん?
えーと、それだけ?
チュートリアルはどうなったの?
リアクターってのは多分この丸いやつだよな……?
特にさっきと変わったところはないようだけど……
突っ立っててもしょうがないので、とりあえずリアクターに手を触れてみる。
『確認が完了しました。このリアクターをアイリス様のダンジョンリアクターとして登録完了しました。ステータスタブレットとオブジェクトセレクターが与えられました。リアクター下のストレージを確認してください』
え、ちょ、いつにもまして長いアナウンスだな……
それにしても、いろいろ気になるところはあるけど……リアクター下のストレージ?
もしかしてリアクターが乗っている台座部分のことか?
……お、マジか。開いた……中にあったのはステータスタブレットとオブジェクトセレクターだけか。
『リアクターについて説明します』
うん?チュートリアル3、この世界とダンジョンについて、じゃないの?
いきなりリアクターの説明なんだ。
『リアクターとは、エネルギーを使って様々なことをすることができる物体です。このエネルギーのことを、リアクターエネルギー、REと呼びます。リアクターは、ダンジョンにある間はREをため込み、成長します。ダンジョンから持ち出されると、リアクターは成長を止めます』
うん?うん。わかった。このチュートリアルは座学なんだな?うん。苦手。
『ダンジョンの外にある人間たちの組織、所謂国家は、自分達で使うためにいくつかのリアクターを保持しています。それらのリアクターは使われることによって徐々に蓄積REが減っていくので、ダンジョンにあるリアクターは資源として奪われます。ちなみに、リアクターの中でも特にダンジョン内にあるリアクターをダンジョンリアクターと呼びます』
うん。うん?このリアクターって確かダンジョンリアクターだよな?
『アイリス様は、このダンジョンリアクターを使ってダンジョンリアクターを守るためのダンジョンを作る、ダンジョンマスターとなってください。ちなみに、リアクターが無くなってもダンジョンマスターはダンジョンを作れなくなるだけですが、外の法ではダンジョンマスターは捕縛されたのち処刑されます』
……え、俺がそれやんの?
…………?いやいや、何言ってんだ俺!こんなのただの設定だろ?真に受けてどうする!
あ、でも、今までの流れ的にただの設定だとしても殺されそうだよな……
『ダンジョンは、外の世界とは隔離された別空間で、出入口以外の場所は外の世界とつながることはありません。ダンジョン内の別の場所から外の世界への入り口を作ろうとした場合、最初に作られた入口から相対的なに移動した場所に出入口が作られます。この世界は縦横60000000メートルの正方形になっていて、世界の端は反対側の端と繋がっています』
設定……だよな?
なんか、さっきから言われること全て、設定が作りこまれ過ぎてて訳が分からないんだが……もうちょっとわかりやすくできなかったのかよ。
『ダンジョンは、いくつかのエリアに分かれます。まず、このリアクタールーム、そして、第1階層です。階層は、REを消費して作ることができ、それぞれが別世界となっていて、階層間の移動はテレポーターを用います。ちなみに、外と繋がる出入口を作ることができるのは第1階層のみです』
ふんふん、なるほどね。
『ダンジョンを作成する際には、必ず出入口からダンジョンリアクターまで道を繋げてください。そうしないと、ダンジョンリアクターは余計なエネルギーを放出できなくなり、崩壊します』
要は、侵入者が来る。だからそれを撃退する。そういうゲームってことでいいのか?
ジャンルで言うとタワーディフェンスみたいな感じか。
タワーディフェンスはあんまりやったことないから自信ないなぁ……
『それでは、ダンジョンを作るにあたって、リアクターの機能を説明します』
また長くなりそうだな。
『ダンジョンリアクターには、ステータスタブレットを使うことでアクセスでき、REを使って様々なことができます。リアクターの維持に必要なREとダンジョンマスターが自由に扱えるREを分けて貯蓄しているため、仮にタブレットに表示されているREを使い切ってしまってもリアクターが崩壊するようなことはありません』
後先考えずに自由に使っていいってことね。
まあ、俺ならこんな説明なくても深く考えずに使い切ってたと思うけどね。
『ダンジョンリアクターは、1日につき1000REを生成し、ストックします。そして毎日24時になるとダンジョンマスターが自由に扱えるREとして加算されます。また、ダンジョン内の各階層には1日100のREを生成するREジェネレーターを設置することができます』
なるほど。REは1日1000ずつ増える、そしてジェネレーターを設置すればさらに貰える量が増える、と。
うん。これは、どう考えても数日単位で時間が掛かりそうだな……やっぱり誘拐なのかな?
『リアクターはREの生成の他に、REを使って特定のアイテムを生成すること、REを使って配下のモンスターを創造すること、REを使ってスキルを手に入れること、いらないアイテムを吸収させてREに変換することなどができます』
で、これはショップ機能?みたいな感じかな?
『そのほかにもいくつかの機能がありますが、この場で説明をすると時間が掛かりすぎるので、その他の細かい機能はステータスタブレットにマニュアルがあるので、そちらをご確認ください』
ちょ、説明投げるのかよ。
まあ、文字の方が理解しやすいだろうし、確かにこっちの方がいいのかな。
『これで、チュートリアル3、この世界とダンジョンについて、を終了します。ステータスタブレットに手をかざし、プレイヤーデータを登録してください。これ以降、このアナウンスが流れることはありません。初期REとして10000REがあるので、それを有効利用して頑張ってください。』
うん。
……え?
終わり?
なんか最後のチュートリアルだけえらい雑だな……
まあ、こうなったら後はマニュアルを読みこむしかないか。
えっと、なんて言ってたっけ?
ああそうだ!ステータスタブレットに手をかざせって言ってたんだったな。
じゃあステータスタブレットに……ああもう!さっきから髪の毛が邪魔!
じゃあ、改めて、ステータスタブレットに……え?
「今の、俺か……?」
ステータスタブレットの画面が点く前の暗い画面に一瞬だけ映りこんだ俺の姿は、俺の今まで信じ込んでいた世界をぶち壊すには十分な破壊力を秘めていた。