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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第4章 英雄の落日
97/120

97.ジャパン国軍vs魔王軍10万

【インパルス】


「はぁ。カインの懸念は良く当たるな…。」

「インパルス、カインはこの事態も予測していたの?」


エレナはインパルスへ質問した。そして、ジャックも同様の疑問を、持ったようだ。

誰にとっても完全に想定外の事態だった。ここにいるメンバーですら驚きを隠せないのだ。

部下や連合軍首脳にとっては、衝撃の出来事に違いない。

その事態にも関わらず、インパルスはまったく驚いていなかった。

事前に想定していたことなんだろう。


「そうですよ。まぁ、結界に閉じ込められるとは予想外だったようです。まぁ、どんな罠も内側から食い破ってくれるでしょう。」


ジャックは、豪快に笑った。結界は想定外だったのかもしれないが、カインが事前に把握をしていて、そのまま結界へ閉じ込められたのだ。

それは、この軍勢なら問題なく対処できるとの判断だからこそ、大人しく結界に閉じ込められたことの証拠なのだ。


「そうだな。カインなら可能だろう。よしっ、さっさと魔王の軍勢を倒すとするか。」

「ジャックさん、待って下さい。あくまでもギルド側ですので、インパルスが全面に出るべきですよ。」


インパルスは苦笑した。前にインパルスはエレナに、行軍しやすいよう建前をあげた。

今度は恩返しとばかりに、エレナがインパルスへ建前を優先させる。

インパルスとしては、どちらでも良い気もするが、せっかくの行為なので甘えることとするべきなのかもしれない。

しかし、インパルスは名より実を取るタイプであった。

だからこそ、あっさりと主導権をジャックへ渡す。


「いや、ジャックさんの号令に従いましょう。魔物の戦ってきた経験値が役に立つはずです。」

「任された!全軍に告ぐ!一人、10匹倒せばおしまいだ!いくぞっ!」

「うぉー!!」


目が点になるインパルスとエレナ!それもそうだろう。ジャックは号令をかけて、突っ込むよう指示しただけなのである。


「いや、作戦は!?」

「そんなものは、後から着いてくる!この場合は気合だ!」


ジャックは突撃した。それに釣られて、ジャパン国軍も突撃する。

その光景を見て、エレナはインパルスに話した。


「だ、だめね、あの人…。」

「まぁ、強そうな魔物だけ、こっちで間引きして、ジャパン国軍の経験値稼ぎに利用させてもらうか。」

「分かったわ。なら、どちらが多く倒すか勝負ね!」

「よしっ、分かった!というわけで、能力『宣誓と誓約』

我、敵を滅ぼす者となる。

我をそのために音速にさせたもう!」

「ずるい!私も、『言霊』!

体よ、羽のように軽くなって!」


インパルスは、エレナと離れたことをこの後、後悔する。

ソラトが様子見していることをインパルスもエレナも気付かなかったのだ。

ソラトは、ずっとチャンスを伺っていた。誰にも気づかれないようカインにとっての毒矢を仕込むために。


インパルスは、音速と化して魔物へ突っ込む。

その姿は一般人には速すぎて姿を捉えることができなかった。


「新技!ソニックブーム!」


衝撃波が魔物を襲う!

その一撃は、数百の魔物を一斉に倒す一撃となる。


エレナも負けてはいない。


「新技!『言霊』『威力1000倍』!」


単純な攻撃だ。しかし、威力が1000倍となる。

エレナの能力は、言霊だ。つまり、願いを口にすることで能力が付与される。

それは、自重しらずの無限の可能性を秘めた能力だった。

エレナの一撃に、数百の魔物が倒される。


ジャックも負けてはいない。


「さて、負けてはいられないな。『アースインパクト!』」


その攻撃は、普段からジャックが使う攻撃だった。

つまり、安定の強さを持つ一撃である。

奇はてらわない。強さには時によって幅がある。

強さが1000だとしたら、実際は900~1100の間を行き来するのが普通だ。

しかし、ジャックは常に1000付近であった。

その安定感こそがS級冒険者である源なのだろう。


そして、三人の前に恐るべき魔物が現れる。


インパルスの前には、SS級危険度の『巨大サイクロプス』が現れた。

早さには力で対抗されてしまう。巨大サイクロプスの一撃は、大地に穴を開けた。

仮にインパルスが、その攻撃をかすれば、それで終わってしまうほどの一撃を放つ敵であった。

何より攻撃力の低くインパルスにとっては、最悪の相手である。


エレナの前には、SS級危険度の『フェンリル』が現れた。

銀毛の狼だ。多彩な技に、多彩な能力で対抗されてしまうこととなる。

どんな言霊も、フェンリルの多彩な能力に対象されてしまう可能性があった。


ジャックの前には、SSS級レア度の『無限酒壺』が現れた。

使役すれば、無限に酒を作り出すと言われる魔物だ。

無限酒壺は、ジャックを見て、自らの酒を注いだ酒壺を置いて逃げ出した。

ジャックは、酒壺を回収する。

ジャックは、酒を飲み歓喜した。

あまりにも、美味しかったのだろう。死にそうになると、過去へ戻る能力が災いし、こんな時でも罠とは思わず酒を飲んでしまう。

そして、ジャックはその酒にあっさり魅力され、新たな酒を求めるため、無限酒壺を追いかけた。

当然、逃げる。

ジャックは、追いかける。


そして、ジャックは戦場から遠のいてしまった。

それを空高く飛んだインパルスが見かける。


「こら、ジャックさん!何をしているんですか!持ち場を離れないで下さい!って、もう聞こえないか。」


その時、インパルスとエレナの間には、巨大サイクロプスとフェンリルがいた。

それは、互いに状況が分からなくなる瞬間だった。


そして、一陣の黒い闇が戦場を横切り、エレナの前に現れる。


「やぁ、初めまして。君に悪意をばらまきにきたよ。」

「誰?」

「僕の名前はソラト。まぁ、覚えてなくてかまわないさ。」


ソラトはエレナに手をかかげた。

…。

そして、ほんの一瞬だけ時間が飛ぶ。


「…。あれっ?一瞬、気を失った?」


そこにはエレナしかいない。

フェンリルがエレナへ攻撃する。


「危ないっ!フェンリルの攻撃の仕業ね!気をつけないと!」


エレナは、フェンリルとの戦いに没頭した。エレナはソラトと会った記憶は残っていない。

もし残っていれば、カインが気づいただろう。こうして、エレナは知らずのうちにカインにとっての毒矢となった。


数分後、インパルスはエレナの状況が分からないことに危惧し、慌てて位置取りを変えるよう動いた。そして、エレナが見える位置になると、お互いの立ち位置に注意するよう目で促した。

そして、お互いに合流をすべく行動する。


「やっかいな相手だ。」

「お互いにね。」


インパルスは音速の一撃で巨大サイクロプスを攻撃する。しかし、その防御網を破れない。


エレナは言霊の能力で、炎熱地獄を剣にやどし、フェンリルを攻撃する。しかし、氷雪で炎熱は相殺されてしまった。


フェンリルは、巨大サイクロプスの後ろに回り、隙間から攻撃を始める。


「雷だと!?」

「任せて!避雷針!」


エレナは、短剣に避雷針の役割をもたせて雷を回避する。


インパルスは、音速で先にフェンリルを攻撃しようとする。しかし、巨大サイクロプスが攻撃しそうになり深追いできず、断念してしまった。


「仕方ないわね。これだけは使いたくなかったんだけど。」

「とっておきがあるのか?」

「えぇ、ひどく気が進まない技だわ。」

「そんなことを言っている場合か!」

「それもそうね。あとで、慰謝料はらってね。」

「はい?」


エレナは、インパルスを後ろから抱きしめた。


「へっ?」


素っ頓狂な言葉をあげるインパルス。


「能力『言霊』!我々の能力1000倍!」


インパルスとエレナの能力が1000倍となった。


「なっ!?」

「数十秒しかもたないわ。早くっ!」

「ソ、ソニックブーム!」


その一撃は、巨大サイクロプスを切り裂き、他の魔物も切り裂き、後方の山をも切り裂いた。

圧巻の一撃である。

そして、インパルスとエレナのステータスが元に戻る。


「な、なんて、無茶苦茶なんだ!」

「そうでしょ。これの弱点は、密着しないと味方に使えないことなのよね。」

「まさか、それで気が進まないのか!?」

「当たり前でしょ!慰謝料はどのくらいもらおうかしら?」

「ひ、酷すぎる…。」

「私に抱きつかれたんだから、一生、奴隷とか…。あら?」


そこには、あまりの一撃に怯える魔獣フェンリルがいた。


「くぅーん。」


あっけにとられるインパルスとエレナ。さっきまで凶暴だったフェンリルが、借りてきた犬のように大人しくなったのである。


「エレナ、どうやら使役できるみたいだぞ。」

「えっと、さすがにこんな大きな犬は飼えないかな。」


フェンリルは悲しそうだ。そして、少しだけ体を震わせて、大型犬までのサイズへと小さくなった。


「ほらっ、ここまで頑張ってくれているんだぞ!」

「わ、分かったわよ。フェンリル、私に仕えなさい。」

「わぅ。」


フェンリルは嬉しそうに鳴いた。

そして、エレナはフェンリルの飼い主となる。


「さてっ、残党を叩くか。」

「そうね!」


フェンリルは、少しばかり体を大きくし、エレナを自分の体に乗せた。


「乗せてくれるのね?なら、一緒に戦いましょう。」

「がぅ!」


後に、聖騎士エレナは、神獣フェンリルに乗り、戦場を駆け巡ったとされている。


インパルスやジャックの出番がないほど、見る者を圧倒的する力だったのだ。


フェンリルが咆哮する。魔物たちは身動きとれなくなる。

そこにエレナの一撃が入る。無抵抗に駆逐されていく。

途中からジャパン国軍の出番は、一切なくなってしまった。

見ていたものは、心が踊る。


「これが、クロノスナンバーの力か…。」

「さすが、魔王を討伐した方々の力だ。」

「いや、その方はもっと強いらしいぞ。」

「圧倒的じゃないか、我がジャパン国軍は。」


こうして、ジャパン国軍対魔王軍10万は、圧倒的なエレナとフェンリルの力によって、ジャパン国が勝利することとなった。



次回、『98.カインと二人の魔王』へつづく。

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