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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第3章 戦場の姫巫女
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94.【外伝2】ダンジョンを作ろう!

【リュクレオン】


「カイン、この本に出てくるダンジョンとは何じゃ?」


リュクレオンはカインへ問いかけた。


「ダンジョンに興味があるのか?

まぁ、この世界にはダンジョンって概念はないもんな。ダンジョンとは、魔物がひしめく迷宮の中に宝物や謎が隠されていて、ダンジョンボスに勝つと特別なアイテムを貰える場所さ。」

「ふーむ、なんだか楽しそうじゃな。

儂もダンジョンに行きたいぞ。」

「この世界にダンジョンはないんだ。行けないさ。」

「なら、作ればいい!そして、儂がダンジョン踏破をしてみるぞ!」

「無茶言うなよ。魔物やアイテムは、自然発生しない!ダンジョンは作れるわけないだろう。」

「ダンジョンモンスターは、やっぱ龍かの?色んな階層を作って、配置させ…。」

「聞いてないな、こりゃ。まぁ、時間あるし、付き合うか。」


なんの脈絡もない会話である。きっかけは、リュクレオンの思いつきであった。

二人にとっては、ただの日常会話の一部である。しかし、この思いつきが後の世の常識を覆すことになるなど、思いもしない二人であった。


こうして、リュクレオンとカインは、ダンジョンを作り始める。

それは、オルヴィスの世界にとって、初のダンジョンとなるものだ。

しかし、後に『悪夢の迷宮』と呼ばれることとなることを、自重を知らない二人は知るよしもなかった。


「さてっ、場所はどこにするかの?」

「まず、大事なのは、秘境にあるということだ。ジャパン国の北の山にある森を活用しよう。

麓の森に樹海を作り、その樹海の奥地に入口を作ろう。」

「それだと、誰も来れないぞ。そんなのは、嫌じゃ。」

「リュクレオン。それこそが男のロマンなんだ。」

「そういうものか?」

「そういうものだ。」


リュクレオンが危惧した通り、このダンジョンは数十年、発見されることはなかった。

本来は、最初のダンジョンであるはずが、最後のダンジョンと呼ばれることとなる理由が、カインのロマンが原因だった。


「さて、場所も決めた。

では、次は内容だな。リュクレオン、魔物やアイテムをイメージしておいてくれ。」

「イメージだけじゃ、どうしようもないだろう。」

「はっはっはっ。いるじゃないか。イメージを具現化できる男が。」

「ま、まさか…。」


カインは、にっこり笑って転移した。


「よぉ、ゼリアン!」

「カイン首相!?」

「いきなり、単体で来るとは。いいでしょう。決着をつけましょうか。」

「いや、そんなものは後だ。ちょっときてくれ!」

「はいっ?」


ゼリアンを連れてカインはリュクレオンの元へ戻ってきた。


「やはり、ゼリアン!?」

「おぅ、イメージを具現化できる男だ!

ゼリアンがいれば鬼に金棒だ!」

「あなた方は何を言っているのですか!?」


カインとリュクレオンは、ゼリアンにダンジョンを説明する。


「まったく、そんな児戯に付き合ってられません。

私は帰ります。」

「あぁ、やっぱり、その程度の男か。

神への道はまだまだだな。」


カインから神力が放出された。

それを見て、ゼリアンは苦々しい顔をした。


「神になるのに、そんな精神はいらないでしょう。」

「もちろんそうさ。だが、神から神へと認められると話しは変わる。」


ゼリアンは気付いている。99.9999999999999999999%の確率で嘘だと。

だが、その僅かな確率を引き当てる男を知っている。

決して0ではない限り無下にできることはできなかった。


そして、何より…。


「まぁ、私も少しだけ暇をしていたので、協力しましょう。」


ゼリアンは、少し退屈をしていたのである。


「そうこなくては。よしっ、リュクレオンがイメージしたものと俺がイメージしたものを併せて紙に書き出していく。」

「そんなものは不要です。イメージを魔力に付与して、私に流しなさい。」

「なるほどな。では、そうしよう。」


リュクレオンとイメージとカインのイメージを魔力にのせてゼリアンに渡していく。

しかし、そのイメージはゼリアンが想像したものとかけ離れていた。


「ちょっと!この世界で、こんなダンジョンはできるはずがありません!」

「具現化できないのか!?」

「当たり前です!向こうの世界のゲームに出てくるダンジョンはご存知ですね?

あれは、計算しつくされた演算処理と…、グラフィックと…」


ゼリアンが説明すること1時間…。


「…であるからにして、まず最初に0と1の…」


カインとリュクレオンは我慢できなくなった。


「うるさーい!ようは、問題なのは演算処理と具現化だろう!」

「作ればいいじゃないか!」

「ダンジョンコアとでも名づけるべき物じゃな!」

「そんな簡単に言わないで下さい!」

「細かな設定をしなくていい。ようは、ダンジョンコアが考えた物を一定のフィールド内で発生させればいいんだ。」

「あらっ、面白そうなメンバーでいるじゃない。」


そこに怠惰の魔王が現れた。


「魔王アセディア!ちょうどいいところに来た。

手伝ってくれっ!」

「いやよ。それより、とっておきの寝床はまだ用意できないの!?」


カインは、すっかり忘れていた。そして、名案を、いや迷案を思いつく。


「今から作るダンジョン内に作る予定なんだ。

だから、協力して欲しい!」

「ダンジョン?何それ?」


カインとリュクレオンとゼリアンは、魔王アセディアにダンジョンを説明し始めた。


「面白そうね。とっておきの寝床になりそうだわ。」


魔王アセディアは、究極の寝床になる予感がして、進んで協力を始めた。


「だろ?特定の場所にだけ、魔物を発生させることはできるか?」

「そのダンジョンコアに、魔王の力を少し込めて、結界で閉じこめれば大丈夫よ。」

「よし、そのプランで行こう!」

「そうなると、その魔物からドロップできるアイテムだな。」

「ふっふっふ。俺は色んなアイテムを普段から作っている。そのアイテムを使おうじゃないか。」


カインは、アイテムボックスから大量のアイテムを出した。

それは、後の世にとって、伝説級と呼ばれるアイテムの数々であった。

その中に転移玉があった。それは、後の世の人々にとって、のどから手が出るほど欲しいアイテムだった。


「それでも、数に限りがあるでしょう?」

「屑アイテムは、ゴーレムに錬金させればいい。」

「ドロップできるアイテムは、ランダムにすればいいのですね。

なら、カインが出したアイテムは、宝箱に入れて、魔物からはゴーレムが錬金した屑アイテムを入れることとしましょう。

どちらにせよ、魔物から素材が取れるので充分でしょう。」

「それもそうだな。なら、そうしよう。あとは、安全地帯の管理か。」

「カイン、話しがあります。」


そこに、神であるユニコーンが現れた。


「ちょうどよかった、ユニコーン様。お願いがあります。

ダンジョンの作成に協力して下さい。」

「ダンジョン?」


カインとリュクレオンとゼリアンと魔王アセディアは、ユニコーンへ説明を始めた。


「馬鹿馬鹿しい。そんなことに協力できるはずもないでしょう。」

「はぁ。神様なのに助けてあげた恩も忘れてしまったんですね。」


ユニコーンは、カインの助けがなければ、現世に具現化できるほどの神力は戻らなかった。

そう考えるとかなりの恩がある。神として恩は返すしかない。

何より…。


「まぁ、回復中は、ずっと暇をしていたので協力しましょう。」


ユニコーンは、暇を持てあましていたのだ。


「さすがユニコーン様。では、安全地帯を作るための神力と結界を協力して下さい。」

「カインもできるでしょうに。」

「人の力も混ざってしまうので、一点の曇りもない神力が必要なんです。そうでないと、中途半端な安全地帯になってしまうんですよ。」

「そういうものですかね。」

「あとは、ダンジョンに来た人の安全を守りたい。そんな方法あるのか?」

「さすがに、それは無茶ですよ。そんな死んだら元に戻るなんてのは。」

「死んだら元に戻る?似たような能力なら、知っているな。ジャックを連れてくる。」


カインは、ジャックのところへ転移した。

ジャックは、酔い潰れていた。

問答無用で連れてくる。


「んが?ここは…?」


カインもリュクレオンもゼリアンも魔王アセディアもユニコーンも、誰も説明しなかった。


「能力を解析させてくれ!」

「ぐごー。」


ジャックは寝てしまったため、勝手にやる。


「この能力の派生形をダンジョンに来た人に勝手に付与すれば、できますね!」

「よし、そのプランで行くぞ!」


ジャックを除く全員がダンジョンコアの元となる玉に力や思いを注いでいく。

それは、粒子を注いでいくような光景だった。


そして、完成に近づいたところで、リュクレオンがくしゃみをしてしまった。


「へっくしょん!」


リュクレオンのくしゃみはでかい。

ダンジョンコアに風圧がかかってしまった。


「気をつけて下さい!ダンジョンコアの一部が拡散したら、どうするんですか!?このダンジョンコアが漏れたら、数年後に新たなダンジョンが出来てしまいますよ。」


ゼリアンが怒った。

その時、全員が気付かなかった。カインが出した転移玉の一部が傷ついてしまったことを。

その転移玉は制御がおかしくなり、ダンジョンコアの一部を各地の複数箇所へ転移していく。

それは劣化版ダンジョンコアを生み出してしまう原因となった。


「なんか、おかしいぞ?さっきから、同じ作業をしている箇所がないか?」

「カインもですか?」

「気のせいじゃろ。もし飛散してしまったのなら、飛散した箇所を修復する機能を持たせればいい。」

「それもそうですね。」


全員は呑気に作業していく。そして、完成直前で転移玉の機能は失い、消滅した。

最後まで、誰もそのことに気づくことはなかった。


「よし、最後の仕上げよ。最強の魔物を出すよう力を込めるわ。」

「なら、それに負けないようにしないとな!」


全員が力を込めていく。

こうして、『悪夢の迷宮』のダンジョンコアは完成した。

しかし、一つだけ計算違いが起こる。それはジャックの能力だけが上手くコピーできなかった。

つまり、死んだらそれまでのダンジョンであった。


「さて、ダンジョンの詳細を作るか。10層ぐらいでいいか?」

「バカ者!100層じゃ!」

「考えるのも一苦労するぞ!?」

「それこそが、男のロマンじゃろ!」

「はいはいっ、なら付き合いますよ。」

「魔王アセディアの寝床は、ダンジョンコアと同じ場所に作るから、101層に作ろう。」

「ダンジョンで発生した魔物は、私の力の影響で深くなればなるほど強力になるわ。」

「龍も住まわせたいのぅ。」

「カイン、いいですか?実は私の話しというのは、妖精たちのことなのです。森が少なくなっており、住む場所の話しをしたかったのですが、そのための場所をこのダンジョン内に作らせて下さい。」

「いいんじゃないか?そのエリアは攻撃無効化エリアにしよう。そういえば、リリアが秘密研究所が欲しいと言ってたな。」

「なんというか、ダンジョンというよりも秘密基地じゃな。」

「ダンジョンの通路とは切り離し、転移ゲートを作れば、まさにそうなるな。」

「面白い発想ですね。そうしましょう。」


ダンジョンは、ダンジョン兼秘密基地となっていく。


「別空間にいるものは、ダンジョンマスターみない権限で、様々な場所へ行けるといいな。」

「個別部屋とダンジョンの行き来なら、いいと思うぞ。」

「ダンジョンといえば、あとはフロアボスですね。」

「最初は、初心者向けの階層にして、10階ごとにフロアボスを作ろう。」

「そこから、フロアボスを倒すと入口に戻れる機能が出現するとかもいいな。」

「よしっ、フロアボスも想像するか。ゼリアン、協力してくれっ!」


ゼリアンの力を使って、各々の思い描くフロアボスを作っていく。

更に創ったフロアボスに、自分たちの力を込めた。


「さぁて、試してみるか。」

「ちょっと、待って下さい。このメンバーで潜ったら、簡単に達成してしまいます。」

「それもそうか。なら、ゴーレムを遠隔操作するのは、どうだ?」

「それは、面白そうですね。」


全員分のゴーレムを作り、自身の力を少しだけ付与する。そして、遠隔操作してダンジョンを挑んだ。

しかし、まだ魔王アセディアが来たばかりなので、大した魔物は、現れなかった。

あっという間に階層をクリアしていく。


「なんだか、盛り上がったわりには、つまらないな。」

「そうだな…。やめるか。」

「そうですね。」


ゴーレムをオートモードにして、ダンジョン内に放置した。

それぞれの力の一部を付与したまま。


「よしっ、秘密基地として楽しむか。」


各々は、秘密基地としてダンジョンの攻略エリアから隔離された部屋を使っていく。


そして、ある時期、ダンジョンコアが暴走を始めた。

外部からの転移を受け付けなくなったのだ。

そして、ダンジョンコアは独自に進化を始める。


『悪夢の迷宮』は、こうして誕生した。

そして、最初の挑戦者が現れるのは、数十年先のこととなる。




【数年後の、とある冒険者たち】


「おい、こんなところに洞窟なんて、あったか?」

「記憶にないな。調査してみるか。」


ダンジョンには魔物が溢れていた。


「おいおい、魔物の巣窟かよ。」

「駆逐するぞ!」


冒険者たちは、魔物を倒していく。


「おいっ、見てみろ!魔物から、アイテムが出てきたぞ!」

「回復アイテム?」

「こっちには、剣だ!」


こんな報告が各地から、冒険者ギルドにあがってきた。


「ジャックさん、これは一体。」

「一体、何が起こっているんだ?何かの予兆か?」


ジャックは、酔っ払っていたため、関係者のはずが全く覚えていない。


「各地へ調査隊を派遣する。そのダンジョンの脅威度も入口の魔物から判断していくぞ!」

「無茶言わないで下さい!報告だけでも、100個はありますよ!」

「なんてことだ。少しずつ開拓するしかないな。

俺も出る!ここから一番近い洞窟へ向かうぞ!」


ジャックは、後に『はじまりの迷宮』と呼ばれるダンジョンへ潜ることとなる。


ジャックは、現役最強の冒険者だった。

そして、あっさり最奥まで進む。


「洞窟というより、これは、ダンジョンだな。迷宮となっている。」

「ジャックさん、あの部屋を。」


そこには、今までにない重厚な扉があった。

ジャックは、慎重に入る。


「ダンジョンボスだな。」

「ダンジョンボス?」

「そうだ。まぁ、とりあえずは倒すべき敵だ!」


そして、ダンジョンボスをジャックは、あっさりと倒した。

アイテムを手に入れることとなる。

それは、その時代にとっては、貴重なアイテムだった。


「ジャックさん!ダンジョンとは宝の山ですね!」

「…、そうだな。なんだか、心の片隅で罪悪感にさいなまれた気がするぞ。」

「昨日、飲みすぎて、奥さんに黙っていることを思い出しただけじゃないですか?」

「そんなわけあるか!」


そして、『はじまりの迷宮』は、冒険者を目指す者にとって、訓練するための迷宮となった。


ダンジョンコアは、踏破された迷宮の問題点を考える。

そして、その改善点は、他の迷宮へ反映していく。

更に他の迷宮は、様々な実験をするための迷宮と化した。

その全ては『悪夢の迷宮』へと蓄積されていく。


ダンジョンを壊そうとするものもいた。

しかし、神力の結界で守られ、それを許さない。


ダンジョンの最果てへいきなり転移しようとするものがいた。

しかし、魔王の力の結界で守られ、それを許さない。


ダンジョン内では、魔物も弱肉強食だ。

生き残るために独自の進化を遂げ始めた。

亜種と呼ばれる魔物の誕生である。


ダンジョンコアは、自らの分身を作る。

力は弱いが管理には充分であった。


そうして、オリジナルダンジョンコアは、静かにダンジョンマスター全員の帰りを待つのだった。

全ては、ダンジョンマスターに楽しんでもらえるようにと。


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