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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第3章 戦場の姫巫女
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89.予期せぬ来訪者

【リュクレオン】


「青龍、頼みがある!

儂と一緒にきてくれっ。」


青龍は、青い髪の青年だった。

龍族の証である二本の角が生えている。

目は細目で、頭のキレそうな顔立ちをしていた。


リュクレオンは小型サイズの龍となっているため、端から見ると、龍が人へ頼み込む姿は不自然さを感じる。


二人は山々に囲まれた神殿の中にいた。


「どうしたのですか?

龍王の後継者ともあろうものが情けない。

突然、来訪しておいて、そんな泣き言を言いにきたのですか?」


「突然の来訪だったのは詫びる。

四獣最強である青龍にお願いがあってきた。

共に倒して欲しい敵がいる。」


青龍は、冷たい目をする。


「もしや、敵とはゼリアンのことですか?」


リュクレオンは驚いた。青龍がゼリアンのことを知っているとは思わなかったのだ。

もしくは、それだけ注目された存在なのだろうと思うようにした。


「知っているなら話しは早い。

その通りだ。」


青龍は、ため息をつく。それは、明らかな落胆であった。


「情けない。

まったく情けなさすぎますよ。

ゼリアンごときに、次期、龍王となるものが情けなさすぎる。」


リュクレオンは別の意味で驚いた。青龍は、ゼリアンを軽視していたのだ。


「あやつは半神となっている。

そして能力を奪ってしまうのだぞ。

同じ四獣の白虎もおくれをとった相手だ。」


「白虎があんな城で本気を出せるわけがないでしょう。

本気を出した白虎なら、すぐに決着がつきますよ。」


「青龍は、ゼリアンを見てないから、そう言えるのだ。

あやつの強さは桁違いなのだぞ。」


青龍は、更に不機嫌になる。リュクレオンを軽蔑する目だ。


「龍王から伝言が届いています。

よく聞きなさい。

『バカ息子よ、この世界のルールを知りなさい。』とのことです。

あなたにこの世界のルールを教えましょう。」


青龍は、構えた。

神力を溜め出す。


「な、何をしておる!?」


「ルール1、下位は上位を超えることはできない。

ルール2、王と英雄と勇者の称号を持つ者を倒せる者は、王と英雄と勇者だけとする。

ルール3、魔王は勇者に勝てない。」


青龍は、必殺の一撃をリュクレオンに放った。

リュクレオンは、大ダメージを負ってしまう。

必ず殺す技にも関わらず、リュクレオンは生きていた。


「他にもルールはあります。

しかし、ただの人であるゼリアンに、次期、龍王となるリュクレオンは倒すことは絶対にできません。

どれだけ追い詰められても、必ず王の前に敗れさります。」


「ど、どういうことなんじゃ?」


青龍は、ため息をつく。


「まだ気づかないのですか?この世界は創造主によって、全てが決められているのですよ。」


「そ、創造主だと?そんな存在、聞いたこともないぞ。」


「当然ですよ、何故なら王の称号を持つ者の許可がない限り、その存在を話すことができません。もちろん、人間の国の国王は、称号ではないので、知りませんよ。

王の称号を持つ者によって、その存在は秘匿されます。」


「な、なんでもいいが、回復してもらえんか?さっきから、ちっとも回復しないんじゃ。」


青龍は、笑った。


「そんなわけないでしょう。

ん?」


リュクレオンは、死にかけている。

このままでは本当に死んでしまう。

それは本来あるはずのない出来事だった。


「す、少し待ちなさい。」


青龍は、リュクレオンを回復させていく。明らかに動揺していた。

それと同時に考えを巡らす。

そして、直感で全てを悟った。


「ルールが消えた?」


「何がなんだか、ついていけんぞ。どういうことだ?」


青龍は、ずっと内に秘めていた思いがあった。

自分よりも弱い者が王と名乗っているのが、不満で仕方なかった。


ルールが消えた瞬間、その不満が表面化し、邪悪な笑みを浮かべる。

龍王を殺し、自分が王となることを、ずっと考えていたのだ。


リュクレオンは、その邪悪さに気がついた。


「青龍よ、何を考えている?場合によっては、何が何でも止めるぞ。」


「あなたごときに何が出来るというのですか?

私こそが新たな龍王となる。

黙って見ていなさい。」


青龍は、出て行こうとした。

おそらく龍王を殺しに行こうとしたのだろう。

リュクレオンが立ちはだかる。


「まさか、こんなことになろうとはな。」


「あなたは龍王の後継者でしたね。いいでしょう。まずは、あなたから殺しましょう。」


「先程のは、防御しなかっただけだ。先程のようにはいかんぞ。

『龍の咆哮』!」


リュクレオンの攻撃を、青龍は片手で横へ弾き飛ばした。

山が一つなくなる。


「その程度では、この青龍を殺せませんよ。

『龍の咆哮』!」


神力を含んだ攻撃が、リュクレオンを襲う。

なんとか、空を飛び、避けた。


「お主との小手比べは不要じゃな。

なら、全力でいかせてもらう。

『龍の逆鱗』」


龍王専用の闘気がリュクレオンをまとう。


「なかなか、見事ですね。だが、神力には叶わない。」


二人同時に『龍の咆哮』を放つ。

しかし、リュクレオンは押されてしまった。


「くそっ!」


自身の攻撃である程度、相殺できたものの、軽いダメージを追ってしまう。

その瞬間、互いに不思議に思った。


「防御力が思った以上にあるのか!?」

「手加減されたのか!?」


しかし、互いが思い違いをしているのは、何となく分かった。

途中で神力の供給が全くなくなったのだ。


二人は一瞬だけ止まる。

その瞬間、青龍の状態を悟ってしまい、驚愕する。


「種族が、神から龍族になっただと?」


青龍は、驚いた。

リュクレオンは、青龍の動揺を見逃さない。

攻撃をしようとする。


しかし、その瞬間、空間に揺らぎが起こった。

多重魔方陣も同時に現れ、神殿中が光る。

その光の中から、一人の女性と少年が現れた。

少年は時計のようなものを見る。


「ルミナ様、予定通り、『ゼリアン革命』の日です。」

「計算通りね。では、瞬間移動しましょう。」


青龍とリュクレオンは、呆気にとられてしまった。

しかし、この場所は青龍の住処なのである。

突然、来られて、突然、去られては、青龍の名折れである。


「あなた方は何者ですか?場合によっては、ただでは帰しませんよ。」


少年は答えた。


「失礼しました。たまたま、この場所に出てきてしまったのです。

蛇の住処に来たのは、こちらも本意ではありません。」


蛇の住処の発言に青龍は頭にきてしまった。

種族が、親族から龍族になってしまったことへの動揺もあったのだろう。

何も考えずに、攻撃を仕掛けた。


しかし、二人には当たらない。

まるで消えたかのようだった。そして、いつの間にか青龍の後ろにいて、すでに攻撃を受ける瞬間だった。


「流星波」


青龍の背中から、流星のような一撃が放たれる。

青龍は、ダメージを追い、絶命しかけた。


その光景にリュクレオンは、驚く。

感覚としてはゼリアンのような幻覚ではなく、瞬間異動だった。

しかし何より驚いたのは、あの青龍が一切の防御をすることができなかった事実だ。


「ルミナ様、マズいですよ。本来はリュクレオンが青龍を倒し、力を覚醒するはずなのですよ。」


ルミナと呼ばれた女性は、少し気まずそうに答えた。


「リオン、私も、少し反省してるわ。

正直、ここまで力の差があるなんて思わなかったの。

それと、この男は蛇ではなく龍よ。

覚えておきなさい。」


リオンと呼ばれた少年は、舌を出して茶目っ気のある素振りを見せる。


リュクレオンは、そんな二人を観察し続けた。

どうも変な違和感を感じたからだ。


「この後、どこへ向かおうとしてるのだ?

それと、お主たちは何者だ?」


どうせ答えるはずはないと思いながらも、リュクレオンは聞いた。

しかし、二人は気にせず話す。


「私の名前は、『暴食の魔女』ルミナ。」

「その従者のリオンです。」

「ついでに言うと、今より30年後より先の未来から来ました。」


リュクレオンは呆気にとられる。答えるとも思っていなかったのもあるが、その答えは予想の斜め上をいったのだ。


「時間移動してきたのか?」

「その通り。ルミナ様の科学技術はついに時を超えることすら可能とさせました。」

「うむ、褒め称えよ。えっへん。」

「軽いノリだの。それで、過去へは何用なのじゃ?」

「それはもちろん、乙女のひ・み・つ。」


ルミナは、指を自らの口元にあてる。世の男性なら、たいていはそれで黙らしてしまうような美貌であった。

しかし、そんな姿にリオンは気にせず乙女の秘密とやらを話す。


「ある人物を救いにきただけですよ。未来では、その人物の助けが必要なのです。」

「こら、リオン。言っちゃダメじゃない。」

「どうせ、何もできませんよ。先程の戦いで、はっきりと分かりました。

この時代では、我々に敵はいません。」


リオンは、青龍を倒したことを念頭に発言をした。

リュクレオンとしては、龍族がなめられたままにはしておけない。


「先程から聞いておれば、なんなのじゃ。龍族は強い!その強さを思い知らせてやる。」

「ほらっ、怒っちゃったじゃない。私は瞬間移動で行くから、リオンはリュクレオンの相手をしておきなさい。」

「分かりました。」

「リオン、相手はあの伝説の龍神よ。油断しないこと。それとやりすぎないでね。」


ルミナは瞬間移動して、その場を離れた。カインのように瞬間移動する際の魔力を含んだ文字が現れない。

その出来事は、リュクレオンに脅威を与えた。


リオンは、ルミナが瞬間移動すると、態度を豹変させる。


「今はただの蛇っころだろ。心配しすぎなんだよ。」


リオンは、急に柄が悪くなったのだ。先ほどまでの茶目っ気は、いっさいない。

年相応の悪ガキのような風貌となった。


「お主、よい性格をしとるの。」

「知ってる。」

「一応だが、誉めてはないぞ。」

「し、知ってる。」


リュクレオンは考えた。

このリオンという少年は明らかに年相応だ。

しかし、先程のルミナは若いことは若いんだが、年季を感じた。あきらかに年相応ではない。

そんなことを考えていると、リオンが攻撃を仕掛けてくる。


「これでも、くらいな!」


それは、銃と呼ばれる兵器だった。

この世界には銃はない。

何故なら、魔法で充分だったからだ。


しかし、別の世界のように銃弾は出ない。

変わりに魔法が放たれた。


放たれた魔法は、『裁きの雷』。

しかも、それは何度も連射される。


龍族は、魔法防御力が高い。

しかし、その魔法防御力をもってしても、ダメージを負っていく。

同じ魔法を永遠と連射され続けるからだ。


そして、何故か防御結界を張ることができず、反撃の機会がないまま、攻撃を受け続けてしまう。


「なんだい、ジリ貧なのかい!?

もう、飽きてきたし、僕はルミナ様を追いかけるとするよ。」


リュクレオンは弱っている。しかし、目は衰えてなかった。


「ふざけるな…。ふざけるなよ!

龍族がただの人間の少年に一方的に負けるわけにはいかんのだ!」


「心配しなくていい。

未来では、龍族は絶滅危惧種だよ。

みんな同じ事を言って戦って、絶命しかけた愚かな蛇っころだったらしいよ。」


「絶滅危惧種?

何を言っておる?」


リオンは無表情で話す。それは、感情を含ませず、ただ事実だけを話しているようだった。


「龍王も、あっさり死んだらしいよ。」


その一言に、リュクレオンは、頭に血が上った。


「ふざけるな、ふざけるでないぞ!」


リオンは叫んだ。それは、先程の事実だけを無感情に話す時とは、まったく異なり、感情に身を任せた叫びだった。


「だったら、見せてみろよ、伝説の龍よ!

お前がそんなに不甲斐ないから、龍族は滅びかけたんじゃないのか?

僕たち龍人は、ずっと迫害され続け泣いてきたんだぞ!

そんなんだから、人族から蛇っころとか言われるんだ!」


リオンから、龍の血が入っている証明である角が現れた。

リオンは泣いている。


「お主、龍人なのか…?」


リオンは無言だ。

答えるまでもない。

答えなど分かっているからだ。


未来で龍族は滅びかけているのだろう。

龍人は龍と人の間の種族だ。

差別や迫害にあったのだろう。

想像だけで、苦労が分かる。


「我が強ければいいんだな。なら、強くあろう。」


リュクレオンの持つ光の球が光りだす。


「見せてみろ!伝説の龍神の力を!」


リュクレオンは今の発言に驚く。

先程もリュクレオンのことを伝説の龍神と発言していた。


リュクレオンは考える。


龍神?

龍神とは、青龍のことだ。

青龍は龍神なのだろう。


未来から来た者たちの発言を信じるならば、リュクレオン自身も神になるということだ。

大それたこととは分かっているものの、何故かこの者たちの発言を信じてしまう。


神とは何か。

神力を使える存在だ。


神力を使える存在とは何か。

使える者と使えない者の差は何か。

何故、使えるのか。


リュクレオンは思考を加速させる。

青龍は、この世界にルールがあると言った。

そして、ルールがなくなったと話した。


ゼリアンは、賢者の石を使うことによって、半神となった。

それは、きっとルールなのだろう。


ルールのない世界で神になるのは、どうすればいいか。


カインは話していた。

神力とは信仰力が源になっていると。


今、目の前に自分のことを神として信仰している者がいる。


ユニコーンは話していた。

神になるには、数ある能力と不死が条件だと。


能力はある。

不死なんて、あり得ない。

不死なんて、あり得るわけがない。

生物である以上、不死は存在しないのだ。


そう考えると、不死ではない。

不思?

できないなんて思わないということか?

神になれると信じることが、最後の条件なのか?


都合のいい解釈なのは分かっている。

だが、今は龍神になる必要があるんだ。


なら、叫ぼう。


その光景をリオンは、じっと黙って見ていた。

その目は、リュクレオンに期待する目だった。

本来ならば、青龍との戦いで龍神となるのだ。期待せずにはいられないのだろう。


その姿を見たリュクレオンは、何故だか力が湧いてきた気がした。

きっと、これが信仰力なのだろう。

リュクレオンは確信する。龍神になると。


「我は龍神リュクレオンなり!」


そして、リュクレオンは、空に叫んだのだ。

リュクレオンの体は…。


何も起こらなかった。

二人の間に沈黙が訪れる。


「き、期待させておいて、何なんだ、それはー!」

「うるさい!儂も今は恥ずかしくて仕方ないのじゃ。」

「さっき考え事してたろ!それは神になるための方法じゃなかったのか!?」

「そうじゃ、悪いか!?」

「えぇい、話せ!伝説の龍神がこんなに頭が悪いとは思わなかった!」

「頭が悪いだと!?お主の信仰力が低いのが原因なのではないか!」

「はぁ?信仰?こんな頭の悪い龍神を信仰するわけないだろう!」

「なんじゃと!?頭が悪いと言ったほうが、たいていは頭が悪いんじゃぞ!」

「はぁ?何時何分何秒、地球が何周回った時に言ったかを言えたら頭が良いって認めてやるよ!」

「お主も言えんじゃろ!答えてみよ、今が何時何分何秒で地球?が何周回ったのかを。」

「言ったら、答えになるだろうが!」

「子供か!」

「お前がだろ!」


二人の子供レベルの言い争いは続く。



次回、『90.現代の魔法使いvs未来の科学者』へつづく。

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