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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第3章 戦場の姫巫女
85/120

85.また会う日まで。

「マリーナ!?ラクリア!?何故ここに!?」

「もちろん、カインお兄様を追ってきましたわ。」

「嫉妬に狂った女に無理矢理、押し倒されて、この世界まで来ただけよ。」


ハーディスは驚いている。


「少し、呆れますね。あなたたちは、ここに来る意味を分かっているのですか?」

「もちろんよ、ここは神の牢獄。二度と出ることは叶わないわ。」

「私はお兄様といられるなら、そこは牢獄ではなく天国よ。」

「いやっ、天国は無理があるでしょう。」


その時、声が聞こえた。


『カイン、もうすぐ行く。それまで持ちこたえろっ!』

「クロノス神さま!?」

『せめて、先に能力だけ飛ばす!生き残れっ!』


力が湧いてくる。

一歩を踏み出す。

先ほどまでは一歩を踏み出すだけで死んでいたが、今はそれがない。


「クロノス?

やれやれっ、元神々の王は随分、気まぐれらしい。」

「ハーディス、勝負はここからだ。」

「お兄様、かっこいいです。」

「ほんと、お馬鹿な子ね。なんでこんな子が魔王を統べる魔王なのかしら。」


それを見ていたウルティアも思わず本音が出た。


「カイン、なんか複雑だよ。」

『大丈夫だ、ウルティア。それが正しい。そんな風な感情が芽生えてくれて、パパは嬉しいぞ。』


この場から、まったく緊張感がなくなった。

ハーディスが怒り出す。


「このハーディスを、目の前にして余裕ですね。」


俺は光の闘気を出す。

そして、神の福音を拒みし者へ話し掛けた。


「おい、さっきまでは死ぬ気だったんだろう?

だが、俺は生き残る確率があがった。

むしろ、死なない。

なら、ここにいることは無意味だ。

逃げ出すために力を貸せ。」

『やれやれ、ようやく贖罪の旅が終わると思ったのに。

いいでしょう。確かにここにいては、贖罪はできない。』


俺に始祖となるカインの力が宿る。


「ハーディス、くらえっ!」


神の力を乗せた一撃を放つ。


「喰らいなさい!

『黒い影法師』」


ラクリアから影法師が現れ、魔王の力を乗せた一撃を放つ。


氷炎地獄(インフェルノ)!」


マリーナから氷と炎の一撃が放たれた。

しかし、そのどれもがハーディスにあっさり止められる。


「ふふふっ。

なかなか、楽しませてくれる。

しかし、カイン、あな…」

「冥府の(コキュートス)


マリーナから、冥府の闇が放たれる。

しかし、ハーディスに、あっさり止められる。


「ふふふっ。しょせんは神話の人と魔神とま…」

「黙示録の業火(メギドフレイム)


マリーナから業火の炎が放たれる。

それも、あっさりハーディスに止められ…なかった。

無意味に攻撃を受ける。

しかし、ダメージはない。


「次から次へと!

いいから話させろっ。」

「あぁ、いいわ-、その声。

その感情の声がずっと聞きたかったわ。」

「変態…。」

「色欲の魔王にだけは言われたくないわね。」

「残念ねー。私はカインには欲情しても、こんな顔色悪そうな男には欲情しないわ。」

「なっ!?

あなた、カインお兄様を狙ってるの!?

そんなことさせないわ。」

「いいから、私の話しを聞け-!」

「「うるさいっ!」」


なんだろう、絶望的な状況はまだまだ続いているんだが、まったくそんな気がしない。

俺は一人、笑ってしまった。


「見なさいっ、あなたに呆れて、カインお兄様が笑ってるわよ。」

「違うわっ、あなたの変態ぶりによ。」

「いいや、違うよっ。いい仲間だなと思ってな。」


ハーディスから、物凄い気が放たれた。


「だから、私の話しを聞きなさい!」


別の角度から、神速の平手打ちがハーディスに放たれらハーディスは吹っ飛ぶ。


「「ウルティア!?」」


ラクリアは笑った。


「今までのは、ただの陽動よ。

本命はこっち。」


よく見ると影法師が、ウルティアのいたところに一体いた。

こちらに注意を向けて、その間にウルティアを助け出したのだろう。


「誉めてくれていいわよ、カイ…」


「ウルティア!ウルティア!」

「カイン!カイン!」


二人は抱きつく。

マリーナとラクリアは取り残された。

そんなラクリアを見て、マリーナも思わず本音が出てしまう。


「さすがに、ちょっと同情するわ。」

「あなたに同情されたくないわ。」


ハーディスは、ゆっくりと立ち上がっま。

目が妖しく光っている。


「もう、怒りましたよ。

喰らいなさい。

『無のせか…」

「爺さんの直伝!

『ノヴァ』!」


爆発がハーディスを襲う。


「もう、動揺しませんよ。

『無のせか」


爆発が晴れると、四人ともハーディスの前から逃げ出していた。


「…。

ここまで、コケにされたのは、初めてですね。

ふふふっ。

ふーふっふっふ…。

まちなさーい!」


妖しい目で、四人を物凄いスピードで追ってくる。


「ヤバい、すぐに追いつかれるぞ!」

「ラクリア、あなたが残って、ハーディスを止めなさい。

そうしたら、三人は助かるわっ。」

「嫌よっ、無理すぎるわっ!そう、無理ゲーよ!」

「なんで、ラクリアがそんな単語を知っているんだ!?」

「今はそんなことはいいの!

マリーナ、マリーナ様、アウレリウス様。今こそ魔王を統べる魔王の出番よ。」

「絶対、嫌よ!魔王を統べる魔王の名において、命じます。色欲の魔王ラクリアよ、ここにの」


ラクリアがマリーナの口を塞いだ。


「そんな命令させないわよ!」

「もがもが。」


ハーディスはどんどん近づいてくる。

俺が残って時間稼ぎをするしかないか。


「俺が残り、時間を稼ぐ。その間に皆は逃げるんだ!」

「大丈夫よっ、時間が来たわ。私たちの勝ちよ。」


ハーディスが四人に追いついた。


「これまでです。」

「その通りね。」


そして、クロノス神が現れた。よく見るとクロノス神が来た道は光っており、冥界から抜き出すルートが出来上がっていた。


「クロノス!?」

「四人とも、もう行きなさい。

ここは、私が抑えよう。」

「助かります。」

「あらっ、いい男。」

「カインお兄様には負けるけどね。」


クロノスは苦笑いだ。


「お父様、また後で。」

「あぁ、また後で。」


四人は逃げ出し、その場にクロノスとハーディスだけが残った。


「ハーディス、もう退いてくれないか?」

「ふー、やれやれですね。このまま逃がすとお思いですか?」

「もちろん。だって、君はいにしえの神の盟約などどうでもいいだろう?」

「それはもちろん。ただの暇つぶしに守っているだけですからね。」

「それに、ウルティアを冥界へ留めておいても、あの方は現れないよ。」

「知っていますよ。ただ昔を知っている神は、もうほとんどいない。

だから、ただどうしても会って昔話しをしたかったんですよ。」

「私が付き合うよ。」

「あなたも変わらず自分勝手ですね。えぇ、ぜひお願いしましょうか。」


カイン達は、悪魔界へ飛び出した。

ルシファーとサタナキアは驚く。

悪魔界は大混乱だった。

人間が悪魔界に現れ、悪魔たちを蹂躙しまくった。

魔神と魔王が現れ、悪魔たちをさらに蹂躙した。

激昂した神が現れ、悪魔たちは怯えた。

みんな冥界へと行ったので、一安心した矢先にすぐに混乱の元となったメンバーが現れたのだ。


「カインさん、すぐ人間界へ戻って下さい。

悪魔たちがパニックになっている今がチャンスです。」

「ありがとう!ルシフェル、サタナキア!

また会おう!」

「今はルシフェルと名乗ってます。

ぜひ、また会いましょう!」


カインたちは人間界へまっすぐ、空を飛びながら向かった。

そこにちょうど、別の悪魔長の軍団が悪魔界に戻ってきた。


「なんだ!?

総員、臨戦態勢を!」


悪魔の軍団が襲いかかろうとする。


「大丈夫!まかせてっ!

さっきのカインを見ていて、思いついた技があるの。

『フェニックスウィング』」


それは不死鳥だった。

俺たちは不死鳥の上に乗せられる。

そして不死鳥の両翼は新たに現れた悪魔たちを焼いていく。

それは、あっという間の出来事だった。その不死鳥は神速で羽ばたいたのだ。


そして、俺たちは人間界へ一直線に進み、人間界へ戻ってくる。

そのまま俺は自分の体へ戻った。ウルティアは先に別の場所へ戻ってもらった。

マリーナとラクリアは、お礼を言い、また会う約束をする。


「ただいま!」

『お帰りっ。その様子だと上手くいったんだな。』

「あぁ。それと、すまない。しばらくウルティアと二人になりたいんだ。頼めるか?」

『分かった。なら、俺はしばらく寝るとしよう。』


俺はウルティアと二人で暮らした家へ転移する。

俺は、ドアを開ける。


「ただいま。」

「おかえりっ、カイン。ご飯を作っておいたわ。」


食卓には、いつも二人で仲良く食べた料理が用意されていた。


「美味しそうだ。」


「さぁ、食べましょう。」


「おう、美味しいな。」


「うん、美味しいね。」


「なぁ、ウルティア。

…。

ありがとう。」


「ねぇ、カイン。

…。

ありがとう。」


「俺は君に会えて本当に幸せだった。

俺は君と出会えて、幸せを得た。」

「私もあなたに会えて本当に幸せだった。

私はあなたと出会えて、幸せを得ることができたわ。」


ウルティアの存在が薄くなっていく。


「また会おうな。」

「えぇ、必ず会いましょう。」


ウルティアは、神力を使い果たし、冬眠状態に入ることとなる。

他の神と同様、永い眠りにつくことになるのだ。

クロノスならともかく、目覚めるとしても早くて数百年後になるのが二人には分かっていた。

ウルティアにとっては一瞬でも、カインにとっては数百年後なのだ。


「ウルティア、愛してるよ。」

「カイン、私も愛してるわ。」


涙がお互いに止まらなくなった。


「俺は君に何かしてあげられたのかな?

俺は君を本当に幸せにできたのかな?」

「もちろん、私は幸せだったわ。

あなたがいてくれたから、幸せだったの。

ねぇ、これからも体に気をつけてね。」

「大丈夫だよ。俺はちゃんと生活するから。」

「ちゃんと、栄養を考えてご飯を食べてね。」

「もちろん、するさ。」


ウルティアは泣きながら笑った。

俺も泣きながら笑う。


「ねぇ、初めて会った時、ドキドキが止まらなかったね。」

「俺もそうだよ。君といると、いつもドキドキしていたんだ。」


ウルティアが少しずつ消えていく。

俺はウルティアを抱きしめた。

ウルティアも俺を抱きしめた。

そして、おやすみのキスをする。


「またね。」

「必ず、また会おう。」


俺の前からウルティアは消えた。

そして、またカインと会える日を夢見て眠りについたのだった。


俺は涙が止まらなかった。

ふと自分のステータスを見る。

今までなかったステータスがあった。


『心のあり方』


能力の詳細を見る。


「能力は、死んでも魂が消えない限り自分自身が消えることはないか。」


普通の人にとっては、本当に石ころみたいな能力だ。

そう、普通の人にとっては、本当に使えない能力なのだ。

でも、俺にとっては石ころじゃない。

俺にとってはダイヤモンドよりも貴重だった。

心の中で、クロノスに礼をする。


また会える日を夢見て、カインは歩き出す。

しかし、今日だけは、二人で暮らした家で一人、泣き続けるのだった。



後世、カイン首相の妻は死因は戦死とされている。

ジャパン国にとって初めての戦死とされた。

命を大事にすることを方針としたカイン首相にとって、最初の戦死が妻であったことは皮肉で仕方ない。


獣人国は人間に怒り狂っていた。

その怒りを沈めるために、自らの妻の命を差し出したのではないかと指摘されている。


この説をカインが聞いたら、いや、カインだけでなく獣王が聞いたら怒り狂っていただろう。

そんなことはありえないと。


だが、もう一つだけ別の逸話があった。

カイン首相の妻は女神だったという逸話だ。


真偽は定かではない。

しかし、それを証明するかのように、ジャパン国が記した国本には、カイン首相の妻ウルティアの生没年だけは、唯一、記載されることはなかった。



次回、『86.三つ巴の戦い』へつづく。

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