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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第3章 戦場の姫巫女
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83.絶望的な戦い

俺はインパルスと離れた後、魔王ラクリアの元へ尋ねた。


「グランさん、リコリスさん、お邪魔します。魔王ラクリアはいますか?」

「どうしたんだ、カイン!?そんな顔をして。」

「何があったの!?少し休みなさい。」


よく見るとリコリスさんのお腹が膨れている。


そうか…、新しい生命の誕生か。

喜ばしいことだな…。


「すいません、事情は言えません。ただ、至急でラクリアと会いたいんです。」

「残念ながら、ラクリアはどこかへ出かけているわ。呼び出しにも応えないの。」

「そうでしたか。すいません、それでは失礼します。」


二人は幸せそうな顔をしていた。

巻き込むわけにはいかない。

俺は二人に何も言わず去った。


「なぁ、リコリス。

あいつはもう一人の俺の息子みたいな奴なんだ。だから…。」

「えぇ、何も言わなくても分かるわ。カインを追ってあげなければ、むしろ私があなたを叱っていたところよ。」


グランはリコリスへ微笑んだ。長い時間を離れていた二人だが、そこは幼なじみ。

二人の距離はすぐに縮まったのだ。

グランは、カインを追いかけ、家を出た。


「おい、カイン。ちょっと待ちなさい。」

「グランさん、どうしたんですか?」

「お前の力になるために来た。俺は魔王のことが少しばかり詳しい。お前にとって必要なのは、ラクリアか?それとも魔王か?」

「話せる魔王です。」

「話せる魔王か。

なら心当たりがある。転移転送して、獣人国の近くの村へは行けるか?」

「本当ですか!?もちろん、行けますよ。」

「なら、そこへ飛んでくれ。」

「分かりました。」


ウルティアとの思い出の村に来る。

少しばかり、胸が痛む。


「こっちだ、着いてこい。」

「分かりました。」


一つの建物に着く。


「魔王アセディアよ、入るぞ!」

「魔王がいるのですか!?まったく何も感じませんよ!」


すぴーすぴー。

グランは、ボソッとつぶやいた。


「寝床を壊すかな。」

「ぎゃー、やめてっ!」


魔王アセディアは起きた。


「久しぶりだな。頼みがあってきた。」

「いやよ、面倒くさい。私は寝たいの。」

「さぁて、寝床を燃やすかな。」


グランの目が妖しく光る。壊す気まんまんだ。


「ぎゃー、やめてっ!あなた、本当に人間なの!?何度も魔王を脅す人間なんて、あなた以外いないわよ!」

「えーっと、何度も脅してるんですか?」

「そうよっ、この男は何度も何度も私が嫌がることを嫌がらせするのよ。殺すほどのこともしてないし、むしろ殺すのも面倒くさいし、嫌な男なのよ。」

「グランさん…。」


ニコッとグランは妖しく笑う。魔王も人間も、時と場合によっては、大差ないようだ。


「話しを聞いてくれるみたいだぞっ。」

「はいはいっ、それでどうしたの?」

「冥界へ行きたい。俺を悪魔界へ飛ばしてくれ。」

「なっ!?カイン、何を言っている!?」

「あなた…、正気?ん?あぁ、そういうことね…。」

「頼めるか?」

「条件があるわ。私にこの男に邪魔されないような鉄壁の睡眠所を作りなさい。」

「戻ってこれたら、するよ。」

「いいわ、ただしあなただけね。精神だけを飛ばすけど、今すぐやる?」

「いやっ。別の場所でやる。」

「グランさん、ありがとうございました。」

「カイン、俺は悪魔界や冥界がどんなところか知らない。大丈夫なのか?」


俺は少しだけ悲しげな顔で微笑んだ。


「止めても聞かないんだろうな。必ず無事に帰ってこい。」

「もちろんです。」


俺はグランをリコリスの元へ転送した。

そして魔王アセディアとジャパンへ戻る。


「ツヴァイ、ウィズ、リュクレオン、後は頼んだ。行ってくる!」


『ご武運を。』

『戻ってくるんじゃぞ。ゼリアンは、我々に任せておけっ。』

『悪魔は希望に弱い。そして絶望が好物だ。それを忘れるな。』


「皆、ありがとう。

魔王アセディアよ、頼む。」


魔王アセディアから多重魔方陣が浮かび上がる。


「分かったわ。ちなみに冥界へ行くには、悪魔界の中心から行けるわよ。

注意して行きなさい。

いくわよっ、フォールダウン!」


俺の精神は、悪魔界へ飛んだ。

イメージ通りの世界だ。

空は暗い。

花や木々は咲いていない。

ただ、荒野が広がっている。

いや、遠くから黒い何かが近づいてくる。

悪魔たちの群れだ。


「久々の人間だっ!」 

「美味そうだぞ。」

「あれは、俺のものだ。」


俺は一応、交渉してみる。


「悪魔どもよ、俺は冥界へ行きたい。

通してくれないか?」


悪魔たちはゲヘヘと笑った。


「そんなことさせるわけないじゃないか。」

「お前はここで俺に食べられる。」


ざっと悪魔たちの群れの数を見る。

約一万まで群れが大きくなっていた。


「先手必勝だ。

広域殲滅魔法メガフレア!」


極大の爆発が、悪魔の群れを襲う。


これで一気に削れるはず!

!?

なんだ!?普段は魔力の消費とともに回復を始めるのに機能していない!?


爆発が収まると、悪魔たちは笑う。


「馬鹿めっ、人間の魔力はここでは回復しないぞ。

自分で死期を早めやがった。」

「一つ聞いていいか?広域殲滅魔法だったんだが、何故、そんなに数が減っていない?」

「私が説明しましょー。んー、ジェントルマンですからな。

我が輩は悪魔の中級貴族。我が輩にとっては、爆発は好物なのである。」

「おいおい、悪魔にも等級があるのかよ。」

「もちろんですよ、我が輩の上には上級貴族もいます。更にその上もね。」

「先が見えない話しだな。」

「さぁ、では食べさせていただきましょー。」


俺は光の闘気を使う。


「魔法が駄目なのは、分かった。

なら、光の力で戦う!

さぁ、かかってきやがれ!」


悪魔たちは笑う。


「光の闘気ですか。

だが、この世界ではその力は弱まります。

さぁ、いただきます。」


絶望とも言える戦いが始まった。


…。

……。

………。


いくら斬ったのだろうか。

いくら悪魔を滅ぼしたのだろうか。

記憶が曖昧だ。

意識がもうろうとしている。


「何故、あなたはそこまで粘れる!?」

「…。」

「そのダメージ、何度も死んでいるはずだ。何故、死なない!?」

「……。」

「ぎゃー。」


悪魔たちの断末魔が遠くの方で聞こえる。

俺はひたすら斬り続けた。


…。

……。

何かとてつもない強い者が現れた気がした。


「お前ら、もうやめろっ!」

「サタナキア様!」

「カインさん、こちらへ。」


俺は意識がなくなりかけている。

だが、この者へは攻撃しなくても良さそうだ。

俺はこの男を知っている気がする。


「カインさん!大丈夫ですか!?」

「ルシファー様、マズいです!カインさんの意識がもう…。」

「…。

お、俺は冥界へ行くんだ…。」

「無茶です!今すぐ人間界に戻って休まないと精神が崩壊します。」


俺はふらふらとなりながら、悪魔界の中心へ向かう。


「分かりました。せめて入り口までは連れて行きます。」

「カインさん、こちらです。」


神殿があった。

その神殿には、地面に丸い渦がある。

その渦こそが冥界との入り口だった。

俺はふらふらになりながら、その入り口へ飛び込んだ。


「カインさん…、ご無事で。」


ルシファーとサタナキアは、心から祈るのだった。


「それにしても、カインさんは凄まじかったですね。」

「そうだな。」


カインが人間界から通ってきた道をみる。

そこには無数の悪魔だったなれの果てが横たわっていた。


「悪魔の数が激減しましたね。」

「まぁ、管理しやすくなったということにしておこう。」

「他の悪魔長たちが不在で助かりました。」

「あぁ、いたらとんでもないことになってたろうな。」


ルシファーとサタナキアは、カインの力を知っている。しかし、それでも道は困難であろうと知っていた。

できれば、一緒に行きたいが、盟約に縛られ冥界へはいけない。

カインの無事を願うばかりであった。



次回、『84.神の呪い』へつづく。

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