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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第3章 戦場の姫巫女
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72.『全知全能の男』

【カイン】


「さてっ、神聖ゾルダクスへ向かうか。」


「はいっ、カインさん。」


…。

いったい何があったんだ?


ちょっと前までのアルスと、全然、違うぞ。

まぁ、旅に支障がないからいいか。


「ウルティア、準備はいいか?」


ウルティアは、少し考え込む。


「ごめん、アルス。

もう少しだけ、ここにいていいかな?

何故か、ここにいなきゃいけない気がするの。」


アルスは不思議そうな顔をした。


「そう言われてみると、私もそんな気がしてきました。

なんでしょう、この感覚は…。」


二人とも不思議そうな顔をしている。

だが、俺はもっと不思議そうな顔をした。


俺とは、真逆なのだ。

二人は、ここに残りたいという。

しかし、俺は一刻でも早くここから離れたい。


命の危険は感じない。

多数決からすると二人の意見を採用すべきか。


「じゃあ、このままもう少しだけ、この街にいよう。

俺はジャパンに転移して、政務をこなしてくる。」


俺はジャパンへ転移をした。

いや、ジャパンへ転移をしたはずだった。


しかし、転移した先は街はずれの川辺だ。

俺より、ウィズが慌てる。


『???

何が起こったのか、分かりません。』


リュクレオンが解答してくれた。


「よく、見ろ。

薄く結界が張ってある。」


転移ができない結界…。

フィーナ国の王都に張られていた結界を思い出す。


「魔王がいるのか!?」


慌てて、気配察知を行うものの、魔王は見当たらない。

かわりに、赤髪のエルフがいた。

赤髪のエルフは、驚いている。


いるはずのない人だ。

俺も驚いている。


「えーっと。

アテナ女王、何故こちらに?」


物凄い動揺された。


「いや、私はアテナ女王ではない。

旅人のアンだ。

カイン王は、どうしてこちらに?」


俺は動揺した。


「いや、私の名前は、ツヴァイです。

ただの冒険者ですよ。」


カインは思う。

赤髪のエルフなど、いない。

どうしてこんなに変装が下手なんだろう。


アテナは思う。

黒髪のエルフなどはいない。

どうしてこんなに変装が下手なんだろう。


二人はお互いに笑い合うしかなかった。


「まぁ、そういうことにしておきましょう。

もし魔法を随時使用しているのなら、いいものがあります。

プレゼントしますよ。」


カインはアテナに赤いペンダントを差し出した。


「これは?」

「幻術が付与されています。

自分の魔力が切れても、その魔石が補助してくれますよ。

念のため、つけておくことをお勧めします。」


そういって、カインも自分がつけた黒いペンダントを見せた。

アテナは、何も疑わなかった。

そして、赤いペンダントを身につける。


アテナは、ただただカインからのプレゼントが嬉しかったのだ。

そして、アテナが信じる通りカインは本当にただ幻術の魔法がこめられているだけの魔石を渡したのだ。

アテナは、なんとなくだがお揃いのペンダントをつけていることに、顔を赤らめた。


「あれ?

お二人とも、もう出会えたのですか?」


「セト…?」


「カイン、セトを知っているのか?」


「アテナお姉様、お互い会うのは初めてですよ。

ただ、お互いのことを知っているだけです。」


「そうだな。

少なくとも俺自身は、初めて会うよ。

ところで、どうしてこちらに?」


「まぁ、セトもそれだけ有名になったということか。

それと、この場所にいるのは、転移をしていたら、何故かこの場所に来てしまったのだよ。


アテナは思う。

セトのことを知っている?

ローマ帝国で警戒すべき相手まで知っているということか。


カインは思う。

転移していた先は間違いなくゾルタクス国に違いない。

今度は、ゾルタクス国で何か仕掛けるつもりなんだろう。


セトは思う。

この二人は絶対に勘違いしてる…。

カインのことを知っているのは、警戒しているのではなく別の事情からだ。

お互い不干渉を貫いていたから、今日が初対面になっただけである。

それと、アテナお姉様の目的は、ゾルタクス国ではなくカインだ。

恐らく自身の感情を持て余しているだけにすぎない。

まぁ、面白そうだから黙っていよう。


セトは、この時、単純に面白がっていた。

誰よりもよく知っているだけに、無知な二人を見て楽しんでいるのだ。

しかし、知りすぎてるからこそ、笑えない状況がすぐに訪れてしまう。


「カイーン。」

「カイン様-。」


ウルティアとアルスがやってきた。

広場に転移されたのが分かって、追ってきてきれたのだ。


この場に女性3人が揃った。

最初、セトは人が増えただけだと思った。

どんな楽しいことが起こるんだろうと胸を高鳴らせていたのだ。

しかし、来た二人の顔を見て、衝撃を受ける。


「ヘスティア!?

それにアルテミス!?」


カインは、訂正した。


「いや、ウルティアとアルスだよ。」


全員が不思議そうな顔をしている。


セトは動揺が止まらない。

絶対に揃うことのない3人だと思っていた。

そして、気づく。

転移できなかったのは、てっきり魔王やらソラトが関係していると思っていた。

いざとなれば、何とか切り抜けるだけの切り札を用意していたので、安心していたのだ。

だが、ここにきて思い違いだったことを悟る。

こんなことをする人は、ただ一人しかいない。

カインを見る。

カインは気づいていない。

今のカインの人格は、転生する際に一部プロテクトがかけられている。

だから気づかないのだ。

セトは、一刻も早く逃げ出そすことを決めた。


「すいません、勘違いしました。

お姉さま、早く次の場所へ向かいましょう。」


アテナは首を横に振る。


「アルスといったな。

私の名は、アンだ。

そなたと少し話したいことがある。」


「ローマのアンさまですね。

お噂はかねがね伺っております。

何故、あの国に向かおうとしているのか、ぜひ聞かせていただきたいですね。」


セトは、必死だ。


「いや、そんなことより、早く行きましょう。」


「セト、いつもの不敵な態度はどうした?

何故、そんなに慌てている?

まぁ、立ち話もなんだな。

向こうの店に行こうか。」


「えぇ、ぜひ。

カインさんとウルティアお姉様は、少しお待ちいただいてよろしいでしょうか。」


「分かった。

その女性は信頼できる。

俺たちは、ここで待っているよ。」


「あっ、私は宿を探しますので、ここから離れます。

それでは皆さん、またっ!」


セトは走り去っていった。


俺もこの時点で、セトの挙動不審が気になってしまった。

先程の件もあるが、何か嫌な予感がする。

あたりを見回した。


!?!?

あんなところに釣りをしている爺さんなんて、いたか!?


ウルティアも気づいた。


「アンさまとアルスの話しが終わるまで、あちらの人の釣りを見学に行きませんか?」


止めようとしたが、何て言って止めていいのか分からない。

そうこうしてる間に爺さんのところへウルティアは行ってしまった。

慌てて、俺も追いかける。


「あの、釣りを見学してもいいですか?」


「ほっほっほっ。

釣りをしているのではないんじゃよ。」


釣り竿の先には釣り針がない。

ただ糸を垂らしているだけだ。


「そこの君も、こちらに来て座りなさい。」


俺はこの爺さんを知っている。

正直、会いたくなかった気もするし、何を話していいか分からない。

セトめ…、気づいていたな。

心の中でセトへ怒るが、もう手遅れだ。気付かなかった自分が悪い。


「どうして、こちらに?」


「いや、この世界が気になってな。」


「カイン、知り合いなの?」


「ウルティア、この人は『&≠s§〓』さまだよ。」


!?


「ごめんなさい、ちょっと名前が聞き取れなかったわ。」


「ほっほっほっ。

色々と制限を受けているようじゃの。

クロノスの仕業といったところかの。

まぁ、別の名で呼ぶがよい。

以前は、何と名乗っていたかの。」


爺さんは、頭をかきながら思い出そうとしたが、なかなか名前が出てこない。

年だな…。

やばい、心を読むんだった。

慌てて、話し掛けた。


「以前は、太公望と名乗っておられました。」


「そうじゃそうじゃ。

では、太公望と呼んでくれ。ちなみにまだボケてないぞ。」


やっぱりバレてる…。

まぁ、無視するのが一番か。


ウルティアが先に話し掛けた。


「太公望さまですね、分かりました。

何故か懐かしいような気がします。

それと何となくですが、分かりました。

私が存じてない神族なのですね。」


俺は頷く。


「ほっほっほっ。

そうじゃな。だが、その発言は少し寂しい気もするの。

ところで、ウルティアよ。

何故、人族となっているのだ?」


ウルティアは、事情を話すかためらってしまった。

しかし、心を読まれてしまう。


「なるほどの。神の決まりか。

どうでもいい決まり事じゃの。

どれっ、半神半人にしてあげよう。

ほれっ。」


ウルティアは輝き、種族が変わった。


「マズいですよ。

他の神様にバレたら、何と言われるか…。」


「気にするでない。

儂がやったことはすぐに分かる。

それに儂も、どんどん人族に介入した過去がある。

思うままに過ごすがよい。

それと、カインよ。

まだ贖罪の旅を終えぬのか?」


突然、話しを振られて驚いてしまうが、内容が内容だけに俺は不快感を示した。


「私の罪は、まだまだ、とても償いきれるものではありませんよ。」


「お主も頑固よの。

なら、命じる。

ソラトがこの世界にやってきている。

ソラトを止めれば、主の贖罪の旅は終わりにしよう。」


「嫌です。」


俺は即答だ。


「この頑固者が!誰に似たんじゃ!」


またもや、俺は即答だ。


「もちろん、『&≠s§〓』さまですよ!

自分の気が済むまで、認めません。」


俺はこの旅を終える気は更々ない。

俺にはずっと後悔していることがある。俺はまだまだ贖罪をしなければならないんだ。


「えぇい、頑固者めっ!もはや説教じゃ!

別空間で、たっぷりと絞ってやる!

それまでは、ツヴァイ、お主がその体を使っておけ。」


『へっ?

ま、巻き込まないでくれっ。』


ツヴァイの動揺が伝わった。


「えぇい、うるさい!

ウルティアは想いのまま過ごしなさい。

他の者の顔も見たかったが、カインの説教が優先じゃ。

カイン、いくぞっ。」


爺さんと俺の体は光りはじめる。

そして、爺さんと俺の精神は、別の空間の何処かへと飛んでいってしまった。


残されたツヴァイとウルティア。


「なぁ、あれは誰だったんだ?」


「私も結局、詳しくは分からなかったわ。

あっ、それと私はカインの妻であって、あなたの妻ではないので、よろしくね。」


「へいへい。」


「では、儂も久々に外を出て体を動かすかな。最近、マンガも読み飽きてきたしの。カインが戻ってきたら、向こうの世界のアニメとやらを用意しておくよう話しておいてくれ。」


リュクレオンが具現化した。


『それなら、私も。たまには気ままに世界を見て回るのもいいかもしれません。』


ウィズが具現化した。


そこにアテナとアルスが戻ってくる。


「「えーっと、誰?」」


カインとウルティアは、雰囲気が変わっている。

さらには、精霊と龍が増えている。


ほんの少し離れただけで、全く分からない状況となってしまったのだった。


「とりあえず、ウルティア。

今夜は俺と楽し…。」


ズバン!


ウルティアは、創造の能力でレイピア(細剣)を造り出した。

ウルティアは、創造の能力で神速を創り出した。


ツヴァイの目の前にレイピアの先端が突きつけられる。


「ツヴァイ、何か言おうとした?」


ウルティアは、満面の笑みだ。


顔がひきつる一同。


「いえ、ゆ、ゆっくりお過ごし下さい。」


「それならよし。

行こう、アルス!

あっ、ツヴァイ、その体で変なことしたら怒るからね。」


ウルティアとアルスは、二人でその場から離れた。


「じ、じゃあ、儂たちも出かけるかの。」

「そ、そうですね。」


リュクレオンとウィズは出かけた。


残されたツヴァイとアテナ。

アテナは、困惑している。


「悪いが事情を教えてくれっ。」


みんなの心の内にある思いが芽生えた。

ウルティアを怒らすのだけは、やめておこう…。



次回、『72.『全知全能の男』』へつづく。

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