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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第3章 戦場の姫巫女
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69.旅路の悲劇

「あの、カイン首相?

何故、そのようか恰好をしているのですか?」


「いや、私の名前はツヴァイだ。

ほらっ、ギルドカードにも『ツヴァイ』と記載されているだろう。」


俺はツヴァイと記載されたギルドカードをアルスに見せた。

しかし、アルスは不審な目で俺を見ている。

そして、もう一人に向かって話しかけた。


「えっと、ウルティアお姉様ですよね?」


「えっ、えーっと。

あはははは。」


そう、俺とウルティアは仮面をつけて変装していた。

仮面をつけた男というものには、憧れがあるものだ。

それにしても、あっさりバレたな…。


「さすがに、ムリがありますよ。」


あきれるアルス。

事前にインパルスと打ち合わせした時は、褒められたんだがダメだったらしい。


「しょうがない、阻害認識魔法を使うか。」


俺は自分自身とウルティアに魔法をかける。

種族はエルフになった。

後で魔石に付与でもしておくとするが、今はこれで充分だろう。

よしっ、これなら完璧だな。


「ウルティアお姉様は素敵です。

カイン首相は、黒髪のエルフなんていませんよ。

逆に目立ちます。」


そんなバカな!?

まだダメ出しだと!?

もう心が折れそうだ。


「もう、めんどくさいから、これでいい。

ようは、俺ということがバレなければそれでいいんだ。」


アルスはまだ俺をせめる。


「政務を放りだしていいんですか?」


「大丈夫。

俺には携帯電話と転送がある。

一日に数回は、ジャパンに戻るようするさ。」


アルスには理解できない。

ただ、これ以上はカインと話すのが限界だったのか、納得するようにした。


それにしても、俺たち二人しかいないな。


「ところで、他の護衛は誰ですか?」


アルスは少し困った顔をした。


「それが人が集まらなくて…。

このメンバーだけです。

ここからの道のりは、約20日です。

よろしくお願いします。」


長旅になると思っているのだろう。

アルスなりに、必死に俺に慣れようとしてくれているのかもしれない。


本当はウルティアを連れて行く気がなかったが、アルスのことを考慮して、着いてきてもらった。

女性がいた方が心強いだろう。


それにユニコーンの問題が解決したので、ウルティアは気兼ねなくジャパンを離れられるのだ。

ユニコーンは、どうやら現世に居続けることができないようだ。

ミカエルへ天使界の様子を確認してもらったところ、落ち着きを取り戻し安全らしい。

そのため、天使界へ行って鋭気を養ってもらうようにした。


さて、このメンバーなら何も問題ない。

遠慮なく能力を使える。


「アルス、ここからゾルダクス国まで20日もいらない。

2日で行くぞ。」


アルスはキョトンとしている。


「カイ…失礼しました。

ツヴァイ様は無知なのですか?

ここから2日で行くなど到底ムリですよ。」


アルスはウルティアに顔を向けた。

何か言って欲しそうにしている。

おそらく俺へ意見を言って欲しいのだろう。


ウルティアは、ただ微笑ましく見ていた。


「じゃあ、行こう!

転送・転移!」


3人は、一気にフィーナ国の国境まで移動する。


「えっ!?

えっ!?

えっー!?」


俺は空高く飛んだ。

この位置は俺が知っているから転移できるが、ここからは知らない場所のため、転移できない。

目視が必要となる。

まぁ、何となくの位置で転送は出来るのだが、何が起こるか分からないので確実性を重視したい。


よしっ、次はあの辺まで飛ぼう。

二人の元へ空から戻ってきた。


「転送・転移!」


それを繰り返していく。

あっという間に、獣人国の付近まできた。

アルスは放心している。


「そんな…。

これは現実なの?」


ウルティアが優しく声をかける。


「カインは、凄いでしょ。」


「ウルティア、今の俺はツヴァイと呼んでくれ。

さて、そろそろ暗くなってきた。

今日は、この街の宿に泊まろう。」


本当は、俺一人が転移をし続けて、

ゾルダクス国に着いたらアルスを転送する方法もある。


だが、あえてそれをしなかったのには理由がある。

何故なら…。


「この街は温泉が有名みたいですよ。

楽しみね。」


そう、ウルティアと旅行をしたかったのだ。

新婚旅行もしていなかったため、

遠出に憧れていたのだ。


アルスがいるのは、まぁ、許容範囲内だろう。

俺は、実は楽しみにしていたのだ。


しかし、俺はこの後、後悔する。

まさか、あんな悲劇が起こるとは…。


「すいません、大人3名で泊まりたいのですが。」


「あいにく満席でね。

向こうの宿なら、もしかしたら空いてるかもしれないから行ってごらん。」


「凄い混んでるんですね。」


「獣人国で戦争が起こりかけててね。

皆、ここで足止めされてしまっているのさ。」


そうだったのか。

とりあえず、紹介された宿へ行ってみる。

女将さんが接客してくれた。


「はいっ、いらっしゃい。

大人3名だね。

あいにく今はどこも宿が混んでいて女性を優先させてもらっているんだ。

すまないが、女性二人だけでもいいかい?」


それなら、いったんジャパンに戻る手もあるが、ウルティアが温泉を楽しみにしていたのを思い出す。


「では、二名をお願いします。

俺は、別の場所で寝るよ。」


ウルティアは、俺の心遣いが分かったようだ。


「ありがとう。

じゃあ、甘えさせてもらうね。

アルス、行きましょう。」


アルスは、物凄く喜んだ。

苦手な男性と離れて、大好きなウルティアと二人なのだ。

気持ちが高揚しているのが、よく分かる。


「じゃあ、また明日。」


俺は、ジャパンへ戻った。

そして、執務室で政務を行う。

気づけば、夜遅くまで仕事をしていた。

そんなことを思っていると、ウルティアから電話がかかってくる。


「カイン、ちょっといいかな?」


「どうしたんだい?

そっちへ行くよ。」


俺はウルティアのいる場所へ転移した。

ウルティアのいる場所なら、この世界ならどこでも転移できる。


部屋の中へ着くと、アルスは寝ていた。

あきらかに話し込んだまま寝てしまったようで服も着替えていない。


「おまたせっ!」


「あっ、男性のままだと、不審がられるかも。

少しだけ、女性型か動物になってくれない?」


えっ、嫌だ。


『ウルティアの言う通りがよいかと。

どうやら、男性禁止の結界が張っているようです。

動くとバレる危険があります。』


女性には安心な宿だな…。


まぁ、この部屋にいる間だけだ。

女性型は嫌なので、

俺は変幻でフェレットのような動物となった。

我ながら、ちょっと可愛い気がする。


まぁ、セレンの能力と違って気配は俺のままだ。


念のため、音が漏れないよう、防音結界を張る。


「実は、この街に神力を持った者を感じるの。

魔神とも違うし、少し気になってて。」


神力を持った者?

俺は、目をつむり、この街の気配を探る。


街のあるゆる気配が分かる。

街の外れで人を超えた力を感じた。

この気配は知っている気がする…。


!?!?

一人の男を思い出す。


「グリード!?」


クロノスナンバー9、断罪の刃の異名を持つ、グリードだ。

向こうも、俺に気づいたようだ。

動く気配はない。

まぁ、明日にでも会いに行ってみるか。


それにしても、何故、グリードから神力を感じるんだろう。


「ん、ん~。

あっ、ウルティアお姉様、すいません。

お話ししながら寝ちゃいましたね。

寝間着に着替えなきゃ。」


アルスは、あらわな恰好をする。

そして着替えている途中で、俺に気づいた。


「きゃー。

フェレット!?

可愛い。」


ウルティアは、慌てた。


「そのフェレットは、カインよ。」


「またまた~。

ウルティアお姉様は寝ぼけているのですね。

カイン首相のわけないじゃないですか。」


俺は慌てて逃げ出そうとする。

しかし、慣れない四足歩行だ。

見事にアルスに捕まった。


「可愛い~。」


アルスに頬ずりされた後、胸の付近に押し付けられる。


ま、マズい。


「ア、アルス!

俺だ、カインだ!」


アルスは、キョトンとする。

そして、急に理解した。


「○×△□$~。」


意味の分からない声をあげて、そのまま気絶してしまった…。


「ウ、ウルティア。

後はお願いしていいかな?」


「ゆ、夢にできたら、

いいかなあ…。

あはははは。」


ウルティアも本当に困ったような笑いをした。


「とりあえず、夢の方向でいこう!」



そして、翌朝、宿の前で待ち合わせをする。


「おはよう、ウルティア、アルス。」


「おはよう、カイン。」


「お、おはようございます。」


「昨日は、仕事で全然こっちに来れなかったけど、よく寝れたかな?」


「えぇ、よく寝れたわよ。

ねっ?アルス。」


じーっと、アルスは、俺を見つめる。

やばい、バレてるのか!?


「カイン首相、まだ尻尾が残ってますよ。」


「そんなバカな!?」


慌てて見る。

そして、ハッと気づく。

ウルティアは、ため息をついた。


「やっぱり昨日のは、夢じゃなかったんですね!

カイン首相のバカー!」


そして、アルスは一日中、口を聞いてくれなかった。


悲劇だ。


ウィズが話してくる。


『いいえ、喜劇です。』



次回、『70.断罪の刃グリード、再び。』へつづく。

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