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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第3章 戦場の姫巫女
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67.冒険者ギルドの設置要請

【カイン】


コンコン。

俺はインパルスの執務室に入った。


「インパルス、こっちの資料にも目を通しなさい!

思考高速化したいんでしょ。

なら訓練よっ。

何よりも、次の会議までに、間に合わなくなるわよ。」 


「もうムリだー。

学級委員長、頼むっ!

この会議は代理出席してくれっ。」


「バカ言ってないで、早く読みなさい!」


インパルスは、涙目だ。

俺はそんな中、執務室に入ってしまった。


「あっ、カイン。

どうしたの」


エレナは、満面の笑みだ。

インパルスは、思わずつぶやく。


「急に色目つかうなよ。

色欲の…」


最後まで言い終わる前に、インパルスは殴られた。


「す、すまない。

至急の案件かい?」


「えぇ、そうです。

冒険者ギルドが、ジャパン国に支所を設置したいとの申し出がありまして、そのための会議資料を見ているところですよ。」


「そ、そうか。邪魔してすまなかった。

また改めてくるよ。」


「いえいえ、邪魔だなんてとんでもない。

さぁ、カイン首相、この資料の束に目を通して下さい。

そして、出席して下さい。」


嫌だ。

そんな面倒くさいことしたくない。

って言えないぐらい、インパルスの目は血走っていた。

俺は諦めて資料を読む。


冒険者ギルドの設置費用、1000万G。

1G=1円の感覚だ。


国としてはギルドの斡旋で冒険者が魔物の駆逐を行い、素材獲得の手間暇や、守備隊の維持費を削減できる。

よい素材が手に入れば、経済も潤うだろう。


だが、正直に言うと魅力的ではない。

ジャパン軍の訓練として魔物を駆逐しており、素材獲得費用はただなのだ。

そして、強い魔物は、俺とインパルスのストレス発散のために間引きしたりしている。


あとは、他国への渡航時の身分保障か。

俺は転移するから不要だが、国民にメリットはあるのかもしれない。


コンコン。

「失礼します。」


地理家のマルコが入ってきた。


「鉄道の路線図を作成してきました。

インパルス様、ご説明してもよろしいでしょうか?」


インパルスは、先程とは打って変わって、背筋を伸ばしている。


「頼む。

それと、カイン首相もいらっしゃる。

一緒に聞いていただこう。」


キャラを使い分けているらしい。

マルコは説明を始めた。


「まずは基本計画ですが、

安全性を考慮し、高架鉄道と地下鉄道の二つが考えられます。

また、島内全域では危険性があるため、結界内のみがよいでしょう。

もしくは、島と大陸のみの横断鉄道が考えられます。」


インパルスは答える。


「重要な交通箇所としては、大陸と島の交通網と考える。

鉄道の延長を前提とするならば、旧フィーナ国の各都市と結ぶことができるからだ。

利便性が証明されれば、鉄道の輸出として経済を潤わすことができるだろう。

カイン首相、いかがでしょうか。」


カインは思う。

インパルス、さっきのキャラはどこへいった!?

とりあえず、俺は答える。


「その方針で問題はありません。

ところでマルコに聞きたいのですが、

鉄道を輸出するには、何が問題となりますか?」


マルコは答えた。


「まず、鉄道については利便性が実証されれば商業ギルドが自ら求めてくるでしょう。

利便性の観点からは容易に鉄道購入の声があがるのは間違いありません。

しかし、問題は安全面となります。

道中の魔物をどうするかです。

そのため、冒険者ギルドへ道中の護衛を要請すべきです。

彼らなら国境を気にせず護衛が可能なのですから。」


インパルスは発言する。


「商業ギルドはレイブンがいるので、話しを広めやすいでしょう。

問題は冒険者ギルドですね。

伝手がありません。

カイン首相、ギルド設置の件、今後のことを考慮すると支社の設置を受けるべきかと思います。」


カインは、頷いた。


「たしかに、ギルド設置は先行投資として、よいかもしれません。

関係を築いて、各国への鉄道輸出を促していきます。

まずは、旧フィーナ国への設置を目指しましょう。」


さて、ギルド設置の会議はインパルスに任せるつもりだったが、俺も出てみるか。

資料に目を通す。

ん?

あれっ??


「インパルス、この資料の作成者は誰だ?」


インパルスは、不思議な顔をした。


「もちろんギルド側ですよ。」


「この最後のページを見てみろっ。

これはジャックが作った資料だぞ。」


そう、最後のページには、ジャックの署名があった。

何度も見てきた筆跡だ。

俺とインパルスは、慌ててギルド側を訪ねた。


「よう!元気してたか!?」


「いや、再登場が早すぎませんか!?

この前、別れたばかりですよね!」


俺は思いっきり突っ込む。

それにしてもジャックは、昼間から酒を飲んでいる。

相変わらずだ。


「おうよ、さすがだろっ。

ギルド設置するから、よろしくな。」


あっ、嫌とは言わせない気だ。


「ジャックさん、一応、検討事項ですよ。」


「でも、設置することにするだろ?

それと、プレゼントだ。

必要だろ?」


俺とインパルスは、カードを渡された。


「これは…、ギルドカードですか?」


ジャックは頷く。


「これから先、他国へ内密に行くこともあるだろう。

冒険者の立場の方が都合がいいこともある。」


俺は驚いた。

そのために、わざわざ来てくれたのだろう。

もしかしたら、ただの酔っぱらいではないのかもしれない。


「それと、これを頼む。」


なんだろう。

手渡しされた紙を見る。


請求書と書いている。

金額は、100万Gだ。


「えっと、これは?」


ジャックは胸をはって言った。


「飲み過ぎた!

経費から支出を頼む!」


「へっ?」


俺とインパルスは、目が点になった。

そして、思い出す。

ジャックは、酔っぱらい大馬鹿ヤロウだった。

説教をしようと思ったが店名を見て思いとどまった。

請求書元はグランが営む酒場だ。


グランが復活して嬉しくて飲んでしまったのであろう姿が目に浮かぶ。


インパルスは、自分の父親の店なので微妙な顔をしている。


そのため、俺が承認してあげることとした。

まぁ、グランさんたちの快気祝いだ。


グランは、ジャパンに務めるのではなく、昔の酒場の経営に戻っている。

本当は、またジャパンに勤めて欲しかったのだが、声をかけなかった。

リコリスさんとゆっくりするための時間を取れるよう気を使ったのだ。


「さて、ギルド設置は契約書どおりで問題ありません。

いつから設置できますか?」


「今日からだ。

最初は簡易窓口になるがな。」


「さすが、早いですね。

それと、ギルドカードですが偽名での登録は可能でしょうか?」


「それはできない。

ギルド側が、ギルドカードへの虚偽をすると、職員が罪に問われることになるからな。」


ギルド側が?

つまりは、使用者側が何らかの方法で偽造しても、

罪には問われないということか。

おそらく、偽造する手段がないということなんだろう。

まぁ、色々と試してみるか。


「じゃあ、詳細はインパルスに任せるよ。

俺は執務室に戻る。

ジャックさんは、いつまでこちらに滞在されるのですか?」


「あと2日ほどだな。

今日の結果を中央本部へ報告しなきゃならん。」


「そうですか。

ジャックさん、色々とありがとうございます。」


俺はジャックと握手を交わし、部屋から出ていった。


執務室に戻る途中、ウルティアとアルスと廊下ですれ違った。

しかし、アルスはウルティアのすぐ後ろに隠れてしまう。


「カイン、ここを通るなんて珍しいわね。

お客様ですか?」


「そうなんだ。

ジャックがギルドの設置相談にきたんだよ。」


「ジャックさんが?

ギルドにもう復帰されたんですね。

でも、事務型とは意外ですね。」


「俺も驚きさ。

まぁ、あの様子じゃ、すぐに事務型から現場に戻りそうだけどね。」


カインは、軽く談笑した後、執務室へと向かった。

アルスとは、一度も目があわなかったのだが、どうやら男嫌いのようなので、仕方がないのだろう。



【アルス】


ウルティア姉さまとカイン首相が談笑している。

本当は、私も混ざるべきなんだろうけど、

男性は苦手なのだから仕方ない。


なるべく話したくないのだ。


それにしても、ギルドか…。

国に戻るためには、国境での検問が必要となる。

しかし、ギルドに所属すれば、検問はフリーパスになるのだ。


後でウルティア姉さまにお願いして、ギルドの方と話させてもらおう。


アルスは、国のことを思い出し、悲痛な面持ちとなっていた。



次回、『68.ギルドからの依頼』へつづく。

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