63.プロローグ
1807年、世界は大混乱となった。
農作物が不作となったのだ。
今まで、数々の農作物が神の恩恵を受けていた。
しかし、突然、神の恩恵がなくなったのだ。
人々は、気づかなかった。
そして、気づいた時には手遅れだった。
ここの世界の人々は、今まで対して努力しなくても農作物は豊作だったのだ。
人々は、農業に対して努力することを忘れてしまった。
そして、食料を求め、物価の高騰が始まる。
しかし、全ての者がお金持ちなわけではない。
なけなしの金で食料を買うと、
他の品物を買うことができなくなった。
そして、品物が売れなくなれば、給料は支払えない。
雇用解雇が相次いだ。
大恐慌が、始まる。
ある国で、国の備蓄がつきかけた。
政策として、共通貨幣を止め、独自貨幣を導入し、食料を買っていく。
当初は、上手くいった。
しかし、全員がお金を持ち始めたのだ。
商人は、より高く買ってくれる者へ売る。
国も買うためにはお金を作るしかない。
そして、ある現象が起きた。
食べ物を買うのに、値段ではなく重さで売るようになったのだ。
当然、国に対して不満が広がる。
暴動が起きた。
政治の混乱に拍車がかかる。
自然と誰かに助けを求めたくなるのはムリもない。
そして、隣国の三国同士は助け合った。
その結果、隣国同士で大混乱に陥った。
三国の関係はまるで火薬庫のようになり、
自然と導火線へと変質していく。
そして、悲劇は起こる。
隣国を恨んだ国の国民が、
皇太子の結婚式でテロ未遂を起こした。
当然、当事者間の関係は悪化する。
そして、戦争が始まった。
しかし、そこを狙う国がいた。
神聖ゾルダクス。
大不作にも大恐慌にも影響を受けない国は、僅かな国しかいない。
その僅かな国の一つが神聖ゾルダクスだった。
神聖ゾルダクス。
宗教国家である。
この国の成り立ちは、
未だに謎に包まれている部分が多い。
249年、まだ村落だった。
そして、大飢饉が起こる。
原因は分かっていない。
一説によると、太陽が闇に覆われ、
そして作物が育たなくなったとされている。
人々は神に祈った。
しかし、闇に閉ざされ、願いは届かない。
そこに一人の女性が現れる。
名を『卑弥呼』といった。
その者は、人々を導いていく。
その者が、話すように農作をしてみる。
豊作となった。
その者が話すように、狩りに出かけてみる。
大量だった。
いつしか、村落は大きく膨れあがり、
国を形成する。
国ができると、他国との争いが起きた。
攻められる。
卑弥呼の指示に従う。
逆に攻めかえし、他国を吸収する。
しかし、数年後、卑弥呼は没した。
また飢饉が起こりかける。
しかし、卑弥呼が話したことを思い出したかのように、農作をしてみる。
飢饉は回避された。
そして、光が戻る。
神の恩恵をまた受けられ、農作物は豊作となった。
人々は、その数年で知った。
神はいる。
しかし、神は万能ではない。
神は気まぐれである。
神は決して、人を優先するわけではない。
あたりの国を見渡す。
人々は戦いに明け暮れていた。
神が見捨てないわけがない。
いつか人々は、神に見捨てられる。
だから、その時のために準備をしなくてはならない。
しかし、人々は神を心の支えにしている。
ならば、存在しない神をでっちあげ、
神として心の支えにすればよい。
ゾルダクスという名だけの神は、
そうして誕生した。
そして、人々は考える。
神に捨てられても生き残るために、
自立した生活を送らなければならない。
その教えを広めなければ。
人々を救うのだ。
そのために、卑弥呼に変わるリーダーが必要となる。
敬意を評し、『姫巫女』の称号を作ろう。
そして、3人の姫巫女に国を導いてもらうのだ。
神聖ゾルダクスは、
宗教国家である。
しかし、神からの脱却を目指した国家であった。
その目的のために、周辺諸国へと侵略を始めていく。
しかし、人々は知らなかった。
卑弥呼は、神託による助言を受けて、皆へ話していたことを。
そして卑弥呼も知らなかった。
神託を行ってはいたものは神ではなかった。
その者の名は『ソラト』。
卑弥呼は、ソラトの声を神託と思い、皆に話していたのだ。
神聖ゾルダクス国は、長い間、戦い続ける。
そして、時代とともに国は変質していく。
権力・名誉・金。
欲望渦巻く国となり、
本来のその意義を失いかけつつあった。
また、時代とともに思想も変わる。
そのことを彷彿させるかのごとく、
全く別の考えを持つ一人の姫巫女が登場した。
そして、一人の男がその姫巫女へ近づく。
二人の出会いは、化学反応を起こし、
状況が一変することとなった。
神聖ゾルタクス国は、他国同様、自国内で争いが起こることとなる。
その行き着く先の結果が、世界の根底を変えることになるとは知らずに…。
【???】
二人の女性が浜辺にきている。
「姫巫女さま、ここからお逃げ下さい。」
そこには、一人しか乗れないであろう船がある。
これで、大海原に逃げろというのだ。
「いやよ、お姉さまっ!
私も一緒に戦う。」
女性は、首を横に振る。
「あなたは、我々の希望なのです。
今は多勢に無勢です。
どうか、生きながらえ、
お父様の敵をとってください。
そのためにも、ここで死んではなりません。
あなたは、生きなさい。
?????、愛してるわよ。」
姉であろう女性は、
無理やり妹を船に乗せ、沖に出させる。
浜辺には、多くの兵が集まってくる。
妹であろう、その女性はその光景を目に焼き付けながら、大海原へと出航した。
その船は大海原に出る。
しかし、途中で嵐に巻き込まれ、
船は沈没する。
一人の女性が島名『イーストランド』へ流れついた。
それは、偶然だったのか、それとも必然だったのか、誰にも分からない。
これを運命と呼ぶべきなのかもしれない。
その女性は、海辺で気を失っているところを、
元女神ウルティアに助けられたのだった。
次回、『64.爆走!魔導列車!!』へつづく。