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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第2章 破滅円舞曲
62/120

62.【外伝1】そうだ、海へ行こう!

コンコン。

執務室の扉をノックする音が聞こえた。


エレナが執務室に入り、近づいてきた。


「カイン、夏よっ!

何か忘れてない?」


突然のエレナの発言に、俺は驚く。


「ん?

この国に夏なんて、あったか??」


まだ夏の暑さを味わってない気がするんだが…。


「この前、花火をしたでしょう。

だから、今は夏なの!」


「そ、そうか。

夏なんだな。

それで、忘れていることとは?」


エレナが、ぐいぐいと話してくるので、夏だと認めてしまった。

そう、今は夏なのだ。


「夏といえば、海よ!

海に行きましょう!」


その時、タイミングよくインパルスが執務室に入ってきた。

エレナは、突然のインパルスの入室により動揺した。

カインと二人で海に行きたかったので、

今の発言を他人に聞かれるのは恥ずかしかったのだ。


「お疲れ-。

ん?

学級委員長、そんな真っ赤な顔して、どうしたんだ?」


「いや、エレナが海に行きたいらしいぞ。」


インパルスはエレナの顔を見る。

そして全てを察知した。


「ぶはっ。

なんですか、そのイベント!

こりゃ、やるしかない!

皆を誘って行きましょう!」


エレナはインパルスに考えを見抜かれたのが分かり、顔を真っ赤にする。


「インパルス-!

私の気持ち、分かって言ってるんでしょ!」


「はいー?

何のことだか。

さぁ、海の準備だ!

さぁ、水着を用意しないとな!」


「帰ってきたら、仕事は倍です。」


「かんにんして。」


2人は言い争いをしながら、部屋を出て行く。

俺は一人、部屋に残された。


えーっと、これは海に行くことは確定なのか!?

二人のやり取りに圧倒され、聞きそびれてしまった。


どうしよう、この書類の山…。

徹夜が確定した瞬間だった。



そして、翌日、海にくる。


「うん、気持ちいい海風だな。

こんなところに、こんないい海岸があるなんて知らなかったよ。」


俺は海を見ながら、呟いた。

遠くの方でエレナがインパルスに文句を言っているのが聞こえる。


「インパルス、

ど、どういうことなの!?」


インパルスも気まずそうだ。

インパルス自身にとっても、この事態は想定外だったらしい。


「いや、それが。

昨日、ジャックに話したんだよ。

そうしたら、海といえば酒だから着いて行くって話しになって…。

さらにジャックが酔った勢いで、

酒は大勢で飲むのが楽しいんだから、たくさん誘おうって話しに…。

まさか蓋を開けてみると、こんなメンバーになるとは…。」


皆がいる方向を見る。


「ふふふっ、お兄様!

どうですか、私の水着姿!

悩殺されますでしょう。」


マリーナは、青系の水着を着ている。

記憶を失っているはずなのに、カインのことが好きみたいだ。


「満里奈、ちょっと派手すぎですよ。

この水着ぐらいが、ちょうど可愛いの境界線でしょ。」


セレンは緑系の水着だ。

マリーナと話せるのが嬉しそうにしている。


「いやいや、これぐらいは普通だと思うぞ。」


赤色の水着でアテナは、二人に話し掛けた。

それにしても、皆スタイルがいい。


「わ、私の存在が霞む…。」


その三人を見てエレナは思わず、自分の水着を見る。

どちらかといえば、スクール水着のような地味な水着なのだ。


「大丈夫、あなたはエロエロボディなのよ。

逆にそそるわ!

自信を持って!」


色欲の魔王ラクリアがそんなエレナを励ます。

相変わらず、きわどい紫色の恰好だ。


「なんで、あなたがここにいるの!?」


「あなたの煩悩が凄すぎて、気になって来ただけよ。」


インパルスは、エレナに対して冷たい目をする。


「学級委員長、魔王まで呼び出してしまうほど、

煩悩まみれだったんだな。」


エレナは右手を振り上げ、

インパルスにビンタをしようとした。

しかし、インパルスは避けて逃げ出した。

エレナは、顔を真っ赤にして追いかける。


ザバーン。

そんななか、海からクレアが顔を出した。


「カインさまー。

お魚、とれました!」


どうやら、素潜りで魚を捕まえてきたらしい。

1メートル級の魚だ。

魚を手に持ち、浜辺までやってくる。

クレアは動きやすいオレンジ色の水着だ。


「ふふふっ、斬りがいがある魚ですね。

次元斬りっ!」


そこにグリードが、包丁で魚をさばく。


「あっ、何をするんですか!

煮魚にするためにとったんですよ。」


怒るクレア。

つまみ食いをしようとするグリード。

そこにジャックも混ざる。


「いや、魚といえば刺身だろう。

このわさび醤油は、天下一品だぞっ。

上からかけてやる。」


「あぁー!

私、ワサビが苦手なんですよ!

なんてことを!」


クレアの尻尾は怒りのあまり、そり立った。


「みなさーん、

ご飯できましたよー。」


天使の羽根で飛びながら、

ミカエルがやってきた。

天衣無縫の天女のような水着?だ。


やってきた方向からは、ルシファーとサタナキアが楽しそうに料理を皿に運んでいる。


ミカエルの姿に見とれてしまい、

インパルスは足を止めてしまった。

そして、エレナに水際へ追い詰められる。


「ふふふ、もう逃がさないわよ。」


追い詰められたインパルスは、閃いた。


「もしや、俺の能力って水の上を走れるんじゃね?

音速っ!」


インパルスは、右足が沈む前に左足を出し、左足が沈む前に右足を出して、海の上を走った。


そして、当然、衝撃波が起こる。

その結果、大きな波が発生した。


海辺で砂遊びをしていた弱々しいグラトニーが波に対して、対処する。


「なんの!

反転!」


筋肉モリモリとなり、波も反転した。

水着がビッチビチでブーメランパンツのようになる。

み、見たくない。


波は全て、インパルスへ戻った。

そして、そこにエレナが追い打ちをかける。


「言霊!

インパルスを、かなづちに!」


インパルスは一時的にかなづちとなった。


「ぎゃー!

お、溺れるっ。

た、たすけてー。」


セレンがそれに気づき、アテナに話した。


「インパルスが溺れそうみたいよ。

水が邪魔みたい。

なんとかしてあげて。」


「セレン、自分で何とかしなさい。

まぁ、今回はいい。

フレアっ!」


アテナは、インパルスに向かって爆裂魔法を放つ。

インパルスの周りの水は、一瞬で蒸発した。


「「いや、もっと波くるから!」」


エレナとグラトニーは思わず、ツッコむ。

そして、対処に間に合わず、

大きな波が皆を襲った。


バシャーン!


ミカエルは、防御結果を張ったため、料理フロアは無事だ。


しかし、クロノスナンバーたちは全員、波でびしょぬれになっている。


最初にクレアの怒りが爆発した。


「もう我慢できません!

どうやらここで決着を付けないといけないようですね。

憤怒の魔王、降臨!」


クレアに憤怒の魔王が降臨する。

アテナは対抗した。


「ふっ、それではこちらも対抗させてもらおう。

傲慢の魔王、降臨!」


降臨した衝撃で砂が舞う。

他の人達が砂まみれになる。


セレンも砂まみれで嫌になった。


「もー、いやっ!

ゆっくりさせてよ!

怠惰の魔王降臨!」


グリードも、負けじと乱入した。


「面白そうだね。

血が騒ぐよ。

こいっ!四獣、朱雀!」


グリードに朱雀が舞い降りる。

戦ったことのあるジャックが驚く。


「ちょっと待て!

なんだよ、それっ!」


『カイン、危ない!』

ウィズが具現化した。

「強欲の魔王、降臨!」


「「「誰よっ、その女性!」」」


へっ!?

それよりも、強欲の魔王!?


またもや、衝撃波で砂が舞う。

エレナも砂まみれだ。


「せっかくのカインとのデートだったのに!

もうー嫌っ!

ラクリア、力を貸しなさい!

色欲の魔王降臨!」


「はいはいっ、協力しますよ。」


エレナに色欲の魔王が降臨すると、

水着がきわどくなった。


「きゃー!!

なんで、水着も変わるの!?」


マリーナも混ざる。


「ふふふっ。

カインお義兄さまは、渡さないわよ!

嫉妬の魔王。再びよっ!」


特大のエネルギーの嵐で、砂塵が吹き荒れる。


そこにウルティアが、やってきた。

どうやら、今まで建物の中にいたため、外でのやり取りを知らなかったらしい。


「みんなー、フルーツを切ったわよー。」


ウルティアはフルーツの盛り合わせを手に持っていた。


そこに砂が吹き荒れ、フルーツが砂まみれになる。


「…。」


ウルティアは、下を向いて沈黙した。

誰も表情は見えない。


そんなウルティアに神力が集まり出す。

ウルティアの周りに光の文字が浮かび上がった。


皆、立ち止まって焦る。

圧倒的な力の差を感じたからだ。


ウルティアが顔をあげると涙目だった。


「あなたたち、はしゃぎすぎです!

反省しなさいっ!!!」


神力の嵐が全員を襲う。


ズドーン。


クロノスナンバーもミカエル達も、

全員が吹っ飛ばされ砂浜に埋まった。

皆、元の姿に戻った。



俺とウルティアは、二人で夕日を見る。

夕日の景色は、キレイだった。

ただし、風景の中に首だけ砂から出ているのが数体なければ。


「あの~、ウルティアさん、

そろそろ出していただけないでしょうか?」


インパルスは、泣きそうに話す。


「カイン、夕日がきれいね。

このジュース、手作りだけど、どうかな?」


ウルティアは、ムシをした。


「あっ、あぁ。

とっても、美味しいよ。」


俺の顔は引きつっている。

あたりから声がする。


しくしくしく。


魔王ラクリア。

「うぅ、どうして私が。」


ジャック。

「やばい!

満潮だ!」


クレア。

「た、助けて下さい。

カインさまっ!」


俺はクレアの声に応える。

「ウルティア、そろそろ、皆を…。」


ウルティアの目が光る。

こ、こわい。


す、すまん。

俺には何も言えない。


『私が何でこんな目に…。』

「カインの薄情者-!」

「そんな、お兄様も好きです。」

「ふむっ、意外と砂の中は気持ちいいな。」

「あっ、夕日がきれー。」

「これも、いい経験ですね。」

「私、何もしてないのにー。」

「海は広いなぁ。」

「あっ、カニが鼻を!」

「酒をくれー。」

「ぐぅぐぅ。」



なんだか、俺も眠くなってきた。


むにゃむにゃ。

ぐぅぐぅ。

すぴー。



ハッと目が覚める。

執務室だ。

どうやら、夢を見ていたらしい。


はぁ、とんでもない夢だった。

それにしても、幸せな光景だったな。

いつか、そんな日がくるといい。

俺は、そんなことを思う。



コンコン。

執務室の扉をノックする音が聞こえた。


エレナが執務室に入り、近づいてきた。


「カイン、夏よっ!

何か忘れてない?」


えっ!?



→ 最初に戻る。


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