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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第2章 破滅円舞曲
56/120

56.新たな魔神の誕生

【カイン】


「……ン」

「…イン」

「カイン」


誰かが話しかけてくる。


「ダメだ。

何も考えられない…。

俺はもう疲れてしまったよ…」


「カイン、いつまで寝てるつもりだい?

君はまだ何もしていないじゃないか。

夢は寝て見るものじゃない。

夢は起きて見るものだろう?

さぁ、手を取りたまえ。」


夢か幻かは分からない。

だが、手を伸ばさずにはいられない。


「そう。

それでいい。

誰もが小さい時、空を見上げて手を伸ばしただろう?

あれと同じさ。

君は、ただ純粋に求めるものに手を伸ばせばいい。

今の君は力が足りない。

だから、今だけは僕が力を貸そう。」


カインは、光の中に包まれた。

意識がもうろうとしている。


体を動かしているのは、

自分なのか別の何かなのかは分からない。


ただ、カインは見つめていることだけしかできなかった。




【???】


ゆっくりと体を起こし、

立ち上がる。


何かが近づいてくる。


「ふっ、あれだけのダメージを受けて、

まだ立ち上がれるとはな。

マリーナ様も、おこしになった。

他の者は、このザマだ。

お前は早くマリーナ様のところへ行くがいい。」


周りには何人かが倒れている。

カインの知り合いなのだろう。


そうだとするならば、

この何かがカインを追い詰めた元凶だ。


「汝、何者であるぞ?」


少し言語が古くなってしまっている。

まぁ、久々なので仕方がないだろう。


その何かは、答える。


「頭を打って記憶が混濁しているのか?

私の名は、フィリックス・フィーナリオン。

この国の王にして、魔人である。」


「魔人?

その程度で魔人を名乗るのか?」


「なっ、なんだと!」


魔人を自称するものが、

怒り出す。


事実が気にくわなかったのだろう。

攻撃をしようとしてきた。


「まだ、痛め目にあいたいようだな。

私が魔人であることを身をもって思い知るがいい。」


微小すぎて分からないが、

何かのエネルギーを右手に溜めようとしているらしい。


それを放ってきた。

あたりの空間が、黒いエネルギーで包み込まれる。


右の人差し指に、吸収の光の玉を作り出す。

一瞬で、黒いエネルギーは吸い込まれた。


「なっ!?

何が起こった!?」


「魔人もどきよ。

そんな児戯で魔人を称するなど、

魔人に失礼であろう。」


先ほどと同様の小さな玉を、

魔人もどきに放つ。


魔人もどきは、避けることもできない遅い動きだ。

光の玉に、核となる力を全て吸収され、倒れた。


どうやら、人型になっている。

その人型は、髪が真っ白で、

老け込んでいた。

ただの人間となっている。


そのまま、カインが会いたがっていた女性のもとへ歩き出す。


「カインお義兄さま!

ようやく会えましたわっ。

マリーナです。」


おかしい。

この者は、確かにカインが会いたがっていた女性のはずだ。

しかし、何かが違う。

色々と混じった結果、違う存在になっているようだ。


「汝は、魔王?

いや、魔神か。」


「さすが、カインお義兄さまです。

隠せませんね。

私は魔王です。」


その者は最大の礼をつくすお辞儀をした。


「先ほどの者とは違い、

汝は謙虚だな。

汝の力は、神力をまとっている。

これからは魔神を名乗るがよい。」


「カインお義兄さま?

…。

いえっ、あなたは誰ですか?」


魔神は、不思議そうな顔をした。


「神となったのだ。

分かるだろう?」


魔神は見る。

だが、分からないようだ。

まぁ、新米の神なのだから、仕方がないのかも知れない。


少しだけ、力を開放した。

大気が震える。

天が赤く染まった。


世界の様々な場所がざわつく。

世界は、一瞬、混乱した。


「そ、そんな!

な、なぜ、あなたさまが、

こちらにいらっしゃるのですか!」


魔神は、動揺した。

そして、続けて声に出して名前を呼ぶ。


「神の福音を拒みしお方よ。」


その瞬間、世界が『神の福音を拒みし者』を、認識した。


そして、神の呪いが発動する。


「汝に頼みがある。

この者は、人間である其方と会いたいようだ。

会わせてやってはくれぬか?」


魔神は、頷いた。


「お心のままに。

今の私は魔神として存在しております。

今なら人の部分を残し、

魔神である私は眠りにつけるでしょう。」


魔神が眠りにつくのを見届けて、

神の福音を拒みし者も、

眠りにつくのだった。



【黄龍リュクレオン】


いたたたっ。

あの小僧めっ!

まさか、龍の咆哮を弾き返しよるとは。

少し気を失ってしまったのか。


それにしても、儂の体、鈍ってるの。

よくよく考えると、

カインと会った時もそうじゃ。


無限に羽ばたく羽根を持つ龍が、

一休みするといって会ったんじゃったな。


あれっ?

もしかして、運動不足?


そんな心当たりは、全くないのう。

カインと契約してからだって、

本を読み、お茶を飲み…


あれっ?

運動してない…。


よく見ると、ここはどこだ?

たしか山に吹き飛ばされたはずなのに。

ん?

なんで龍の神殿にいるんだ?


よく見ると、目の前でマジギレしてる龍王がいた。


「リュクレオン!

あなたは一体、何をしているのですかっ!」


「ち、父上!」


黄龍リュクレオンは、勘違いをしていた。

カインの中にいる時は、

契約の力により召還はできない。

しかし、実態になった瞬間に、龍王が召還したのだ。


吹き飛ばされたのではなく、

呼び戻されたのである。


「何故、呼び戻されたのですか?」


龍王は、怒った。


「急に存在が消えたのです。

心配するのは当然でしょう。

少し前に一瞬だけ力を感じたので、誰かと契約したのは気づきました。

あとは、イグニールから報告をもらって、

ずっと呼び出せる機会をうかがっていたのですよ。」


「イグニール…。

いつのまに…。」


そして、龍王はリュクレオンの体を見る。


「そのたるんだ、お腹…。

もう我慢できません。

お仕置きです!」


龍王は力を解放した。

リュクレオンよりも二回りは体が大きくなる。


そして…。


黄龍リュクレオンは、

ぼっこぼこにされたのだった。



【イグニール】


今頃、リュクレオン様は怒ってるだろうなぁ。


目の前の骸骨軍団を燃やしながら、

イグニールは考える。


まぁ、龍王様の命令が最優先だ。

許してもらうしか仕方がない。


それにしても、面倒くさい相手だ。

龍化して、一体を焦土に変えることができれば、なんと楽であろうか。


あれっ?

何故、いつのまに王城の庭に来てしまったのだろうか。

カイン様からの指示は、たしか…。


!?!?!?


まさか!

操られた!?


慌てて、玉座の間に戻る。


「無事ですか?」


「えぇ、私は無事ですよ。

なかなか、お早いお帰りで。」


その男の足下には、レオンハルト公爵たちが倒れていた。

既に絶命しているようだ。


レオンハルト公爵に仕えていたはずの男だ。


「何故、そんなことを!」


「何故?

愚問ですね。

爬虫類ごときに話す必要はありませんよ!」


つい、動揺からか、カッとなってしまった。


「なんだと!」


炎を吐く。

燃えた。


!?!?


ズバッ。

左手を斬られた。


よく見ると攻撃した場所には、

誰もいない。


「ふふっ。

どれっ、どのぐらいの力かな?」


男は炎を出す。


「なっ!?

全く同じレベルの炎だと!?」


「ふむっ。

使いやすそうですね。」


もう一度、炎を吐こうとする

しかし、出ない。


マズい!

龍化っ!


イグニールは、元の姿の炎龍へと姿を変えた。

王城は、イグニールによって半壊する。

王城の空へと舞い上がった。


全開だ。

「炎龍の咆哮!」


炎によって、王城は火の海に包まれる。

しかし、その男は、効いていないようだ。


間違いない。

人化していた時の能力を強奪されている。

炎無効化を手に入れているようだ。


この者は、危険だ。

龍化している時の能力が強奪可能かは分からないが、近づくのは危険な気がする。


ここは、撤退した方が良いだろう。


!?!?


バカなっ!

私は空を飛んでいたはずだ!

何故、王城の庭にいる!?

よく見ると半壊したはずの城は、元通りになっている。

壊れたのは王城の庭だけだ。

火に包まれているのも庭だけである。


「驚いているようですが、

もちろん秘密ですよ。」


イグニールは、動かない。

いや、動けない。


「ぐっ。」


その男は不敵の笑みを浮かべ、イグニールにとどめをさそうとする。


「わたしこそが、次代の神ですよ!」


イグニールは、その男に斬られる瞬間、

一気に視界は変わった。



【龍王】


足下には、バカ息子である黄龍リュクレオンが転がっている。


このバカ息子は、龍玉すら持たずにいたのだ。

何回、殴っても気が済まない。

力の源を手放していたのだ。

しかも、ただ自分の部屋に忘れただけという失態。

体も弱って当然であろう。


!?!?


なんだ!?

世界がざわめいている。


慌てて、千里眼を見てみる。

タイミングからすると、

フィーナ国の王都付近で何かあったのだろう。

そこに格の違う男女を見つけた。

男は、どこか知っている雰囲気だ。


そして、突然、分かってしまった。


「何故、神の福音を拒みし者がいるのだ!」


状況が知りたい。

近くにいるはずのイグニールを探す。


なっ!?

殺されそうになる瞬間だった。


慌てて、イグニールを呼び戻す。

間一髪だった。


「バカ息子をたたき起こせっ!

イグニールが戻ってきたら話しを聞く。

すぐに龍王の間へ来るよう指示しろっ。」


次から次へと、やっかいごとが増えていく。

龍王は、頭が痛くなったのだった。



次回、『57.リコリスの花言葉』へつづく。

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