表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第2章 破滅円舞曲
55/120

55.アテナの能力

魔人となった国王が、腕を振る。

稲妻がアテナとグラトニーに落ちる。


グラトニーは能力を使用して、

アテナと自分を守る。

「能力 反転!」



稲妻は、天へ走る。

そこにアテナも能力を使用する。


「稲妻!」


複数の稲妻が、魔人へ降り注ぐ。

魔人は、右手で全ての稲妻のエネルギーを受け止め、一つの塊として前方全体に雷撃砲を放った。


グラトニーは、能力を使用する。

しかし、反転の防御網を突き破った。


グラトニーとアテナは、避ける。


アテナは、事前に能力を聞いていたらしく、

反転の力を上回る場合、

防御網が突き破られることを知っていたのだ。


アテナは、すかさず自身に稲妻を落とし、

力を集中させる。

魔人が放ったよりも、範囲が狭い分、

威力が強い雷撃砲を放った。


魔人は、片手で払いのける。


「ふむっ。

なんとなくだが、アテナ女王の能力が分かったよ。

他人の能力を、上位能力にして自分のものにする。

ただし、クロノスナンバー特有の能力は自分のものにできない。

そんなところか。」


アテナは、動じない。

予想よりも能力がバレるのが早かったが、

いつかバレることだ。


能力名『究極進化』


一度、見た能力を進化させて使えるようになる能力だ。

ただし、能力の進化先が分からないのがネックだ。

だが、間違いなく最強クラスの能力だろう。


「貴様の能力は、

全て私の物になるのだよ。

ぜひ、遠慮せず色々と試して欲しい。」


アテナは不敵に笑った。

それを見て、魔人も笑う。


「君は勝てないよ。

何故なら、前提条件が違いすぎる。」


魔人は、ただ普通に腕を振り上げた。

あたりが爆風に包まれる。


魔人は、ただ普通に、何もない空間に拳を振り抜いた。

風圧で地面がえぐれていく。


アテナとグラトニーは、

冷や汗が出る。


「分かっただろう。

能力を使用しなくても、ただの攻撃だけで充分なのだよ。

もはや、私は人を遥かに超越した存在なのだから。」


アテナの表情は変わらない。


「それでも、私は負けんよ。」


風刄。

炎刄。

水刄。

雷刄。


ありとあらゆる刄で、

魔人を攻撃する。


だが、防御すらさせることすらできない。


そして、魔人の注意がアテナに向かった所で、

グラトニーが能力を使用する。


魔人の前後左右に内側へと幾重にも反転をかけたのだ。

そして、一カ所だけ、能力の穴をあける。


「広域殲滅魔法メガフレア!×100」


極大魔法を放った後、グラトニーが攻撃した箇所を反転の蓋で閉めれば、全ての爆風が魔人に向かう。

先ほどの刃で肉を傷つけたので、

内部からもダメージを与えられるだろう。

耐えられるはずがない!


アテナは、勝ちを確信する。


その時、一陣の風が吹いた。


「あらっ。

面白そうなことをしてるわね。

聖魔人同一!」


アテナの放ったメガフレアは、消えた。

グラトニーが使った反転は、消えた。


「「なっ!?」」


アテナとグラトニーは、突然、現れたマリーナに驚いた。


「あらっ?

クロノスナンバーかしら。

見たことがある気がするわね。」


「マリーナ様、

私の楽しみを奪わないで下さい。

せっかく、少しは痛みを思い出すことができそうだったのですよ。」


そこにクレアとセレンが追いついた。


「ようやく追いつきました!

今度こそ、止めてみせます。」


「あらっ、もう追いついたのね。

でも、私はあなた方の相手をする気になれないわ。

フィリックス、相手を交換しましょう。」


「やれやれですよ。

分かりました。」


魔人はため息をついて、体を向ける相手を変えた。


アテナは、驚く。


「マリーナ、今のは人としての判断か?」


マリーナは答えた。


「まぁ、そんなところね。

ところで、カインお義兄さまは?

あぁ、あちらで少し休まれているのね。

なら、起きるまで相手をしてあげましょう。」


アテナとグラトニーは、構える。

さっきの能力は、聞いていた通りの能力で、

無効化だろう。


どちらかの攻撃が無効化された後、

すぐに攻撃すれば問題ないはずだ。


「行くわよっ。」


グラトニーから、攻撃を仕掛ける。

しかし、マリーナの方が早い。


「早くカインお義兄さまに愛されたいわ。

そうだ。

付近で、ちょっと刺激的なことをして

早く目を覚ましてもらいましょう。

氷炎地獄(インフェルノ)!」


グラトニーは、嫉妬の炎に包まれる。

アテナは、嫉妬炎の対価である氷に閉じこめられる。


一瞬で死ぬ直前まで、追い込まれた。

しかし、途中で攻撃が中断される。

攻撃が中断されると、そのまま地面に倒れ込む。


言葉が出ない。

マリーナが魔法で二人の体力を回復させる。

そして、また攻撃を仕掛ける。


「あぁ、こんなんじゃダメだわ。

まだまだまだまだ、足りないわね。

冥府の(コキュートス)


二人を冥府の闇が襲う。

そして、大きなクレーターが出来た。


また死ぬ直前まで追い込まれる。

そして、またもや攻撃が中断された。

ふたたび、マリーナが回復魔法で二人の体力を回復する。


「ダメよ、私。

もっと抑えなきゃ。

ダメ、止められない。

なんて快感なのかしら。

黙示録の業火(メギドフレイム)


天まで炎がのぼる。


アテナもグラトニーも、

やられるがままだ。


何故か、死なないようギリギリのところで攻撃を中断される。


グラトニーは、思わず叫んだ。

「何故、ひと思いに殺さないの!」


マリーナは、答える。

「この後、私はカインお義兄さまと、

結婚式を、あげるのよ。

見物人がいなきゃつまらないじゃない。」


アテナは、思う。

ダメだ、この女性はもう狂ってる。


それにしても、何故先ほどから能力が発動しないんだ?

マリーナにに無効化される以前に、使用すら出来ない。

マリーナはアテナの考えを見透かしたかのように答える。


「あなたの能力は私には使えないわよ。

だって、あなたは人。

私は魔王。

魔人は人をベースにしている。

魔王は、別の存在だわ。

人に魔王のマネが出来るわけないでしょう?」


たしかに、その通りかもしれない。

魔王か…、仕方がない。

これだけは使いたくなかったんだが、

そうも言ってられないようだ。


「芽吹けっ!

傲慢の種よ!」


アテナが、隠し持っていた傲慢の種が一気に芽吹く。

そして、能力『究極進化』とあわさって大輪の華を咲かせた。

称号にある『傲慢の魔王の後継者』が光はじめる。


これで、一時的に魔王と同じ強さになれるはずだ。

いや、傲慢の魔王は今はいないのだから、魔王自身になれるかもしれない。

自身のステータスを見る。

見ると、『傲慢の魔王』となっていた。


どうなるか自分でも分からない。

人に戻れなくなる可能性もある。

そうなる前に、一瞬でケリをつけて元に戻らなければならない。


アテナの服が妖艶な姿になる。

力が外から集まってくる。

自分でも驚くほどの凄い力だ。

これなら、勝てる!


「マリーナ、覚悟っ!」


マリーナに攻撃を仕掛け、

次の瞬間、私は意識を失った…。




昔のことを思い出す。


ふと気づく。

そうか、私は気を失って、

夢を見ていたのか。


「ぐっ。」


体を起こすと、

体中が悲鳴をあげている。


「まさか、これほどとはな。」


マリーナは、アテナを見下ろしていた。


あたりを見回すと、グラトニーもセレンもクレアも、既に全員が倒れている。

気を失っているようだ。

私が気絶している間に、やられてしまったらしい。


マリーナは、アテナに話しかけた。


「見事だったわよ。

人でありながら、そこまで強くなれるのはね。」


「教えてほしい。

私は何をされたんだ?」


「私は魔王を総べる魔王よ。

魔王は、私には歯向かえない。

誇りなさい。

傲慢の魔王の後継者よ。

あなたは、一時的に魔王として認められたのよ。」


「なんだ、それは。

つまりは、ただの自滅だったんじゃないか。」


自分自身で呆れてしまう。

本当は違う攻撃を受けたのかもしれないが、

判断がつかなくなるまで追い込まれてしまっているようだ。


ダメだな。

もう体が動かない。


「さて、私とカインお義兄さまの結婚式を、そこで見ていなさい。」


体は動かなくても、口は動く。


「それなんだがな、

カイン首相は、既に結婚してるぞ。」


「なんですって!?

最初の女は、私となるはずよ!

許せない!

いえっ、妾でもいい!?」


マリーナは、少し混乱した。

ウロボロスに、人と魔王の間に打たれたくさびは、最初は小さなひずみだった。

しかし、時が経つにつれ、大きなひずみへと変わっていく。


アテナは、くさびのことなど知らない。

だが、先程から見せる人としての反応。

そこに活路を見出すしかなかった。


マリーナに人の心が戻ってくれれば、

一気に形勢逆転するチャンスがあるかもしれない。


「そのままでは目が覚めたカイン首相が悲しむ。

早く人間に戻りなさい。」


アテナは、優しく語りかけた。

マリーナの混乱は収まらない。


「カインお義兄さまに嫌われる?

そんなの、ダメよ。

私は愛され続けたいわ。」


「もうすぐ目が覚める。

さぁ、早くカインに愛される女性に戻りたまえ。」


マリーナは、アテナを見つめた。


「あなたは何でそんなにカインお義兄さまのことが詳しいの?

いえ、何故、カインお義兄さまの周りには女性ばっかりなの?

どうして?

許せない。

私の中の嫉妬が、うずくわ。

やはり、全員、消しましょう。」


ダメか…。

だが、最後まで足掻く。

それが、私だ!


だが、体が動かない。

むしろ、どんどん意識が薄れていく感覚がある。


その時、仰向けに倒れていたカインが、

右手を天にかざした。


あたりが静寂に包まれる。

そして、風がカインを中心に吹いた。


カインはゆっくりと立ち上がる。

しかし、目は虚ろのようだ。


カインに声をかけようとするが、私は声も出なくなってしまっている。


魔人となった国王がカインへ近づくのが見えた。


気のせいかな…。

あっという間に魔人がカインに倒された気がする…。

ダメだ、まぶたが閉じていく…。

……。

…。


私はそこで気を失ってしまった。



次回、『56.新たな魔神の誕生』へつづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ