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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第2章 破滅円舞曲
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54.天翔院アテナ

【アテナ】


大学時代、私はいつも同じお気に入りのカフェテラスにいた。


周りのみんなは、私のことを才色兼備とよくいう。

自分でも、それは自覚している。

特に困ったことはない。

いや、正確には少しだけ。

実は、少しだけ人付き合いが苦手だ。

だから、いつも同じカフェテラスに来てしまう。


大学の勉強をしたり、

趣味の本を読んだり、

たまに友達と談笑したりしたものだ。


家は裕福だったので、

お金に困ったことはない。


だが、作法などが多く、肩身が狭い。

だから、つい家に帰らずにカフェテラスに居着いてしまった。


適度に緑があり、

天気がいい日は本当に気持ちよいのだ。


ふと友達となった女性の話しを思い出す。

どうやら、友達である夏凛は、友達同士で同じ人を好きになっているようだ。


だが、本人は恋していると気づいていない。

恋を知らない私が話すのもなんだが、

鈍すぎる。


夏凛にその人の画像を見せてもらった。

今でもちょっと笑ってしまうのだが、

卒業アルバムを撮っただけの携帯電話の画像だ。


夏凛に聞いてみる。

「一緒に撮った画像はないのかい?」


夏凛は、もじもじして答えた。

「そんなの撮る機会なんて、

なかったよ。」


いや、あるだろう。

それだけ長く一緒にいたのだから。


小中高、どのタイミングでもあったはずだ。

奥手すぎる。


それにしても、卒業写真を見るがあまりパッとしない男性だ。

まぁ、よく見積もって、中の上ってところだろうか。

写真写りが悪いだけかもしれないが、

それを考慮しても、高くてもそのぐらいの評価だろう。


朝霧海斗か…。


今、読んでいる思想論の著者と名前が似ている。

夜霧空斗。

まぁ、苗字も違うし偶然だろう。


それにしても、この本は面白い。

各政治体制の批判とともに、

改善方法が書いてある。


だが、全てに共通していることがある。

それは、強力なカリスマ的指導者がいれば、

全てが変わるということだ。


それには絶対君主制だろうと、

民主主義制だろうと変わらない。


そんなことを考えていたら、

ふと周りが光はじめた。


気付くと、真っ白な部屋にいる。


「初めまして、天翔院アテナさん。

僕の名前は、クロノス。

神だよ。」


ダメだ、声が出ない。


「転生の影響で話せないみたいだね。

とりあえず、心の中で思ってくれれば、

思考を読み取るから大丈夫だよ。」


なるほど。

では、そうしよう。


神よ、地球に戻してくれ。


「ごめん、もうムリなんだ。

お詫びと言ってはなんだけど、

新しい世界に行ったら、

凄い能力をあげるよ。」


ふむっ、にわかに信じがたいな。

神なのにできないのか?

まぁいい。

地球に戻せないんだろう?

凄い能力か。

それだけでは、誠意が足りないな。


それと合わせて、転生先を決めさせてくれ。


「いいけど、どこがいいの?」


国を動かせる立場になれるところがいい。


「なるほどね。

じゃあ、そうしてあげるよ。

そうそう、君を転生させる目的だけど、

魔王を倒して欲しいんだ。」


ふっ。

神ともあろうものが、

何故、そんな見え透いた嘘をつく?


クロノスの雰囲気が変わる。

「…。

頭の切れる子は、嫌いじゃないよ。

だが、切れすぎる子は、

嫌いだな。」


それが、私だよ。

だから人付き合いは苦手なんだ。


「さすが、あいつが見込んだだけのことはある。

今は、言えないが、いつか分かる時が来るだろう。

そして、いつか彼の道を照らしてあげて欲しい。

それまでは自由にしていいさ。」


よく、分からないが、

まぁいい。

おいおい分かるだろう。


そして、あたりが白く輝き出す。


私は異世界へ転生した。


私は幼少期に記憶を思い出していた。

正直、赤ん坊を繰り返すなど恥ずかしいので、

ありがたい。


暮らしている場所は、

フィーナ国の森だった。


どうやら、母が王の子である私を身籠もった際、

暗殺を恐れて逃げてきたようだ。


私は付き人のグラウクスから教わり、

この世界のことを知った。


そして、自らの能力を知る。

この世界の人にとっては、

圧倒的だろう。


12才の時、実の父である王が崩御したと知らされた。

そして、王位継承権の内戦へと突入したことを知る。


チャンスだ。

私は母とグラウクスを説得し、

ローマネリオン公国へと向かう。


私に王の血が流れてると知ると、

群がってくる愚か者がいたが、

とことん利用してやった。


そして、並み居る王位継承者たちを、

全員たおした。


だが、それだけではダメだ。

昔、読んだ夜霧空斗の本を思い出す。

完璧な為政者になるのだ。


それから、周辺諸国を制圧していく。

そして、善政を行った。

そして、いつからか、私は『現世に舞い降りた女神』と呼ばれるようになった。


ふと思う。

何でこんなことを思い出したのだろうか?

そうか、私は気を失って、

夢を見ていたのか。


「ぐっ。」


体を起こすと、

体中が悲鳴をあげている。


「まさか、これほどとはな。」


そこには、アテナを見下ろすマリーナがいた。




時は数刻前に戻る。


晴れていたはずの空が曇った。

声が聞こえる。


「我が名は、フィリックス・フィーナリオン。

第27代、フィーナ国の王なり。

国民よ、我が力に恐怖せよ!

そして、ひれ伏すがよい。」


雷が吹き荒れ、落ちてくる。


「マズい!

結界!」


私は自らの能力を使って、

自軍を防御結界で守る。


しかし、人数が人数だ。

全員の防御結界は、張れなかった。


何人かが雷に打たれ、

絶命したようだ。


遠くから、悲鳴が聞こえた。

倒し、埋葬していたはずの敵が地面から甦り、

襲ってきたようだ。


「うろたえるな!

一度、倒した敵だ。

恐れるな!」


私は空を飛ぶ。


「極大魔法メガフレア!」


一気に敵を倒す。

生者にこの力を使うのは抵抗があるが、

死者になら抵抗はない。


しかし、倒したはずの敵が甦ってくる。


私は数度、極大魔法メガフレアを使ったが、

結果は同じだった。


グラウクスに意見を求める。


「我が賢者殿は、どう思う?」


「おそらくですが、

状況からして元凶を叩かなくては、

同じことの繰り返しになるでしょう。」


「同じ意見か…。

注意すべき敵は魔王だけかと思ったが、

どうやら違ったようだな。

グラウクス、ここは任せる。

グラトニーを呼べ!

国王を討ちにいく!」


そして、この相手には強者でなければつとまらない。

グラトニーと向かうことにした。


王都へ向かう途中、

城外で光の柱が舞い降りた。


聞いたことがある現象だ。

カインの攻撃だろう。


「急ぐぞっ!」


現場に到着すると、

そこには異形の者がカインに近づいていた。


グラトニーが叫ぶっ!

「カイン首相っ!」


グラトニーは、一気に異形の者へ飛び、

殴り飛ばした。


私は話す。

「貴様は、何者だ?」


異形の者は話す。

「おやっ?あなたはローマネリオン公国の女王かな?

故郷へ戻ってきたのですね。

私の名は、フィリックス・フィーナリオン。

この国の王だよ。」


私は驚いた。

「私のことを知っているのか?」


「それはもちろん。

常に見張らせてもらっていたよ。」


グラトニーは、低い声で怒鳴る。

よく見ると殴ったはずの右手は、

折れているようだ。


「国王だと?

国民を傷つける者のどこが王だ!

お前に王の資格はない。」


「おや、グラトニー。

戻ってこないと思ったら、

そちら側に付いたのか。

私はもはや人ではない。

魔人だよ。

人には、魔人のことを理解などできないさ。」


カインを敗るほどだ。

ステータスを見る。


恐ろしいほどの強さだった。

だが、負けるわけにはいかない。


私は、死闘の予感に身震いしつつも、

不退転の決心で魔人と相対するのであった。



次回、『55.アテナの能力』へつづく。

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