5.【幕間】クロノス神と女神ウルティア
ちゅどーん。
かちゃかちゃ、びびびびびー。
どっかーん。
「…ノス様!」
きゅいーん。
どどどどと!
「クロノス様!!」
クロノス神の目の前に女性が立っている。
その女性は、クロノス神が両手で持っていたものを取り上げた。
「うわっ、びっくりした!
どうしたんだい、ウルティア?」
突然、目の前に現れたことにより、クロノス神は驚いているようだ。
「地球のゲームに夢中になりすぎです!
何度も声をかけたのですよ!」
どうやら、女性は何度もクロノス神に声をかけていたらしい。
クロノス神が、どうやらゲームに夢中になりすぎていただけのようだ。
「だって、地球のゲーム楽しいんだもん。」
見ると女性は涙目になっている。
どうやら何度も話しかけたのに、無視されつづけたのがツラかったらしい。
「はぁ、もういいです。
クロノス神様が興味本位で転生させた方たちの件で話しにきました。」
大きく目を開くクロノス。
「忘れてた!あれからもう1年ぐらい経ったっけ?
どうなったのかな?
何か面白いことになっているといいなぁ。」
はぁ~。
女性は、思わずため息をつく。
「あれから、もうすぐ20年になりますよ!
それに、クロノス様が加護を授けた転生者たち、さっそく問題を起こしました。
現世を見てください!」
遠い目をするクロノス。
どうやら、現世を覗いているらしい。
「暴れてるね~。
まぁ、活気があっていいんじゃないかな!」
女性はもう泣き出しそうだ。
「そういう問題じゃありません!
それに、本人だけでなく転生者たちを利用して、周りの人間も暴れているんですよ。
何より問題なのは、朝霧海斗くんの件です!」
気まずそうな顔をするクロノス。
「えっ?うっかり転生させちゃったの、ばれてるの??」
怒り出す女性。
「当たり前です!!
他の12人は事前に伺っているので、大目にみましょう。オルヴィスの世界に、刺激を与えることで、長期的に良い結果を生み出す可能性があります。
でも、朝霧海斗くんの件は、想定外ですよ!」
気まずそうにするも、でも笑顔は崩さない。
「大丈夫!こっちの世界でも幸せに暮らせるように、一番力のある公爵家の子供に転生させたから!
きっと、今頃は僕に感謝感激の毎日だよ、うん。」
冷たい目でみる女性。
「その家、没落しましたよ。」
そして、クロノスは固まった。
「えっ…。
えっ……。
えーーーっ!
なんでー!?」
一番、大丈夫そうな家を厳選して転生させたのだろう。
想定外だったようだ。
「転生者の一人が動いて、没落させたんです。
彼は島流しにあってますよ。」
ここにきて、ようやく事態が分かったらしい。
そして、さすがに可哀想だと思ったようだ。
「どうしよう?
僕、転生や加護の付与に力を使いすぎちゃって、助けてあげることができないんだ。」
ついに女性は、叫んだ。
「知りません!
ちゃんと、自分で責任を取って下さい。」
そして考えるクロノス。
1秒考えた結果…。
「まっ、過ぎたことだから、仕方ないか。
彼には運命と思って、諦めてもらおう。
とういわけで、朝霧海斗くん、どんまーい。放置するね。」
どかん。
叩かれたクロノス。
「もういいです!
クロノス様はいい加減すぎます!
彼が可哀想すぎますよ。
もういいです!
変わりに私が彼をサポートします!」
目が点になるクロノス。
「いや、君は神力がぜんぜんないから加護とかできないでしょ…。」
「分かってます!
ここからでは、私の神力が弱すぎて何もできません。
現世に降りて、直接、彼に加護を与えてれば少しはステータスがあがるはずです!」
そう言って、女性はクロノス神のいた部屋から出ていった。
「なんか、面白くなりそう!?
でもなぁ。
神力足りないだろうなぁ。
しょうがない、他の神にお願いして神力を譲渡してもらうかぁ。
(それに、もしかしたら悩んでいたことが一気に解決するかもしれない。)」
女性が去った後のクロノスは、少しばかり悪巧みの顔をした。
ゲームに夢中になっていたのではなく、思案に暮れていたのだ。
クロノスは新たな計画を描き始めた。
そして、その日、女神ウルティアが地上に舞い降りる。
女神が地上に舞い降りるのだ。
それは、天使界にいる天使たち、悪魔界にいる悪魔たちの興味を引いた。
女神ウルティアの目的が気になったのだ。
それだけではない。
女神ウルティアは、過去にとある場所へ加護を与え、繁栄させたことがある。
そこに住むのは、エルフだ。
エルフの人々は、女神ウルティアを崇拝していた。
そして、女神ウルティアを助けようとその地を出る。
エルフは人間にとって、希少だった。
そして、各地でエルフ狩りが盛んになる。
クロノス神が転生者たちをクロノスナンバーとして転生させ、女神ウルティアが現世に舞い降りたことで、少しずつオルヴィスの世界の歯車が狂い始めたのだった。
クロノスは一人、残された部屋でつぶやく。
「全ては○○○のために。」
その声を聞いたものは、誰もいなかった。
次回、『6.空から女神がやってきた 』へつづく。