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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第2章 破滅円舞曲
45/120

45.軍議

俺は、ジャパンの執務室に戻ってきた。

そして、一人考え込む。


フィーナ国に対して、

どこまでを目的に軍事行動を起こすか。


まず、これほど国を乱してしまったのだ。

国王は責任を取らざるを得ないだろう。


そうすると、次の王位継承権はマリーナになる。

しかし、マリーナを魔王の呪縛から解放する手段がまだない以上、

選択肢から外した方がいいだろう。


まぁ、セレンがマリーナに変幻して、

国を治める方法もあるが、

ローマネリア公国の属国となってしまう。


あとは、国王は美女を囲ってるということだから、

そのうちの誰かが授かっている可能性がある。


だが、もし授かっていなかったとしたら…。

血縁を遡るとレオンハルト公爵家は、

王家の血に最も近い歴史を持つ。

そうすると遡って、

レオンハルト公爵家に王位継承権が発生してしまう。


レオンハルト公爵家。

つまりは俺なわけだ。

なんというか、絶対に嫌だ。


そうなると、国王が子供を授かっているのを願うばかりである。


次に戦力の問題だ。


俺は、ジャックにお願いしていた、

戦力比の報告書に目を通す。


国王軍55,000人

貴族軍62,000人

市民反乱軍3,000人

ジャパン2,000人

ローマネリア公国 不明

※現状、国王軍が優勢。


かなりの戦力差があるな。

それにしても数で劣る国王軍が優勢か。

城壁の兵士を見る限り、

嫉妬の種の影響で、一人一人の兵士が強いのだろう。


ツヴァイなら、どう戦う?


『俺なら、まず貴族軍を裏から援助し、

互角の戦いで国王軍と貴族軍の双方を弱らせる。

そして、国王軍を倒し、偽マリーナの号令で賊軍として貴族軍を討つな。』


なるほど。

実現性が高そうだ。


最後に、グリードから確認したのであろう、

クロノスナンバーとの戦いの経過と能力を見る。


『ミドリーズ』

クロノスナンバー10

不可避切断(絶対に避けられない切断)

攻撃が大振りで、隙だらけ。


『マリーナ』

クロノスナンバー7

聖魔人同一(能力無効化)

魔王。強い。



俺は、考え込む。

マリーナの能力は、まだいい。

かなり強力だから、まだ分かる。

だが、ミドリーズの能力は、

明らかにおかしい。


クロノスは言った。

「向こうに行ったら、

重宝されまくりな能力を取り揃えたんだ!」


こちらの世界では、

攻撃力のある強い能力や特殊能力は重宝される。

しかし、切断は重宝されるだろうか。

回復魔法が発達している以上、切断されてもすぐに回復させれば対したことはない。

しかも、大振りで隙だらけなら、多人数との戦いなら、あっさり敗れてしまうだろう。

そう考えると能力の偽装をしている可能性がある。


ウィズが話しかけてきた。

『報告:報告のミドリーズの能力では、

レオンハルト公爵の暗殺は不可能です。

別の能力を保有していると考えるべきです。』


確かにその通りだ。

だが、グリードとの戦いでは、

窮地に立たされている。

能力の偽装をする意味があるのだろうか。


それと気になる点がある。

父であるレオンハルト公爵は、常に用心深かった。

万が一を恐れて、回復魔法の使い手を数名、傍に連れていたのだ。


やはり、何かがおかしい。

そう考えると、国王軍と貴族軍との戦いに、第三者が絡んでくる可能性がある。

用心しておいた方がいいだろう。


第三者と言えば、隣国のドグーン国も気になる。

後方から参戦して襲われたら、たまったものではない。


コンコン。

「インパルスです。

入ります。」


インパルスが執務室に入ってきた。


「お帰り。

そっちはどうだった?」


「飛龍ですが、残念ながら二頭しか捕獲できませんでした。

そっちはどうでしたか?」


「俺の方も、状況としては、あまり良くはないな。

後ほど、皆と一緒にまとめて話すよ。」


「分かりました。

もう少ししたら、軍議の時間です。

少しはお休みください。

(それと、カイン。

魔王やけど、もう一体、この島におるかもしれへん。

ある方向にだけ、魔物の力が強くなっているのを感じたで。)」


最後の方は日本語だ。

誰にも聞かれたくない時、

俺たちは日本語で話すようにしている。


「(なんだって!?

警戒が必要か…。

もしかしたら、インパルスの母が戦った相手かもしれないな。)」


「(そや。

もしそうなら、ワイが決着つける。)」


インパルスの決意は固いようだった。

唇を噛みしめ、少し出血している。

相当の気合いの入れようだ。


すぐにいつものインパルスに戻って話しかけてきてくれた。


「さて、それでは軍議の時間です。

行きましょう。」


俺たちは軍議を行う部屋まで向かう。

どうやら、俺たち以外、

全員、席に付いている。

知らない顔がいるな。

自己紹介から始めた方がいいか。


「皆さん、お待たせしました。

ジャパンの首相を勤めております、

クロノスナンバー13のカインです。

こちらは、ナンバー11のジャック。

こちらが、ナンバー1のインパルスです。

それと、こちらがナンバー6のクレアです。」


俺の後にアテナが話す。

「次はこちらだな。

私は専制ローマ帝国の女王アテナだ。

そして、参謀のグラウクスだ。」


「専制ローマ帝国?

ローマネリア公国ではなかったのですか?」


「うむ、国名を変えた。

正式な発表は国に帰ってからするよ。」


神聖ローマ帝国でもなく、

王政ローマ帝国でもなく、

専制ローマ帝国か。


この女性は、

俺とは真逆の思想で行くらしい。

願わくば、戦うことにならないよう祈りたい。


「それでは、次はこちらですね。

市民反乱軍のリーダーを務めてますマリーナです。

それと、こちらが実質的に取りまとめているグラトニーです。」


マリーナに変幻したクロノスナンバー8であるセレンの隣りに、

もじもじする内気そうな細身の男性がいた。


ん?

グラトニー??


「は、は、はじめました。

グ、グラトニーです。

クロノスナンバー5です。

そ、その…。」


ボンっと何かの能力を使用して、

音と煙が出た。


そして、筋肉隆々の

あの桃色のグラトニーが現れる。


「そして、私の能力は反転よ。

みんな、どうぞ、よろしくねー。

ちゅっ。」


俺とインパルスは、

驚きのあまり逃げ出そうとした。

そこをジャックが止める。


「な、なんで驚かないんですか?」


「いやっ、実はな、

カイン首相たちが来る前に自己紹介を済ましていて、

俺らも驚いたんだが、

もう慣れたんだよ。」


慣れるわけないだろう!

俺は、頭の中で叫んだ。


桃色のグラトニ-。

強烈なやつだ。


ここには、エレナとグリードはいない。

エレナは教会に仕える立場なので、

遠慮してもらった。

グリードは、また修業の旅に出かけている。


武闘大会の後、会っていないが、

クロノスナンバー相手には2連敗だからな。

あいつの精神状態は、

大丈夫なんだろうか。


アテナがカインへ話しかけた。


「それにしても、

この場でカイン首相は、

妹と再開できてよかったな。」


俺は、この女性の考えを瞬時に読み取る。

スタンスをこの場で決めるようにとの現れだ。

主導権を譲ってくれたのだろう。


「そうですね。

いえっ、茶番は止めましょう。

セレン、もう元の姿に戻ってくれ。」


アテナとセレンは、

少し驚いたようだった。


セレンは、少しためらった後、

姿を元に戻す。


俺は、それを確認して、

皆に話し始めた。


「まず、クロノスナンバー7のマリーナだが、

現在は魔王に体を奪われていることが確認された。

そして、フィーナ国王とともに圧政を行っている。

俺は、フィーナ国民とマリーナを救いたい。

そのために、皆の力を貸して欲しい。」


グラトニ-が発言する。

「ちょっと待って!

そのために、王族を詐称し、

市民を戦いに向かわせようとするの?」


「そうだ。

俺は、そこまでしてでも、

この戦争を、早期決着させないとマズいと思っている。

俺が偵察してきたフィーナ国の現状をレポートにまとめた。

グラトニ-は知っているかも知れないが、

目を通して欲しい。」


グラトニ-は、険しい顔をする。


「いえっ、これは私が知っている以上の状況よ。

ただ、国王軍が数的に劣勢なはずなのに優勢な理由が分かったわ。

ここまで魔王に浸食されているのね。」


「そうだ。

魔王は、自らの種をばらまいた人数が多いほど、強くなる。

正直、どこまで強くなっているか分からない。」


「私の能力なら、

マリーナ様を止められるかもしれません。」


皆、同じ方向を振り向く。

発言はクレアだ。


「それは、どんな能力なのだ?」


アテナはクレアに話しかけた。


「申し訳ありませんが、

どなたにも話す気はありません。

できれば、マリーナ様と私の1対1が望ましいです。」


「なら、クレアを中心に作戦をたてよう。」


俺は間髪入れずに発言した。


「そんなんでいいのか?」


ジャックは驚く。


「あぁ、いいんだ。

クレアは根拠のないことは言わない。

俺は、クレアを信じてるんだ。」


アテナは、クレアを見て、

一瞬だけ悩むも、納得してくれたようだ。


「ふむ。

まぁ、いいだろう。

グラウクスが作戦を立案してきている。

その作戦を叩き台としてくれ。」


「僭越ながら、お話しさせていただきます。

この戦いの基本方針ですが…。」


グラウクスは説明を始めた。


少し驚いたが、

専制ローマ帝国は既に5000の兵を、

国境付近に布陣しているらしい。


兵を少数に分けて、少しずつ忍ばせているとのことだ。


グラウクスが立案した作戦計画に、

他の周りの者が2、3の修正を加えていく。

俺としても、特段の問題はない。

しかし、一つだけ付け加える必要がある。


「俺は、この戦いにおいて、国王軍・貴族軍・我々の他に、第4者が介入すると考えている。

取り越し苦労かもしれないが、

念頭に入れておいて欲しい。

そして、第4者の介入を事前に避けたいと思っている。」


「第4者?

そんなことは、あり得ないと思いますよ。」

「いや、分からない。

もしかしたらドグーン国は

漁夫の利を狙って動く可能性があるぞ。」


ジャックとインパルスは口々に答えた。

それに俺は応える。


「そうですね。

ドグーン国は充分に可能性があります。

そこでジャパンは、ドグーン国へ使者を送り、

1年の不戦協定を結ぶようにします。

これで、背後から大軍が襲ってくる心配はなくなるでしょう。

ただ、それでも不確定要素の不安が拭えないのが本音です。」


アテナも、同様の違和感を持ったようだ。


「そうだな。

確かに違和感を感じる。

念のためだ。

用心だけしておくべきだろう。」


かくして、市民反乱軍のリーダーであるマリーナは、

義兄であるカインの力を借り、

民主主義国家ジャパンと、

建国祭にたまたま訪れていたアテナ女王が率いる専制ローマ帝国の支援のもと、

武装蜂起をしたのだった。



次回、『46.バスティーユ監獄への襲撃』へつづく。

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