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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第2章 破滅円舞曲
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39.弁論大会

弁論大会の会場に、

俺とウルティアは辿り着いた。


実行委員であるインパルスとセレンの元へ行く。


「カイン首相、遅いですよ。」


インパルスは、文句を言ってきた。


「すまない、予定外の出来事があり、

時間がかかってしまったよ。」


エレナも文句を言ってきた。


「やっぱり納得いきません。

なんで、私がインパルスの秘書なんですか!?」


そう、インパルスは秘書を欲しがっていた。

エルフ限定だが。


たしかに、インパルスの仕事量はとんでもない。

そのため、秘書を付けて時間管理や書類整理をさせないと、

体が持たなくなってしまう懸念があったのだ。


そして、何故かエレナの色欲の苗はインパルスといると反応を示さない。

これまでの出来事でそれが分かっている。

なので、エレナのためにもインパルスの傍が一番いいのだ。

まぁ、怒るだろうから、

本人には言えないことだけど。


「エレナ、前にも話したが、

インパルスの仕事は重要なんだ。

そのため、秘書には信頼できる人しかお願いができない。

だから、俺はエレナにしか頼めないんだ。」


エレナは、顔を赤らめて、

しぶしぶ了承してくれた。


インパルスはつい本音が出る。


「それを言われたいだけのために、

学級委員長は毎回、同じことを言うんだろ。」


エレナは、満面の笑みでインパルスに言い放つ。


「建国祭が終わったら、

反省するまで仕事量は倍です。」


乙女は、怖い…。

気を付けよう。


さて、弁論大会だが、

参加者は事前に発表内容の概要と、

発表するための条件を提示してもらった。

テーマはこれからの時代に必要な政策。

既存にない政策を発表してもらうこととした。


発表はしたものの、

案を奪われたりしたら名前が残らないため、

ただでは発表はしてもらえない。


そのため、発表者からは、

第三者である教会に記録を残してもらうことや、登用などの様々な条件を提示された。


そして、一定の発表内容になると思われるものは、全部、採用することとした。


そう、俺の目的は、優秀な人材を見つけるだけでなく、将来の政治家を作りたいのだ。

だからこそ、ただの研究発表だけでなく、

弁論形式の形にしたのだ。


そして、司会者には、

セレンに地球にいた頃の司会者のイメージで、変幻をしてもらい、お願いしている。

きっと、上手く相手の考えを引き出すことができるだろう。


事前の概要では、俺が望む分野の人材が何人かいることが分かっている。


会計家

教育家


この人達は、発表内容によっては、

是が非でも登用したい。


この人達に任せて、

内政を充実させたいのだ。


発表の要旨は次の通りだ。



会計家ステヴィン。


「これからの時代に必要な政策は、

会計制度の充実である。

各商会や販売店が統一したルールに基づき、

国に申告することで、

自国の経済状況が把握できる。

税対策にも有用だろう。」



教育家、モンテスキュー


「これからの時代に必要な政策は、

義務教育と専門教育の二つが必要だ。

一定年齢まで勉強させ、

文字の普及が必要となる。」


それにしても、発表する人達は、

皆、同じ特徴で、全員が痩せている。

まぁ、思想家などは登用してもらえなければ、

食うにも困る人達なのだろう。


次は地理家、マルコか。


「これからの政策に必要なものは、

地図の精緻化である。

現在の地図は、明らかにおかしい。」


ん?

これは、世界地図!?

各国の地図は、それぞれの国が情報統制しているため、手に入れるのが難しい。

つなぎ合わせたのか…。

しかし、見たことのある地図だ。


ウィズが話しかけてくる。

『報告:地球の欧州の地図を反転したものと類似しています。』


そうか!

ということは、

この国の位置は、イギリス?

実に興味深い。

そうすると、フィーナ国はフランスあたりか。

なかなか有益な情報だ。

そうすると、アメリカ大陸などがあるのかもしれない。


次のテーマは魔石家、リリアか。

ん!?


俺は、発表者を見て驚いた。

魔族ではない。

魔族と人間のハーフの女性…。

姿は人間型なので、

特に問題は起きなそうだが、

見る人が見れば分かってしまう。

少し問題が起きるかもしれない。


「これからの時代に必要な政策は、

魔石の探求です。

まだまだ魔石には未知な点が多く、

魔石を使った生活は、より豊かな生活となります。

例えば、魔石を使って指定した魔石へ音を届け…。」


その時、会場の誰かから、

ヤジが起こった。


「魔族のくせに、その場に立つな!

出てけっ!」


会場がザワザワとし始めた。

魔族に対する恨みを持つ者は多い。

なので、ヤジをするのも仕方がないのかも知れない。

なんてことは、俺は思わない!

俺は、激怒し立ち上がってしまった。


「私が建国する際に、皆に話したことを覚えているだろうか。

私は人種で差別することは憎むべきことであると考えている。

今の発言を、私は決して容認しない。」


会場が静寂に包まれる。

俺は気にせず、会話を続ける。


「リリア氏に聞く。

貴方は、この国の人を傷つけようと考えているか?」


リリアは、震えている。


「いえ、決してそのようには、

考えておりません。」


「ならば、それで良いではないか。

私は、犯罪者には厳しく罰する。

私は、人種による差別を憎む。

皆の考えがすぐに変わるのは難しいかもしれない。

だが、私の考えを受け入れてはくれぬだろうか。」


会場の片隅から拍手が、起こり、

そして全体に拍手が拡がった。

先程の発言者も反省しているような顔をしている。


「皆、ありがとう。

それでは、リリア氏、ぜひ続きを聞かせてくれ。」


そう、俺が激怒した理由は、

人種差別への怒りもあるが、

この研究発表が気になって仕方がないのだ。


これは、この世界の携帯電話を導入するにあたり、

大幅に時間を短縮して、導入できるかもしれない。


全く新しいアプローチの発表だった。

何がなんでも、

この女性も登用したい。

ダメでも、研究依頼したい。

支援は惜しまないつもりだ。


この街を作った時、

外枠だけは出来たものの、

中身は空っぽだった。


こうして人材が集まってくると、

中身が充実してくる予感がする。


そういえば、人種と言えば、

魔王について気になる。

魔王とは、いったい何なのだろうか。


マリーナは魔王となった。

エレナは、魔王の後継者となった。

クレアは、魔王の資質を持つ者となった。

何が基準なんだろうか。


悪魔であるサタナキアなら、

何か分かるかもしれない。


「誰か、サタナキアを呼んできてくれないか?」


しばらくして、サタナキアはやってきた。


「魔王について聞きたいんだ。

知っていることを教えてくれ。」


サタナキアは教えてくれた。


「魔王は七つの大罪を司っています。

色欲・暴食・憤怒・嫉妬・怠惰・傲慢・強欲を司っており、

魔神が生み出した存在です。

しかし、実態である体を持ちません。

そのため、存在定義がはっきりしない存在です。

よって、強い感情を持つ者がいた際、

魔神か魔王が、それぞれの種を渡し、

次の魔王を探すようです。

まぁ、既に滅んでいる魔王もいるようですよ。

それに、魔王候補を量産することもあるみたいですね。

また自らの眷属を、持てば持つほど強くなるのが特徴です。」


俺はなるほどと頷く。


「魔王が現れる条件はあるのか?」


サタナキアは教えてくれた。


「それぞれが司る感情の強い者がいるとき、

魔王は興味本位で現れるようです。

そして、感情が強い者は決まって女性のため、力をもつ女性のクロノスナンバーは、

特に魔王に目がつけられやすいと思います。

例えば、広場で行っている大食い大会に出場するような女性のクロノスナンバーがいたら、

もしかしたら、暴食の魔王が現れるかもしれませんね。」


大食い大会に暴食の魔王…。

そんな、安直なのか?

まぁ、行ってみるか…。


そんな話しをしている間に全発表は終わった。


最優秀者は、教育家になった。

やはり普段、話しなれているだけあって、

弁論は有利だったようだ。


大食い大会か…。

各国の来賓が集まる夜会まで時間があるし、

行ってみるか。



【アテナ】


「やぁ、久しぶりだな。」


アテナは、くったくのない笑顔で話す。


「久しぶりね、アテナ。」


「旧友のよしみだ。

気にする必要はないさ。

それで、お願いとは何かな?」


「ありがとう。

えぇ、お願いがあるの。

満里奈のことは覚えてる?

今、フィーナ国にマリーナ姫として囚われていて、

助けてあげたいの。」


「ふむっ。

君の頼みだ。

それはいいが、気になることがある。

セレン、君は何故ここで満里奈を救うために、自ら何も動かない?」


アテナが話している相手はセレンだ。

司会者は、控室が、用意されている。

そこはだれも人の目が入らない。

そのため、密会として、利用したのだ。


「それは…。」


口ごもるセレン。


「まぁいい。

君は相変わらずだな。

このまま、私のところへ来なさい。

戦を起こすには、大義名分が必要となる。

そのためには、君が必要なのだ。

それと、これは忠告なんだが、

まぁ、君の恋バナを聞いた時も言ったが、

君は何もしなさすぎる。

それでは、怠惰の魔王に付け込まれるぞ。」


セレンは考える。

アテナの陣営に行く?

それは、カインと離れるということだ。


「夏凛、一緒に満里奈を助けに行くよ。」


アテナの最後の一押しがあり、

セレンはアテナへ着いていくこととした。


アテナは思う。

セレン、君は自らやるべきことをやらないでいる。

それは、やはり怠惰でしかないのだよ。


アテナとセレンは、共に会場を出たのだった。



次回、『40.暴食?桃色のグラトニー登場』へつづく。

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