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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第1章 伝説の始まり
34/120

34.民主主義の祖

「カイン・レオンハルトの名において、

ここに宣言する。

イーストランドは、

フィーナ国より独立し、

ここに建国する!」


!?!?!?

その瞬間、目の前の世界が白黒になった。

全員、動かない。

いや、俺以外、時が止まっているのか?


目の前に小学生ぐらいの男の子が現れた。


「初めまして。

僕の名前はウロボロス。

クロノス神の天敵さ。」


不敵な笑みを浮かべる神がそこにはいた。


底が分からない程、力の差を感じる…。

クロノス神やユニコーンと会った時と同じ感覚だ。

つまり、間違いなく相手は神なのだろう。


「いったいこれは、

どういうことなのでしょうか??」


ウロボロスは、

不敵な笑みを浮かべる。

あきらかに敵意を剥き出している。


「それは、こっちのセリフだよ。

魔神である僕の子飼いの魔王を1体、

滅ぼしただろう?

それはまぁいい。

だが、協定違反である神力を使ってまで魔王を滅ぼすとはどういうことだい?

クロノス神の代行者とやら、

答えてみたまえ。」


魔神!?

そういえば、クロノス神が話してたな!

この方が、魔神か…。

クロノス神、

会ったら文句いってやる。

まったく、やっかいごとを押し付けやがって。


ウロボロスは、キョトンとした顔をした。

「ん??

あれっ!?

そういうことか…。」


ウロボロスからの敵意が消えた。

俺は驚く。


「ウロボロス様も、

心を読まれるのですか??」


「そりゃ、まがりなりにも神だからね。

心もだけど、記憶も読めるよ。

まぁ、君が覚えている記憶だけだけど。

それにしても、

君は何も聞かされず、

クロノス神の計画の主要人物にされてるんだね。」


「計画の主要人物?

いえ、うっかり転生させたと話していましたから、

そんな大層な人物ではないと思いますよ。

転生者を呼んだのも、

面白半分の雰囲気で話してましたし。」


「あはは。

そんなわけないだろう。

考えてもみたまえ。

君たちが転生した1789年、

君たちの世界では何があった??」


「1789年…。

たしか、フランス革命?」


「そう。それともうひとつ。

君たちの世界で中心となっている国。

アメリカ合衆国に初代大統領として、ジョージ・ワシントンが就任した年だ。」


「確かに歴史的な年ですね。」


だから、何だと言うのだろう。

さっぱり分からない。


「そう、君たちの世界にとって、

重要となった年と同じ年に、

君たちは転生させられた。」


クロノス神は、上を見上げる。


「そして、転生させた君に、

ウルティアが能力を与えることをきっかけとして、

他の神たちは、神力の使用ができない状況に追い込まれた。」


「…。」

俺は、黙って聞いている。


「たまたま、能力をもらった君は、

その後、クロノスナンバー13となった。

13。

トランプなら、王のことだよ。」


「…。」

たまたまではないだろうか。


「そして、たまたま君は、

この島から独立して建国を宣言し、

王となろうとしている。

本当に全て、たまたまなのかい?

要所要所で、クロノス神は、

君に何かをしてきたのではないかい?」


「…。

正直、俺には何も分かりません。」


「そうだろうね。

そして、君は気づかぬうちに、

聖道を歩まされている。」


「聖道?

いったいなんのことですか??」


「今回、君が行った戦争は、誰も死ななかった。

戦争だよ?

誰も死なない戦争なんて、

そんな、きれい事あるわけないだろう。」


「たしかに、そうですが…。」


「君は、たまたま女神ウルティアを妻にしたことにより、

聖道しか考えられなくなっている。

元女神だろうと、君への影響は、計り知れないものがあるのさ。」


「そんなことはありません。」


「そう信じたいだけさ。

思い起こすといい。

君は、ウルティアを妻にしてから、

少しずつ性格が変わってきているんだよ。」


「この島に来るまで、色々なことがありましたし、さらにただの貴族のお気楽息子から、島の代表となる責任ある立場になりました。

誰でも変わってしまうのではないでしょうか。」


「まぁ、いいさ。

気づかないのは仕方がないのかもしれない。

まぁ、君が巻き込まれているだけなのは、

良く分かったよ。

それより、僕から君へプレゼントをすることにしよう。

君は人間の王となるのだから、

必要なものさ。

受け取りな。」


ウロボロスの、手のひらから黒い塊が出てきた。

そして、黒い塊が俺の中に入ってくる。


『報告:精神が闇に浸食されています。

体からの放出ができません。

浸食された精神を切り離します。』


ウィズ!?

動けたのか?


『疑問:状況が不明です。』


今、動けるようになったのか。

黒い塊のせいなのか?


そして、俺の中から別の何かが話しかけてきた。


『ふふふっ。

主人格よ、俺は生まれたてだから、

しばらく寝るが、覚えておくといい。

お前の中に、闇である俺がいることを。

お前にとっては、2人目の人格となる。

そうだな、ツヴァイとでも呼んでもらおうか。

俺はお前の闇。

光と相反する存在…。』


胸が焼けるような感覚がある。

ツヴァイ…。

ドイツ語で、2という意味か。


「これが、君へのプレゼントさ。

人間の王となるのなら、

清濁を織り交ぜていくがいい。

そして、できればクロノス神の計画を潰して欲しいね。

それでは、またどこかで。

カイン・レオンハルト君」



「カイン!」

「カイン!

大丈夫か??」


気づけば、世界に色が戻っていた。

どうやら、時は動き出したらしい。


インパルスとジャックが心配そうにしている。

どうやら、しばらく放心していたようだ。


「すいません、大丈夫です。」


俺は、飲み物を貰うようにした。

ウロボロスのことは、

しばらく黙っていた方がいいだろう。


「それでは、モンテロー伯爵。

あなたの領地については、

わが国で庇護しましょう。

他にも庇護を希望される方がいれば、

おっしゃって下さい。」


モンテロー伯爵は、安堵したようだ。

他の領主は、悩んでいるようだった。


話しがいったん落ち着いたところで、

教会の枢機卿であるパウロが話しかけてきた。


「ところで、国の建国宣言をされましたが、

国名と王様は何にされますか?」


ジャックが最初に発言する。


「王様は、カインだな。」


インパルスも続けて発言する。


「うん、カイン以外ありえない。」


そして、最後に俺が発言した。


「いえっ、俺は王にはなりません。」


驚くジャックとインパルス。

ジャックは話す。


「カイン?

リーダーは、お前以外にありえないぞ!」


俺は、続けて発言した。


「俺は、首相になります。」


「「???」」


ジャックとインパルスは不思議そうな顔で

俺を見た。


俺は、ずっと思っていた。


このフィーナ国は、絶対君主制だ。

絶対君主主義であり、王が全てだ。

宰相などがいても、

最終的には、王のひと声で全てが決まり、

全ての責任は、王が取る。


では、ルッソーニ宰相の陣営はどうか。

彼らは、貴族主義だ。

高貴な血統が、治めていくことこそ、

最良であると信じている。

血統主義と置き換えてもいいだろう。

今の能力など関係なく、

家柄こそ全てと考えている。


では隣国はどうか。

軍国主義ドルーン国。

これは、軍人が国を支配する。

力あるものが支配することで、

国を守り、国益を守ろうとする。

しかし、一方で弱い国民は意見を言えない。


他にも宗教国家ゾルタクス。

神からの神託を受け、

神の代行者として政治を行う。

だが、おそらくこの国に神はいなく、

一部の中枢たちが政治を取り仕切っている。

神の代行者を語った者が甘い汁を吸い、

吸われるものは、

死後、天国に行けると思って貢ぐのだ。


俺は、これらの政治体制が嫌いだ。

この世界の政治体制では、

どんな人物が国を仕切るか選べない。

全ての国が一部の人の主観で物事が決まる。


誰が仕切るかによって、

善政にも悪政にも転がるだろう。


善政ならいい。

だが、悪政ならどうすればいい?

どんな悪政も泣き寝入りするしかないじゃないか。


俺は、皆で政治を行い、

失敗も皆で責任を取り合う、

民主主義国家にしたいんだ。


クロノス神やウロボロスの思惑は、

俺には分からない。

もしかしたら、俺を王にしたかったのかもしれないが、知ったことではない。


「この国は、民主主義国家を目指します。

これだけは、絶対に譲れません。」


インパルスは、カインに声をかけた。

「そうはいっても…。

おそらく選挙をしても、

全員がカインを王にしたいって結果になると思いますよ。」


カインの治世は、歴代の首相と比べても、

あまり長くはない。


この時のインパルスの発言は、短い在任期間のカインを苦しませることとなる。


インパルスの発言は、裏を返せば、

「もし、民主主義の国民が、絶対君主主義を望んだら?」

ということだ。


民主主義にこだわったカインは、

終生、その矛盾への解答が見出せなかった。


カインは、この後、完全なる民主主義政治を行うことができなかったものの、

民主主義の祖となった。



【クロノス神】


ウロボロス君も、困ったものだね。

この段階で、カイン君に計画の一部をバラしてしまうとは。


本来、彼は王となる予定だったのに、

全く関係のないアメリカ大統領の話しをあえて話し、

『王』の単語を強調することで、

彼自身が王を選択しなくなってしまった。


まぁ、いい。

ウロボロス君も、カイン君も、

僕の計画の全容は分からないはずだ。

今回のことは誤差の範囲内だろう。


カイン君が何か聞いてくるかもしれないが、

しばらくは、しらばっくれよう。

どうせ、分かるはずもない。


今度こそ、失敗はしない。

成功させてみせる。


いつもの、おちょうし者のクロノス神は、

そこにはいない。


神界でただ一人、

現世を見続けているのだった。



次回、『35.民主主義国家『ジャパン』』へつづく。

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