21.黄龍リュクレオン
データが消えた悲しみを乗り越え、
いざ再作成!
俺の前には広大な荒れ地が広がっている。
大きな岩もあれば、
凸凹した箇所も多数ある。
ここを更地にするとは、
誰もやろうとは思わないだろう。
この世界でも、
元いた世界でも、
平地にするには気が遠くなるような、
時間がかかるからだ。
ウィズ、効率よく平地にするには、どうしたらいい?
『提案:ジャックの土魔法ホームクリエイトを使用し、補助魔法にて効果範囲を拡張させることを提案します。』
補助魔法?
まぁ、細かいことはいいかっ。
よしっ、それでいこう。
「ジャックさん。
前に使っていたホームクリエイトを使って下さい。
俺が補助魔法で、
その魔法の効果範囲を広げます。」
不思議な顔をするジャック。
「補助魔法って何だ?
まぁ、とりあえずやってみるか。
いくぞっ!
土魔法ホームクリエイト!」
「補助魔法発動!」
ジャックの発動と同時に、
俺は補助魔法を使用した。
「むっ?
なんだ!?
いつもよりも魔力が大きく感じるぞ!?」
思わず、自分に起きた現象を
声に出すジャック。
魔法の発動が終わり、
地面が動き出す。
その結果…、
一面が平坦になった。
「なんじゃこりゃー!」
俺も驚いているが、
ジャックは、それ以上だ。
普段、使ってる分、
効果範囲の広がり方に驚いたのだろう。
「坊主!
いったい何をしたんだ!?」
俺に聞かれても、
もちろん細かなことは分からない。
だから答えられることは決まっている。
「秘密です。
さぁ、どんどんやっていきましょう!」
「末恐ろしい坊主だぜ…。
まぁ、能力を秘密にするのは、
当たり前か。
よしっ、続きをやるぞ!」
俺たちは、日が暮れるまで、
荒れ地を平坦にしていった。
そして、街となる場所の下地が出来上がったのだ。
「さて、ジャックさんは
今日はここまでです。
帰りにウルティアの所に寄って、
グランさんに渡した調味料で作れる料理を教えるように伝えて下さい。
俺も、後で行きます。」
「ふぅー。
ようやく解放か。
じゃあ、俺は戻るが、坊主は?」
「俺は、この場所で、
街の構想を練っていきます。
実際に現場を見ると、
既に思い描いた街のイメージから、
少し修正したいんですよね。」
俺は、その場で座り込み、
地図を眺め始めた。
「ほどほどにな!」
俺は、新しい街のイメージを思い描く。
イメージは、ヨーロッパの街並みだ。
ヨーロッパの家は、
家同士が重なり合っている。
俺はその重なった家を利用して、
防御網を築きあげたいと思っている。
敵が来た時に道をふさぎ、
行く道を誘導するのだ。
そうなると街の中心に、
司令部となる町役場。
オベリスク…いや都庁のような
高い塔でもいいかもしれない。
その前には、
避難ができる広場や公園。
地下を作れば、
防空壕や防災用の食料置き場にもなるだろう。
そして、周囲に防御網のような街並み。
ん?
これで魔方陣を描けないか?
ウィズ、そんなことは可能か?
『回答:可能です。』
『提案:街を円で描くような防御結界と、
電力供給の魔方陣を重ねがけることを勧めます。』
そんなことができるのか!?
ぜひ、やってみたい!
『報告:上空から感知不能の何かが来ます。
敵意なし、回避不要です。
30mほどの大きさがあります。』
!?!?
なんだと!?
俺は動揺した。
この世界に
そんな大きい生き物なんて知らない。
いや、一つだけ知っている。
龍だ…。
羽根をバサバサしながら、
降りてくる。
黄色い龍だ。
「人間よ、
邪魔するぞ。」
龍!?
しかも、話せるのか!?
それにしても、
目の前にいるのにまったく感知できない。
神といる時のような感覚がある。
「私は、龍と話すのは初めてです。
何故このような場所に?」
「翼を休めるところを探しておったのだが、
ちょうど平地を見かけてな。
つい降りてしまったのだよ。」
おいおい、たまたまかよ!
それだけで龍に会えるのか!?
「ふむっ、人間よ。
お主、面白い能力を持っているな。
どれどれ。」
『報告:鑑定されています。
妨害をしましたが邪魔をされました。
防げません。』
な、なんだと!
まぁ、龍だし、
抗えないのは仕方ないのかもしれない。
「ん?
…。
……。
お主、面白いものを持っているな。」
うっ、やはり俺の、
能力や加護に興味を持つのか…。
何か言われるにしても、
平穏に済ませたい。
「ふむっ、
面白いのぅ。
異世界のマンガは。」
「そっちかよっ!!!」
えっ!?
能力とかじゃなく、
俺のアイテムボックスにある異世界のマンガに
興味を持ったの!?
「むっ!
くそっ、アイテムボックスに入っているせいか、1話しか読めん!」
「まさかの試し読み感覚!?」
「くぅー。
かといって、アイテムボックスから出されても小さくて読めん!
なんと口惜しい!
気になる、気になるぞー!!」
あの、龍さん。
龍さんのイメージがどんどん崩れていきます。
龍は、鼻息が荒くなってきた。
そして、目がすわってきている。
「そうだ!
人間よ、我と契約せい!
お主が生きている間、
我はお主の中に住むのだ。
ちょうどお主は、
ハイヒューマン!
契約に耐えられるだろう。」
えっ!?
なんか話しがどんどん大きくなってる!?
「お主の中に住めば、
家賃として我の龍力が使えて、
我はお主のアイテムボックスのマンガが読み放題じゃ!
こんなに素晴らしいことはないじゃろう。
さぁっ!」
いやいや、おかしいだろっ!
何その話し!?
なんか、平等のような、
平等じゃないような!!
「えーい、問答無用じゃ!
契約!!」
『報告:契約拒否しまし…。
契約拒否できません。
強制契約となります。』
まさか、ウィズの能力を、
途中で上回ったのか!?
「ふはははっ。
無駄無駄無駄無駄!」
読んだ本、あー、あの本か…。
って、そうじゃない!
あっ、契約が成立した感じがする。
龍は、光だし、
光の泡となって、
俺の中に入っていく。
「我は黄龍リュクレオン。
光龍であり、
聖龍でもある。
さぁ、これで続きが読めるぞ!」
あっ、そういえば、
何かで聞いたことがある。
なんだっけな。
◇◇◇
北の山に、玄武
東の川に、青龍
南の池に、朱雀
西に道に、白虎
中央の四獣を司る黄龍に守られた街、
千年の都 京都。
この地に、
千年の繁栄が約束された。
次回、『22.この世界での街づくり 』へつづく。