19.魔王アウレリウス
本当は街づくり編を予定していましたが、
2回とも完成まぎわで誤って消してしまい、
作るのに心が折れました。
先に、こっちのストーリーから始めます。
【???】
「ふふふっ。
そろそろ、この人間も嫉妬の種が開きそうね。
あー、なんて人間の嫉妬とは、
これほどまでに甘美で美しくのでしょう。」
艶めく声で話す女性。
実態はない。
どうやら、目の前の男の精神に取り憑いているようだ。
2本の角が前に倒れるように生えている。
格好もかなりきわどい服装だ。
そして、この世のものとは、思えないほど、
妖艶な姿をしている。
「もう、我慢ならん!
あんな王家になど、
この国を任せられるか!!
私こそが、このドルーン国を導くのに相応しい
指導者である!」
「軍総司令官!
な、何をおっしゃっているのですか?
王家反逆罪となりますぞ!」
ザシュ!
男は斬り捨てられた。
「うるさい!
私を邪魔するものは、
全て斬り捨てる!
ゆくぞ!
王城へ総攻撃をするのだ!」
「あーーん。
なんて、素晴らしいの!
見事な嫉妬の華が咲いたわ。
あっ、ダメ…。」
妖艶な者は、更なる艶を増して
悶えた。
「んっ、あっ…。
ふぅ。
よかったわよ。
ステキな華だったわ。
さて、次はどの人間に憑こうかしら。
隣のフィーナ国にでも行ってみるかしらね。」
んふふ。
神の加護が急になくなって、
自由にどこへも動けるようになったわ。
私は、嫉妬の象徴。
嫉妬の魔王アウレリウス。
次は、どんな嫉妬の華を咲かせようかしら。
3か月後、ドルーン国の王家は断絶となり、
軍事政権が始まった。
◇◇◇
【マリーナ】
あのアドバルーン広告は何?
インパルスがあげた暗号を見ている。
カインお義兄は、秘密の特訓をされているの??
きっと、大変な思いしているのね。
何か助けてあげたいわ。
でも、私は王都から離れられない。
直接、助けることができたセレンが羨ましい。
それにしても、セレンのことが気になる。
セレンは、この前、
お義兄さまを助けに泊まりがけで出かけた。
それから帰ってきてから、
どうも様子がおかしい。
何かあったのかもしれないと考えずにはいられない。
明らかにセレンは、お義兄さまに恋をしている。
きっと恋するきっかけとなる出来事があったのだろう。
ズルい!
私が、そういうことをしたいのに!!
それと、ずっと、傍でお義兄さまに使えていたクレア。
きっとクレアは毎日お義兄さまに、
可愛がられていたはずだ。
お義兄さまは、明らかにクレアに対して、優しい目をしていた。
あれだけ愛らしいのだ。
そうに違いない。
羨ましい。
それなのに、私は…。
そこに、たまたま魔王アウレリウスの精神体は通りかかった。
まるで呼びよせられるかのように。
そして、この出会いが必然であったかのように。
「こんなとこに、随分、嫉妬の塊の子がいるわね。
周りの様子を見ると、お姫様ってとこかしら?
ちょうどいいわ。
次はこの子にしましょう。
あなたの中に私を入れさせて。」
???
なに!?
何か、私の中に入ってくる!
ダメ!
マリーナは、思わず秘密にしてた能力を使う。
「聖魔同人」
聖も魔も、等しく一般の人と同一にする能力。
同一にする箇所は、ランダムに複数箇所を同一となる。
魔王アウレリウスの耐久性は、人と同一量となり、弱まった。
魔王アウレリウスは、マリーナに憑き始めている。
色々な感覚が共有化しはじめていた。
共有化したマリーナも能力の影響で耐久性が弱まっていく。
「なにっ?
何か、出そう。」
魔王アウレリウスとマリーナの力が抜けていく。
「私の中で何かが一緒になってる。
気持ちいい。」
マリーナの中で、感情が共有化され始めている。
嫉妬の心に委ねる甘美さに心が酔いしれ始めた。
耐久性がなくなった魔王アウレリウスも、いつも以上の感情の甘美に酔いしれた。
「「ダメ…。
もう耐えられない。
もっと一緒に…。
もっとこの感覚を味わいたい。
ひとつになりたい!」」
「ダメ…ダメ-!」
「「あーーーーっ!!!!」」
魔王アウレリウスとマリーナは、
…。
一つになった。
マリーナは妖艶な格好をしている。
もはや自分が、
7つの大罪を司る7体の魔王のうち、
嫉妬を司る魔王アウレリウスなのか、
それともクロノスナンバー7なのか、
どちらが本当の自分なのかは分からない。
ただ、確信している。
自分が7つの大罪を総べる魔王であることを。
扉を開けて、
エルフのセレンと
犬耳のクレアが現れた。
「いかがされましたか??
マ、マリーナ姫さま、
そ、その格好はいかがされたのでしょうか?」
マリーナは考える。
カインお義兄さまと仲良くしてた2人が羨ましい。
憎い。
憎くてたまらない。
でも、微かに残ったマリーナの魂が叫ぶ。
二人を逃がしてあげてっと。
「セレン、クレア、
今から2人はカインお義兄さまのところへ向かいなさい。」
「どうなされたんですか?
私は、マリーナ姫の傍にいます。
それに、奴隷契約があるので離れることはムリですよ。」
「能力 聖魔人同一!」
魔王アウレリウスと、
同一化することで、
能力が変異した。
聖も魔も人も、
魔王マリーナの前では全て平等に能力が無効化される。
奴隷契約魔法は、
無効化された。
「これで、貴方たちは自由よ。
行きなさい。」
マリーナは部屋から出て行く。
通路には兵士がいる。
兵士は、巨大な魔力に当てられて気絶した。
そして、嫉妬の芽を植えて、
錯乱させていく。
皇太子殿下の部屋にたどり着く。
「どうしたんだい、
そんな格好をして。」
この男に遠慮はいらない。
「嫉妬よ、華を咲き乱れさせなさい。」
皇太子殿下は、錯乱した。
療養中の国王の部屋へ歩く。
「わ、わたしがこの国の王だ。」
ズバン。。
「皇太子殿下が錯乱したぞ!」
ズバン。
部屋にいた者を全員斬り捨てた。
「私が、今よりフィーナ国王となる!」
ふふふっ。
これで、フィーナ国は乱れる。
カインお義兄さまは、
錯乱した新国王より私を守るために、
必死で助けに来るだろう。
囚われの姫を助ける勇者さまだ。
お義兄さま。
私だけのお義兄さま。
何て、楽しみなんだろう。
カインお義兄さま、早く迎えに来て下さいね。
でないと、何をするか自分でも分からないわ。
この日より、
マリーナは、魔王となった。
次回、『20.断罪の刃グリードvsマリーナ姫 』へつづく。