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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第4章 英雄の落日
118/120

118.決戦(カインvsソラト)③

オルヴィスの空に、邪悪の権化と化した何かがいた。

そして、ひっきりなしに世界中へ攻撃を行っている。


世界の人々は、その姿を見るだけで、恐怖によって心が震えた。

その最中、世界を守る女神のように、一人の女性が防御結界で世界中の人々を守った。


その女性に近づけないため、誰だか分からない。

しかし、その姿は美しい黄金の髪だった。

人々は、名もなき女神に祈りを捧げる。

世界を守る盾となり、オルヴィスの人々を守った。


さらに空には、白い輝きを放つ人と、黒い輝きを放つ人がいた。

その二人は、邪悪の権化へ攻撃を行い、その軌跡が二振りの剣のように見えた。


人々を守るための剣と盾が空中に浮かんでいる。

そして、地上にいた一人の攻撃が民衆を動かした。


「私に、ありったけの魔力回復薬を!」


アテナである。アテナは、少し前まで敵であった軍へ身をさらし、魔力回復薬を手に入れた。


敵であった総大将なのだ。本来であれば、戦いになってもおかしくない。

しかし、人の種をかけた戦いに、そんなわだかまりは、あっさりと消えていた。


そして、アテナを中心に邪悪なる権化へ攻撃する。

その姿に感化され、地上からありったけの攻撃が、邪悪なる権化へと開始された。


その攻撃には、他のクロノスナンバーも参加している。

人の力を超えた攻撃がソラトに放たれるが、ダメージは皆無であった。


しかし、その攻撃は邪悪なる権化であるソラトを苛立たせる。

ソラトは、地上を攻撃するため、ありったけの力を込め始めた。


「マズい!クレア、何としてでも止めるぞ!」

「あんなものを放たれたら、地上は滅びます

!」


カインとクレアは、ソラトへ攻撃をし続ける。

しかし、ソラトはダメージを受けつつも、気にせずに力をためた。


結界を張るウルティアも、結界を更に強める。

それは、限界ギリギリの結界となった。


ソラトが世界を黒く染めた一撃を地上へ放つ。

人々にとっては、この戦いだけでも何度目か分からない死の恐怖を味わった。


カインとクレアは、ウルティアの元へ転移し、ともに結界を張る。

ソラトの攻撃と、結界は全くの互角となった。


「ぐっ。ウルティア、大丈夫か!」

「ま、まだ大丈夫です!」

「カイン、自我を何とか取り戻させないと、無差別すぎて守り切れません!」


カインは、一瞬だけためらった後、姿を変幻させた。

初代カインの姿である。


「アベル!」


カインも、ソラトの源となった初代アベルの姿に動揺し、頭が回らなくなったのだ。

そして、ソラトに不思議な変化が起こった。


「兄さん?」


一瞬だけ、ソラトの自我が戻ったのである。無差別攻撃の力が弱まる。

その瞬間に、攻撃を弾くことに成功した。

しかし、その後の攻撃は三人だけを狙った攻撃となる。


「結界が三人分だけなのは楽になったけど、このままじゃ…。」

「…。ウルティア様、能力『創造』で、ソラトと邪な心を切り離すことはできないでしょうか?」

「かなり、神力が足りないかな。」

「カイン様の神力を併せてもですか?」

「それなら、もしかしならできるかも。でも確証はないわ。」

「もしできたとしても、今の状況では出来ないだろう。」

「私が時間を稼ぎます。」

「「!?!?」」


クレアは、覚悟を決めた顔だった。

クレアには制限時間がある。もはや、終わりのカウントダウンは始まっていた。

この拮抗も、このままではすぐに崩れてしまうのだ。


「分かった。賭けてみよう。」

「死なないでね。」

「信じていただいて、ありがとうございます。もちろん、死にませんよ。まだまだやりたいことがたくさんあるんです。」


クレアは、にっこりと微笑み、その身に球体となるようオーラをまとわせ、突撃した。

全方位からの攻撃に備えるためである。

カインとウルティアは、クレアが死ぬ気がないと判断し、作業に集中した。


「カイン、始めましょう。」

「あぁ。」


二人は手をつなぎ、創造を始める。

二人に光が集まり出す。それは、世界中の光が二人へ集まる光景となった。


ある者は言う。

「美しき唄を聴いた」と。


ある者は言う。

「美しき絵を見た」と。


その作業を見たアテナは、いや、全ての人々は、その光が力の源であると気付くと、近くの光に自身の力を付与させた。

人々に本来は、そんな力はない。

しかし、出来てしまった。

『希望』という想いに力をのせて。


クレアは、その光景を目に焼き付け、祈りを捧げる。

大好きな人の成功を。

そして、目の前の人にも祈りを捧げた。


「ソラト様、もう終わりにして下さい!もう充分でしょう!」


クレアは、ソラトへ突っ込んだままだ。クレアを両手で受け止めている形になっている。

しかし、クレアの終わりは、あっさりときてしまった。


666秒が終わったのだ。

クレアは、元の姿に戻る。少しだけ、カインを見て微笑み、あっさりと散った。

ソラトの一撃は、細胞の一つすら残さず、クレアを消し去る。


その瞬間をカインは見た。

言葉にならない感覚がカインを襲った。それと同時にカインは、驚く。

クレアは、1秒だけあえて残し、能力を解除したように見えたのだ。


その事実に気づいた瞬間、クレアの想いがカインの中へ入ってきた。


(カイン、可能性に賭けてみました。)

(クレア!?何が起こったんだ?)

(ほんの少しですが、私の能力をカインへ渡せそうです。)


本来は、できるはずがない。

しかし、奇跡が起きた。


(何が起こっているんだ?)

(愛の奇跡ですかね。ふふふっ。それなら嬉しいな。カイン、今しかチャンスはありません。)

(その力は、クレアが使ってくれ!その力があれば、生き返ることもできるだろう?)

(さすがにそれは難しいですよ。カイン…、私はこれでも満足しているんです。)

(そんなわけないだろう!)

(いいえ、中途半端だった自分にようやく終わりを迎えることができました。最後に大好きな人を守るという願いも叶えられそうです。もう充分ですよ。)

(まだ終わっちゃダメだ!)

(カイン、ありがとう。でも、そろそろ行かなくちゃ。)

(クレア!)


ほんの一瞬の出来事だ。だが、ウルティアには何が起こったのかが分かった。


「カイン…。」

「ほんの、1秒だ。それに全てを賭ける!」


カインから、光と闇の闘気が現れる。

そして、融合した。


「ソラト、もう終われ!」


黄金の光に包まれたカインから、一撃が放たれる。

その瞬間、ウルティアもソラトを戻すために、創造した能力を使った。


「Re!」


ソラトの体が一瞬だけ震える。そして、ソラトの自我が完全に戻った。


「…。何が起こった?マズい!」


ソラトは、本能のままに防御する。

その防御は、カインの攻撃を防いだ。


「くっ、ダメなのか!?」


『世界の理を復旧します。システム再稼働しました。』


その声は、生きとし生けるものが聴いた。

しかし、カインは別に驚く。

勝手にステータス画面が現れたのだ。

そして、称号欄が輝き出す。


名前:カイン・レオンハルト

性別:男性

種族:神族

AGE:14235


level:9999


HP:13584/99999

MP:68577/99999

状態:正常

体力:28453/99999

物理攻撃:99999

物理防御:99999

魔法攻撃:99999

魔法防御:99999

速度:99999

精神:99999

運:99999


能力:『剣技Lv10』『拳技Lv10』『全耐性Lv10』…

特殊:『心のあり方』『異世界転移』『不死』…

加護:『女神ウルティア』『時の神クロノス』『光の王』…

称号:『英雄』『統治者』…



ステータス欄の中で、『英雄』が輝き出す。

それを意識した瞬間、『英雄』の詳細が頭に流れた。


『英雄』…どんな困難をも、打ち砕く無慈悲の一撃を放つ。その一撃のクリティカル補正率100%。


…。

これ、リュクレオンがいじったな…。


カインの放った一撃が、一気に力が膨れ上がる。

それは、どんな防御だろうと関係がない。

無慈悲の一撃となった。


「何が起こった!?」

「終わりだ、ソラト!」

「ぐっ、ぐぁー!」


ソラトの体が消失しかけ、精神が体が離れようとする。

その瞬間を、カインは見逃さない。


「ソラトの意識が本体から離れた!?ならば!」


カインは、最後の秘策を出す。

それと同時にソラトの本体は爆発した。

その爆発をカインは、ウルティアに任せる。そして、カインは謝った。


「ごめん、ウルティア…。」


カインは、ソラトの精神を捕まえると同時に発動する。


「次元転移!」

「カイン、何を!」


それは、グリードと戦った時に受けた技だった。

そして、グリードと同じく、その次元から出るための条件が設定されていた。

その条件とは、カインを完全に殺すことだった。

不死の称号を持つカインを。


「さぁ、ソラト。俺と終わらぬ贖罪の旅へ出かけようか。」

「カイン、貴様っ!」

「もう、俺とお前の戦いに、誰も巻き込むな。」

「ふざけるな!」


そして、カインとソラトは、オルヴィスの世界から消えたのだった。


その光景は、まるで夕焼けのように太陽が消えるような瞬間を人々は見る。

人々は、その太陽のような存在が消えた瞬間に悟った。

平和が戻ったのだと。


カインという名の英雄は、かくして太陽のように現れ、消えた。

人々は、英雄の落日を知る。



次回、『119.受け継がれる想い』へつづく。


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