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ようこそ、異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語  作者: 蒼井 Luke
第4章 英雄の落日
115/120

115.消えゆくツヴァイ

「こ、これは…。」


ツヴァイはオルヴィスと地球を繋ぐトンネルの入口へと来ていた。

それは、直径の円が5キロにも及ぶ巨大なトンネルであり、互いが近づくと消えてゆく性質を持っていた。


「いったいこれは、何でできているんだ?」


ツヴァイは、そのトンネルを触ってみる。

そして、少しだけ攻撃をしてみた。

しかし、バチンと弾かれてしまう。


「なるほどな。神力で作られた結界か…。そうなると、今のままでは厳しいか。」


ツヴァイは、思案に暮れる。

いったん戻って、神力を使う者と共同で事にあたるべきかもしれないと思い、戻ろうとも考えた。

しかし、断念せざるを得ない。


「もう、時間の猶予はあまりないか…。」


オルヴィスから、地球の大地が見えるほど、もう近付いていたのである。

このまま何もしなければ、タイムリミットは僅かしかなかった。


「仕方ない。試してみるか。」


ツヴァイは、地球とオルヴィスの間に結果を張り、これ以上、近付かせないようにする。

しかし、ここで思わぬ邪魔が入る。


「そこまでよ。」

「させないわ。」


憤怒の魔王イリアと、傲慢の魔王スペビアが現れた。


「おいおい、お前ら、しぶとすぎないか?」

「だまらっしゃい!」

「あなたになら負けないわ。」


ツヴァイは、ニヤリと笑う。


「ちょうどいい。お前ら、俺の者になれっ。」

「はいっ?」

「何を言っているの?」

「お前らの力を吸収すれば、状況が打開するかもしれないということさ。」


ツヴァイは、闇の闘気を出す。魔王と同程度の力になった。


「その程度で私を従えるわけないでしょう。」

「まったく、無礼にも程があるわ。」


イリアは憤怒の炎を出す。ツヴァイは、一瞬で炎の海に包まれた。

そして、スペビアは溶岩を操り、上空から一気にツヴァイを飲み込む。

そこで決着を着いたかに見えたが、ツヴァイは躱していた。


「あまり気が進まない技ではあるが真似をさせてもらおう。

起!」


イリアは、後ろから現れたツヴァイによって、上空へ吹き飛ぶ。


「承!」


上空へ飛ばされたイリアは、またもや上空に、突然現れたツヴァイによって下へ叩きつけられる。


「転!」


上空のツヴァイから、追い打ちの魔法弾がイリアを襲う。


「結!」


イリアは、魔法弾を全て飲み込み、口からはじき返した。


「なっ!?」


ツヴァイは、思わず途中で攻撃を辞めてしまう。


「他の人の技を使っても、すぐには身につかないわよ。しょせん、偽物は本物を超えることはできないわ」

「ちっ。よく、知っているな。」

「ほらほら、そんなことしてると後ろから衝突されるわよ。」

 

スペビアが、溶岩に身を包み、ツヴァイへ突っ込む。

ツヴァイは、慌てて転移して避ける。しかし、避けた先にイリアが待ち構えていた。


「ちっ!」

「憤怒の炎!」


ツヴァイは、吹き飛ぶ。そして、スペビアの元へ飛ばされてしまった。


「溶岩拳!」


ツヴァイは、左腕を持っていかれてしまう。


「あら、まさか避けられるとわね。」

「絶対に繋ぎたくない手だな。異性にモテないだろ?」

「あら?そんなことないわよ。屍となった者とラブラブさせてもらうわ。」


空中に無数の溶岩の手が現れる。

そして、憤怒の炎に全てが包まれ、どこにいるか分からなくなってしまう。

ツヴァイは、地球との距離を見る。そして、覚悟を決めた。


ツヴァイは、空に両手をかざす。


「あら?命乞い?」

「降参するなら、もっと絶望の顔を浮かべて欲しいわね。」


ツヴァイは、目を閉じて感じるようにする。

ソラトや魔人であるあの男にできて、自分にできないわけがなかった。


人の心にある悪は、無限大だ。

地球やオルヴィスから流れ出てくる闇の心は、全てがソラトへ吸収されてしまった。

そうなると、闇はただ一人しかいない。


最恐の神である闇の王より、ツヴァイは、力をもらおうとする。


「闇の王よ。我は、闇の王の後継者ツヴァイなり。我の求めに応じ、力を貸したまえ!」


闇の力が少しずつ、ツヴァイに集まってくる。しかし足りない。

ツヴァイは追加で要求した。


「足りないぞ。逃げ出してばかりいないで、こっちにも力を貸しやがれ!」


突然、闇の力が膨れあがる。その膨れ方にツヴァイは少しだけ驚いた。


「!?!?」


ツヴァイの心に直接、声が響く。


(生意気な奴め。まぁ、いい。闇の王の力を使ってみるがよい。)


その瞬間、ツヴァイの力が更に跳ね上がる。

闇の王がツヴァイへ更に力を貸したのだった。


「「えっ!?」」


魔王二人は、その力に驚く。

それは、カインと闘った時以上の恐怖となった。

戦う前から、結果が分かる。

その力は、まさに『闇の王』と名乗るに相応しい。


「せ、戦略的撤退よ!」

「さ、賛成!」


しかし、ツヴァイは逃げようとする魔王の前に一瞬で立ちはだかる。ツヴァイの一撃が、逃げる魔王よりも速いのは、あきらかだった。

魔王二人は、その事実を受け止め、足を止める。

それは、降参のポーズだった。


「お前らの、新しいご主人様は?」

「「ツヴァイ様です。」」


背筋をビシッと伸ばし、潔い旗の翻し方である。

この瞬間、憤怒の魔王イリアと、傲慢の魔王スペビアは、ツヴァイの眷属となった。

そのため、ツヴァイは魔王の力を取り込み、更に強くなる。


「さて、地球とオルヴィスを離したい。方法はあるか?」

「簡単です。互いに結界を張り、結界同士の反発で弾けば、自動的に離れていきます。」

「その通りです。ただ、結界同士がぶつかった衝動で、どんなことが起きるか…。」

「地球より、オルヴィスは遙かに小さい。オルヴィスが一方的にダメージを受ける可能性があるな…。まぁ、消滅するよりかマシか。」


魔王イリアは、地球とオルヴィスが衝突した場合のシミュレーションを手のひらで再現する。


魔王スペビアは、結界同士がぶつかり合った反動で傷つくシミュレーションを手のひらで再現する。

選択肢は、おのずと搾られた。結界同士がぶつかり合った方が遥かにダメージは少ないのである。


「さて、お前ら二人は、オルヴィスに結界を張れ。俺は地球へ転移し、地球に結界を張る。」

「かしこまりました。」

「ですが、私たちの力ではツヴァイ様の結界に到底及ばないかと。」

「結界を張る時、俺の力を貸す。調整は俺の方でやるから、お前らは全力で結界を張れ。」


ツヴァイは、地球へ転移し、空へと向かった。

オルヴィスと一番近かった場所は、南極であり、人目につかない場所だった。


「能力がなければ、こんな場所に来たくもないな…。寒すぎる。」


ツヴァイは、小言を言いつつ、結界を張る。

結界は、地球とオルヴィスのぶつかる衝撃に耐えられるレベルでなければならない。

そして、魔王二人と同じ強さの結界でなければならない。

でなければ、一方的に弱い方の結界を壊してしまうからだ。


ツヴァイは、慎重に結界の強さを調整していく。

そして、衝突するタイミングがやってきた。

反発した瞬間、双方の世界が揺れる。


しかし、ツヴァイはそんなことを気にしている余裕はなかった。

一瞬、反発しあい、成功したかに見え他が失敗を、確信する。


「マズいな…。」


互いの結界が弱く、結界が崩壊しかけてしまった。


「このままでは、結界がもたないか…。仕方ない。」


ツヴァイは、目に見える場所へ転移できる。

そして、転移した先は、互いの結界の間だった。

そのまま、互いの結界へ力を注いでいく。

お互いの性質が同じだからこそ、できる所作であろう。

結界を張った相手が魔王であったことが幸いした。


互いの結界に直接、力を注いでいく。

一歩間違えれば、結界に挟まれ、即死である。

その行為は、闇の王の力を借りたツヴァイをもってしても無茶な行為であった。


「くっ、ムリか!?」


その時、カインとウルティアが、ソラトを圧倒しているのを感じる。


「あいつらが頑張っているのに、俺が諦めるわけにはいかないか。

俺の魂も力に載せてやる!全部もっていけ!」


ツヴァイは、全ての力を使い、結界を張る。


「うぉぉぉぉぉ!」

「ツヴァイ様、このままでは、貴方様が!」

「早くお逃げ下さい!」

「負けられるか!」


ツヴァイは、黒い光を輝かせる。それは、宇宙のように深淵となって広がった。


結界の威力に負けた地球とオルヴィスは、互いに距離をとった。

その距離は、もう互いの引力圏外である。

こうして、地球とオルヴィスの衝突を避けられた。


しかし、オルヴィスの世界は、衝突の影響で天変地異が起こる。


大地震が起こった。

大地が割れた。

各地で竜巻が起きた。

火山が噴火した。


ツヴァイは、その光景を見つつも、体を動かすことができなかった。

最後に力を使いすぎ、消滅していく。


「ちっ。ここまでか…。まぁ、いい。思ったよりも楽しめたしな。アイン…、負けるなよ。カインの宿命に勝て!」 


ツヴァイは、自ら作り出した深淵という闇の中へと消えていくのであった。


「そういえば…。」


ツヴァイは、誰もいない場所で、何かをつぶやく。

その声は誰にも届かなかった。



次回、『116.決戦(カインvsソラト)②』へつづく。

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