第43話 わたしにだって、守りたいものがあるんですよ
『知ってる。知ってるぞ我は。キサマらコソ泥風情が我を貶めようとしていることなど……っはー! 王に逆らいしクソ共よ! 今すぐ出てこい! さもなくばキサマらの大切な物をズタズタに切り裂いてやるぞ!!』
「……と、申しております」
バカ王子の使いであろう鉄仮面のメイドが高らかに文を読み上げて一礼する。広場のど真ん中でだ。
「おい、まさかあれって……」
「百パーわたしたちのこと言ってますね。でもどうして王が捕まっていると?」
「王国に潜伏している同志からの情報だ。そいつも異世界人だから間違いない、と思う」
「精霊の加護は受け付けない、ですね。しかし相手も必死ですね。こんな辺境の地までやってくるなんて」
それほどあの情報がやばいということだろう。だが相手も流石だ、まさかこんなに早く嗅ぎつけるなんて。
「どうするよ? アレがハッタリじゃないってんならいよいよ打つ手無しじゃねーか」
「く……! せっかくここまで……!」
「……いえ。待ってください」
と、皆の言葉を制したのはマコさん。
「王ならきっとこうおっしゃるはずです……ここで歩みを止めては駄目だと」
「マコ……お前自分が何を言ってるのかわかってんのか?」
「やめてシュウ。マコの話を聞くんだ」
「ええ、わかっていますとも。その上で言わせてもらいます……このまま突き進むのだと」
マコさんの目には決意が見えた。
「あぁ!? んじゃお前は王がどうなってもいいって言ってんのか! ふざけるのも大概に――」
「シュウ! やめな。マコもわかってるっつったろ?」
ルビーが止めに入る。マコさんの表情を見てシュウも思いとどまったようだ。第三者から見てもマコさんが苦渋の決断をしたというのはわかる。きっと良心だけでは勝てないんだ、この戦いは。
「ここで怯んだら負けだ。そうと決まればすぐに行動しよう。シュウも、それでいいね?」
「……いいわけねぇだろ。でも、俺一人がうだうだ言ったところで何もできねぇ……クソッ」
「わかるよ、キミの気持ち」
ブランは優し気に微笑んだ。
「タケル、シャルドネ。キミたち二人は急いでここを離れるんだ。おそらく、もう僕たちの顔も割れてる。王が捕まったということはそういうことなんだ」
「あ、ああ。でもいいのか?」
「それは――」
「いいもなにも。わたしたちがここにいても仕方ないじゃないですか。さ、ということでお邪魔虫はとっとと去りましょう。みなさんの邪魔になりますからねーはいはい!」
「ちょ!? シャル、引っ張んな……!」
「ではではみなさん、お元気で~!」
シャルに引きずられながら騎士団連中と別れる。そして町の外まで出た時だ。
「ったく、いきなり何すんだよお前は」
「これ以上あそこにいるのは危険だと判断しましたからね」
「そりゃまぁ、そうだけど。それは騎士団の連中も同じで――」
「違いますよ。あの人たちと一緒にいるのは危険だと言ったのです」
「へ?」
思わずまぬけな声が出る。
「だっておかしいでしょう。今までその存在すら悟られなかったラムジン王が、サラミ王子の特ダネを掴んだ瞬間にコレですよ? わたしは一つの疑念を抱かざるをえません!」
「なんだよその疑念って?」
「はぁ、鈍いですねータケルさんは。鈍すぎて鈍色になってしまえばいいのに」
「悪口なのかそれは?」
「悪口ですよ。察しの悪いタケルさんに対しての。これはどっからどう考えても騎士団の中に裏切り者がいるとしか考えられないです」
「裏切者!? なんでそんなやつが……」
「理由は知りません。だけど、このタイミングで行ったワケなら察しがつきます。王を貶めようとした逆賊を一網打尽……これはサラミ王子にとってとても大きな成果になるわけです。そりゃ求心力が溜まりに溜まりまくるでしょうね」
「てめぇの評価を上げるためのエサにしようって魂胆か……あのバカ王子の考えそうなことだ」
見た目もアゴも性格もねじ曲がっている変態だ。
「って、それがわかってるなら奴らを止めないと! このままじゃみんな捕まっちまうぞ!?」
「いえ、今はまだ下手に動くのは危険です。こちらも色々と準備が必要ですからねぇ」
「準備?」
「ええ。本当は仕事以外で騎士団と協力するつもりはありませんでしたけど、今回は手を貸して差し上げます」
「そりゃどういう風の吹き回しだ?」
「わたしにだって、守りたいものがあるんですよ」




