前書き
皆さんの将来の夢はなんでしたか?
きっとそんな質問を街の人に投げかければ、色々な答えが返ってくるはずだ。
それこそ青々とした草原の草刈りをただ無心で行うようなものだろう。
それじゃあ、そんな質問をするお前の夢は何なんだ?と聞かれれば僕は恥ずかしながらにこう
答える。
正義の味方。
もちろんそれは警察官や消防士。はたまた弁護士や場合によってのヤクザ等ではない。
つまりそれは一般的にこの言葉から連想するアレを指す。
街に現れた怪人や何処か辺境の地で世界征服を企む悪の科学者を懲らしめる為にアイテムを使
い、ポーズをとって変身するヒーローに僕は真剣にそれも小学六年生頃まで考えていた。
勿論子供なりにそんなものにはなれないし、存在しない事も理解していた。
テレビを見ても日本のどこの街にも怪人は一向に現れないし、世界征服企む悪の科学者も取り
敢えず存在しないらしい。(もしかしたらこの世の何処かにはそんな酔狂な事を考えるアホタ
レは居るかもしれないが)
それでも男の子なら誰もが憧れずにはいられない職業にして最大の夢。僕の頭の中でのなりたい職業ラ
ンキングの一位には長らく正義の味方は燦然と輝き続けた。
この夢を同い年ぐらいの友達に口走れば笑われ、親や教師に言えば諭された。
「いつまでも子供みたいな事を言っているな」
決まって最後にはみんなそんなような言葉でこの会話を閉じる。
それでも僕は頭の中でずっとこの夢を抱き続けた。
決して叶わない夢だと理解していても。