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episode<ナントイウコトデショウ>

ほんの少しだけセンナ回。

尚、家事全般の解釈は現実で爺さんがやった事を書いています。速度を除いてですが。

 結局、その日はアトリエに帰る事が出来なかった。

 まあ、汚していた僕が悪いんだけど、それにしたって丸一日、と言うゲーム時間的には二日も帰れないとは思わなかった。明日が日曜日で、予定がないからよかったようなもので、そうじゃなければ流石に泣いていたかもしれない。

 そうして丸々二日間、草原で採取をしたり、旧縁を温めたりしたのだけど、──ようやく帰還許可が降りてほっと一安心。

 まあ、ジョージだし、綺麗にしてくれるのだから文句なんてないけど。そんなに時間が掛かるほど汚かったかしらと小首を傾げて帰宅して、


「──なんと言う事でしょう」


 ゴミが散乱し、腐敗した食材や壁から生えたキノコやカビが目立つ玄関先でしたが、匠の手によりさながら新築に戻ったかのよう。純白を取り戻した壁には帽子掛けが取り付けられ、今まで使用される事のなかった靴箱には、乱雑に放置してあった小物類を種類別に分けられ、小さな箱に纏められています。ゴミ置き場と貸していた箱上には可愛らしいポプリや、ノリで購入したままお蔵入りになっていた八卦鏡─尚、風水にて玄関に鏡を置くのは本来NG、但し八卦鏡ように八角形の物は氣を整える効果があるとかないとかでOKだったり─が表面を綺麗に磨かれた状態で立て掛けられています。どのように用意をしたのか玄関入り口には<鬼/耳/犬>の表札まであり、手製の新聞入れまで用意されています。

 その玄関を進んだ先に存在する<錬金/調合>部屋は、ゴミだらけで道具が何処にあるのかも分からない惨状でしたが、


「──なんということでしょう」


 最早何が何だか分からなかった作業台は分解され、新たな作業台の材料にされていました。ただ作業をするだけの台だった物が、僅か二日の間に収納用の引出しや、収納可能な組立椅子まで完備された物へと早変わりしています。適当に物を入れていた収納ボックスは取り外され、三種類のボックスに<鉱物><植物><生物>と刻まれたプレート付の物へと変わっていました。引出しを引けば綺麗に分類された材料が取り出しやすい名称付小箱に収納されています。使われていなかった棚には用途に合わせて分類され、側面にはチェック表まで作られています。

 <錬金/調合>部屋から東へと移動した<鍛冶>場は窓が壊れ、煙突掃除もろくに行われていなかった為通気性が悪く、何度か失敗した製作物を叩き付けた事もあり凹凸が激しかったのですが、


「──ナントイウコトデショウ」


 窓は修理ではなくぶち抜かれ、やや大きな両上げ式に変更されていました。ちなみに目覚えがあり、過去に<結晶化>用に作成した<ディバイングラス>の残りが使用されています。耐火性に優れていると言う設定なので鍛冶場にはもってこいですね。煙突も綺麗に掃除されているようで、窓を開ければ風の流れを感じるほど。傷だらけだった床は補修され、歩きにくさも解消されています。



 ──家事ってなんだっけ。


 匠の思考は一般人の予想を上回りすぎるから困る。



 ◆



 ──長い二日間だった。

 一先ず<逢魔庵─命名ジョージ─>の掃除と模様替えは終了した。途中で<家事全般>がなんたらかんたらとメッセージが流れたが無視してやり続けた甲斐があったぜ。

 材料として置いてあった物を色々と使わせて貰ったが、作業性は向上しただろうし文句は言われまい。いやはや、木工やらの手伝いがひょんなところで役に立ったな。現場仕事のバイトでも散々こき使われたが、中々に有意義だったと再認識した。まあ、ゲームだからこそ可能と言う側面もあるがな。

 にしても日曜大工やら補修やらが<家事全般>で可能なのが不思議だな。まあ、作成してもアイテムやらオブジェクトとして表示されず、ただの置物にしかならないが便利だ。これからもちょくちょく何か作るとしよう。


「──ふぅ」


 水でも飲みたいところだが動く気がしない。まあ、丸々二日ぶっ通しで作業をしたし、状態異常の<眠気><疲労>の影響もあるから仕方ないか。

 そう思い、このままログアウトして飯でも食べるかと思っていると、厨房の方から磨いたばかりのグラスを持って不安定に浮いているアイリスに気付く。

 どうしたのだろうと思ったが、とりあえずコップを受け取り、どうすれば良いのかを確認してみた。

 するとアイリスがコップに向かって指を向け、──PON!


「……雲?」


 コップの上に表れる雲にハテナマークを浮かべていると、途端に雲から雨が降り始める。……なるほど、どうやら水を出してくれているらしい。


「ありがとうな」


 七分目くらいまでで雨は止み、アイリスは満面の笑みでどうぞと掌をこちらに向けた。

 生温さに苦笑しながら、こちらも笑顔で飲み干して──微妙。

 なんと言えばいいのか。生温く、味も何とも言えず、匂いも特にない。水らしい水なのに生温いのが辛すぎる。

 しかしせっかく用意してくれたのだと満面の笑みで礼を言うと、花咲ような笑みを向けられてほっこりした。

 アイリスのレベルが上がれば冷たい水も出せるようになるのだろうか。少し気になる疑問である。


「──あ」


 忘れていたが<家事全般>のレベルを見てみるか、丸々二日とは言えそこまで上がっていないだろうが、気にならない訳もない。


<家事全般LV100/MAX>(家事技能補正+5、家事速度補正+5、掃除技能補正+5、掃除速度補正+5、料理技能補正+5、料理速度補正+5、洗濯技能補正+5、洗濯速度補正+5、日曜大工(木工モドキが可能)、日工技能補正+5、日工速度補正+5、ガーデニング(栽培モドキ可能)、庭弄技能補正+5、庭弄速度補正+5、帳簿(収拾自動記録手帳/重要アイテム)、ヘソクリ(金銭入手時一部を貯えるパッシブアーツ)、掃除道具セット(召喚系重要アイテム)、料理道具セット(召喚系重要アイテム)、大工道具セット(召喚系重要アイテム)、栽培道具セット(召喚系重要アイテム))


 ……カンストしてらっしゃる。

 いやまあ、それなりに大変な作業だったが苦労に対してのリターンがデカ過ぎると思うんだが?

 後半の重要アイテムってなんだ? と言うかただの家事道具だ、召喚する必要あるのか?

 まあ、それは置いとくとしてスキルの成長が可能らしい。本来ならLV50で成長可能になるのだが、カンストさせたおかげが候補が3つ存在している。


通常成長<家事全般→主婦/主夫>LV50

主婦/主夫は家庭を守り生活を支える者であり、当たり前であるが故に感謝されにくいが、家庭内での権利を主張する事が出来る。

アーツ/家事技能補正+10等


 まあ、妥当だわな。

 家事やってたら主夫化してるとか珍しくない。近所のお姉さん(、、、、)方とのコミュニケーションにも普通に混じれるから問題ない。


上位成長<家事全般→ヴァレット>他者の生活を支えながらLV80を越える

ヴァレット──従者は主人と共に行動を共にする存在である。主人を起こし、眠るまで休む事はない。常に主人の動向を掴めなければ大成は望めない。

アーツ/身嗜み補正+5等


 センナに関わりながらレベルを上げたから出たのか?

 だとするとセンナが主人で俺が従者か。まあ、普段の行動もそう取れなくもないかな。


進化<家事全般→荒神の神子>家事以外のスキルを一度も使用せず、LV1の状態から休息無でLV100に到達する。

家を守護する神々の神子。神子とは男の巫女であり、同時に神のお気に入りである証左。

アーツ/鎮守の加護(LUK+10/屋敷共有)等


 ……厳しいな、おい。

 そもそもゲームで家事真っ先にやる奴なんているかよ。どんな酔狂者だそりゃ。……いや、俺は言えねぇか。


「……まあ、決まりかね」


 迷う事なく<荒神の神子>を選択した。途端、先程まで有していた<家事全般>のアーツは全て消失してしまい、残らないのかとちょっと残念だった。……む、アイテムは残っていた。これはなんとも、儲け物だ。


「さて、飯でも作るか」


 とりあえずまずは飯だ飯。空腹値がそろそろまずいし、何よりアイリスが腹を押さえて赤くなっちまったしな。


「待ってろよ、すぐに作ってやるからな」


 恥ずかしそうに頷いたアイリスに、俺は笑みを浮かべていた。

スキル/プレイヤーに与えられた能力の総称。<戦闘><生産><強化><探索>が主な分類であり、それ以外の用途のスキルは<その他>で纏めらる。

 尚、一部スキルは役に立つ機会が少ないものの、レベルアップ必要経験値が少ない。

 又、成長の際に分岐が存在し、設定された条件を達成することで開示される。


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