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episode<虹精霊>

 ──NOW LOADING,

 ──装備者の個体情報を登録します。

 ──登録完了しました。

 ──それではアバター作成へと移行します。

 ──アバター名を記入してください。

 ──アバター名<ジョージ>で間違いないですか?

 ──外見の決定を行ってください。

 ──尚、外見はボーンデータからの肉付けを行うか、現実のプレイヤーの肉体を弄る事で作成する事が可能です。

 ──本当にこれでよろしいですか?

 ──アバターの作成を完了しました。

 ──続いてパラメータの振り分けを行ってください。ポイントは180です。

 ──尚、初期パラメータで振り分けた物のみが成長します。振り分けなかった物は成長することがありませんのでご注意ください。また、一項目に50ポイント以上振り分けた場合、成長にボーナスが付きます。具体的には50ポイントで成長ボーナス+1、99までは10振り分ける事に+1され、100以降は10事に+2ボーナス、150以降は10事に+3ボーナスが付きます。また、全てのポイントを一項目に振り分けた場合、更にボーナス+10が付きます。

 ──本当にこれでよろしいですか?

 ──本当にこれでよろしいですか?

 ──続いて初期スキルの選択を行ってください。選択可能スキル枠は一〇です。

 ──本当にこれでよろしいですか?

 ──本当にこれでよろしいですか?

 ──最後に種族の選択を行ってください。

 ──種族によって特定のスキルを習得します。また、種族ごとのメリット、デメリットもあります。

 ──本当にこれでよろしいですか?

 ──それではチュートリアルを開始します。

 ──NOW LOADING,



 ◆



 ──覚醒する。

 まだ薄ぼんやりとしてる意識の中で、周囲の光景に目を見開いた。

 そこはどこまでも駄々広い空間だ、平坦で、濁った白色の足場だけが、此処に存在している。

 

「こりゃまた、なんとも殺風景な事で」


 ぽつりと呟いた言葉に返答はなかった。

 その代わりとでも言うかのように、半透明なウィンドウが立ち上がって、視界の半分を埋め尽くす。

 どうやらチュートリアルの始まりらしい。



【①メニューの開き方】

右腕に装着されている「プレイヤーリング」に触れ、メニューを呼び出す事に意識を向ける事で開く事が可能です。音声による開閉も可能ですので、慣れない内は音声入力がオススメです。

尚、このリングは装備品ではなく、あくまでもシステムの一部です。破壊、着脱は不可能となっています。

また、このリングは必要時以外は認識する事ができません。認識不可能状態の場合、何かに干渉する事はありませんのでご安心ください。



 右腕を見れば確かに半透明な、シンプルなデザインの腕輪が一つ存在している。

 色は漆黒、艶やかな黒が半透明というのもなんとも奇妙な感覚だ。

 それに手を伸ばしてメニューを開く事を意識する。一秒、二秒、三秒、……開かん。

 

「メニュー」


 音声入力を試すと即座に開いた。

 なんとも簡素な物で、浮かぶ上がるそのウィンドウには、「所持品」「装備」「ステータス」「スキル」「クエスト」「ログアウト」が並べられている。

 とりあえずステータスを開いていみるかと触れるが、しかし【STOP!】の文字が現れて触れる事が出来ない。

 ふむ、先ずはチュートリアルを終わらせろ、という事か。



【②メニュー説明】

メニューは現在6種類の項目で分けられています。

「所持品」は現在所有しているアイテムを確認、使用する事が可能です。通常アイテム、武具(武器、防具、アクセサリの三分類)、アタッチメント、重要アイテムの4項目に分けられており、通常アイテム、武具には重量が存在しております。重量がSTRを上回る場合、AGIにマイナス補正が発生しますので注意してください。尚、AGIはマイナスにはなりません。

「装備」は武具の装備変更が行えます。武具の場合はSTR、防具の場合はVITによって装備の可不可が決定します。例外として杖やカードと言った魔法補助が目的とした武器や、一部の遠距離武器はSTRが0でも装備する事が可能です。また装備は戦闘中にも変更が可能ですが、その場合、変更時に硬直(ディレイ)が発生します。特定のスキルにより硬直軽減が可能ですが、武具と防具で違うスキルが必要となります。アクセサリは硬直は発生しませんが、変更後、暫くの間は効果が発揮されません。

「ステータス」は現在のアバター情報の表示、操作が可能です。レベル上昇時に上がるパラメータは初期パラメータで振り分けた物のみとなります。種族スキルはレベル上昇時に入手可能な種族ポイントにより習得可能です。また、称号を得た場合はこの項目で閲覧可能となっております。称号は特殊な効果を持つ物がありますので確認することをオススメします。

「スキル」現在装備しているスキル、装備はしていないが所有しているスキル両方の確認、操作が可能です。スキル装備枠は一〇なので用途に合わせてスキルを変更する事をオススメします。また、スキル習得に必要なポイントは各スキルのレベルが10上昇する度に1ポイント入手します。また、スキルは一定レベル上昇する事で上位のスキルへと変化します。その際、特定の組み合わせのスキルも変更可能な場合、統合スキルに変化する可能性があります。スキル変化後は一時的に性能が下がりますのでご注意ください。最後に戦闘中の変更はできません。

「クエスト」何らかの形で知り得たクエストの情報が提示されます。情報には現在の進行度、得たヒント等が申し訳程度に載っていますのでご活用ください。ただしヒントは申し訳程度にしか載っていませんのでご注意ください。

「ログアウト」DWOから現実へと帰還する機能です。この機能はメニューを開かずとも、脳内でログアウトする事を表明して頂ければ問題ありません。



 ──成程成程、どうにも普段やっていたゲームとそこまでは変わらんらしい。

 まあ、スキルやら種族スキルってのも覚えたり考えたりするのは面倒くさそうではあるがそれも含めて楽しめそうだしな。

 さて、それでは改めてステータスをと触れてみるが、またしても【STOP!】の文字に阻まれる。

 ううむ、どうやらまだチュートリアルは終わっていないらしい。

 では何かあるのだろう、そう思いウィンドウを探してみるがどうにもそれらしい物が周囲に存在しない。

 

「む?」


 その代わりとでも言うかのように、小汚い格好をした緑色の醜悪な存在が目の前に体操座りしているのに気が付いた。

 いつから居たのか、それと漂う哀愁は一体何なのか。まるで全てを諦めているかのようなため息は一体全体どうしたというのか。

 見た目に反して妙にフローラルな香りが漂うその子鬼の頭上には<ゴブリン>の四文字。

 成程、今度は戦闘のチュートリアルと言うわけか。



【③戦闘】

このゲームには数多のモンスターが存在しています。モンスターは行動により大まかに二種類に分ける事ができます。アバターに対して攻撃的で、即座に戦闘が始まるアクティブモンスター。アバターに対して攻撃的ではなく、こちらから攻撃をする事によって戦闘の始まるノンアクティブモンスターの二種類です。ノンアクティブモンスターの場合、戦闘を行う事無く過ごす事が可能ですが、アクティブモンスターの場合は戦闘は避けられず、察知していない場合奇襲を仕掛けられる可能性があるので注意しましょう。また、戦闘には魔法や武器を使用する以外にもダメージを与える方法があります。同士打ちや地形の利用等々、色々とありますので試してみてください。

それでは戦闘訓練を開始します。装備にて武具を装備し、<ゴブリン>を倒してください。また、今回のゴブリンは一度攻撃を食らうまで行動をしません。



 ──ようやくメニューに触る事が可能となった。

 しかし触れるのは未だに装備だけだ。まあ、今は戦闘チュートリアルだから仕方ないだろうと選択して装備画面を開く。

 浮かぶ上がる画面には「武器」「体防具」「腕防具」「脚防具」「靴」「アクセサリー」の六項目が存在している。

 その内でもう装備が決まっているのが体装備から下は全て埋まっている。どうやらステータスが決定的に足らないらしい。まあ、アクセサリーだけは種類が無いという扱いだろうが。

 ちなみに現在有しているのは1つだけ。まあ、所有しているスキルを考えれば当然なんだが、……現在所有しているのは盾だ。木で出来た小さな円形の盾。飾りすらない武骨な一品。とりあえず使い方覚えさせれればいいやというスタッフ側の適当さがよく分かる。ただしこの武骨さは嫌いじゃねぇ。

 盾を持ち上げて軽く振るう。まさしく力が入っていない状態だが響く音は轟音だ。多少持ち手部分が握りにくいが、まあ気にする程じゃねぇし。

 さて、と向き直るとそこには諦めた表情で空を見上げる一匹のゴブリン。

 一応、と言うか、おそらく本来はアクティブモンスターの類なのだろうが、しかしこうも悲壮感溢れる相手を、しかも一撃は無抵抗に殴られる役目を押し付けられた奴を相手にすると流石に躊躇ってしまうのは俺だけだろうか。さっきからもう溜息しか吐いていないんだが目の前のゴブリン。

 

「本当にやらなきゃいけないのか?」


 その答えは無常にも急かすようなメッセージだった。

 これはもう覚悟を決めるしかないのだろうか。しかし、個人的にこれを殴るのは気が引けるんだが。

 しょうがない、適当に小突いて終わりにしよう。

 盾で殴るのは流石に辛かろうと軽く拳を額に向けて放ち、──あ、しまった。


 ドゴンッ! と言う音を立ててゴブリンが後方に弾かれる。

 デコピンではありえない音、しかし実際に響いたその音は見事な程に綺麗な痕を残してゴブリンの額が陥没している。と言うか、薄く消えかけて、……消えた。

 やばい、これは非常にやばい。STR全振りにしていたのを忘れていた。

 ただの拳もこれなら十分な武器になるのが証明されたが、同時に手加減を覚えないと色々と問題が発生する事も理解できた。……多分、今なら鉄を握り潰せる。

 それはそうと、これは倒した内に入らないのだろうか。倒すにしてもせめて抵抗ぐらいしたかったろうに。


【④戦闘後】

モンスターとの戦闘終了後、そのままモンスターに触れる事でランダムでアイテムを入手する事が可能です。場合により複数入手する事もあります。また、戦闘をこなす事で経験値が蓄積され、上限に達する事で種族レベルが上昇します。



 まあ、ここら辺は変わらんわな。

 今回はアイテムは入手できなかったみたいだが、次からは貰えるんだろう。

 どうでもいいが未だにゴブリンのドロップってなんだろうか。臭い肉とかそう言うオチだろうか。……だとしたら最悪だな。

 

【⑤生産活動】

現在生産系スキルが存在しない為入手時に説明します。

【⑦採取】

フィールドの至る所にアイテム入手可能なポイントが存在しています。何気ない街道沿いに存在する草花に混じり、薬草を始めとする各種アイテムが存在しているのも珍しくありません。もちろん自然溢れる場所はアイテムの宝庫です。特定の採取行動にはスキルを必要とする事もあります。その場合、既に知っているスキルの場合は名前が表示され、知らない場合はヒントが入手できます。


【⑧チュートリアル終了】

お疲れ様でした。現在の時刻は一時三七分四九秒です。この空間でアバターの慣らしを行う事が可能です。ログアウトをする場合はメニューのログアウト機能をお試し下さい。

【⑨<アルカンシエル>懸賞特典】

いつもご愛読ありがとうございます。荒垣譲治様には以下の内容から一つだけ特典を得る事が可能です。

①<アルカンシエル>特典限定武具(武器、防具、アクセサリー)セット

②<アルカンシエル>特典限定アイテム<虹の宝玉>×五

③<アルカンシエル>特典限定称号<虹を歩く者>

④<アルカンシエル>特典限定精霊<虹紡ぐアイリス>との契約



 矢継ぎ早に流れるメッセージが終了すると同時に司会には四つの選択肢が現れる。

 一つは限定武具であるらしい<虹弓シャクラダヌス(必要STR20DEX40/弓矢が爆発する雷撃となる)><炎鎧ビフレスト(必要VIT30/炎吸収、炎カウンタ)><虹蛇の紐(死亡時一度だけ装備者を復活させ、以後24時間はこのアクセサリーは装備できない)>。

 一つは専門アイテムである<虹の宝玉(確定状態異常(火傷、氷結、麻痺、鈍足、沈黙、毒、浸潤)、レアドロップ率上昇、経験値二倍、入手アイテム率二倍)>×五。

 一つは限定称号<虹を歩く者(LUK上昇補正)>。

 一つは限定精霊<虹紡ぐアイリス(LV1/属性:特殊第一級/AGI特化>との契約。

 

 まず武具セットは論外だ。STR極振りだから装備できる物が一つしかない。

 そして<虹の宝玉>はゲームバランスをぶち壊しかねんので正直いらない。そう言う物はあまり好きではないのだ、どこぞのチートブレイザー並みの理不尽はもう勘弁して欲しい。

 称号は少し心惹かれる物がある。運がいい、というはあらゆる事で重要だ。だからこそ欲しいと思うのだが、……しかし次が、まあ、なんていうか、辛い。

 <虹紡ぐアイリス>は所謂掌サイズの精霊だ。容姿を説明するのなら、流れる純白の髪を背中まで伸ばし、愛らしい虹色の瞳が印象的な女性とでも言えばいいのか。先程からこっちをジッと見てはたおやかに手を振ったりして、他の特典に近付くと少し悲しそうに顔を俯かせるのだ。おまけに期待に満ちた視線を送りながら小首を傾げてくるものだから、なんというか色々辛い。


 もう、これ選ぶしかないと即座にアイリスを選択する。

 その瞬間消失するアイテムと称号、残されのたは満面の笑みでスカートの裾を持ち上げるアイリスだ。

 小さいが確かに女性らしい体つきである事に気が付き少し驚いた。ふむ、このゲームは細かいところまで拘りがあるらしい。

 観察していると不思議そうに見上げてくる小さな精霊を手に乗せて、力加減を気を付けながら頭を指先で撫でてやる。

 気持ちよさそうに目を細める女性の姿がどうにも愛らしく、思わず声に出して笑ってしまう。


「よろしくなアイリス」


 互いにイエティーと指を合わせて、とりあえず身体のならしをするとしよう。

 ストレッチを一通りこなし、適当に走り回る。通常よりも遅い──それこそ50㍍を走れば普段より1秒近く遅かった。おまけに体力がないのか10分も走り続ければすぐに息が切れる。しかし回復は早く、2分もすれば元通りだ。これは恐らく某狩りゲームの如くスタミナ値があるんだろうな。確認する事は出来ないが間違いないだろう。……VIT依存だと困るなぁ。

 その後現実で行える行動を全て行ってみたが特に問題はない。強いて言うなら普段より身体が重かったり動きにくかったりする程度だ。……まあ、その反面蹴るように跳躍したら跳びすぎて驚いたが。

 どうにもSTR=攻撃力って認識は止めた方が良さそうだ。まあ、strongの省略っぽいし、筋力と考えた方がいいかもしれん。

 さて、最後は所有スキルの確認作業だ。まずはメニューからスキルを選択して、と。


<装備スキル>

<盾><素手><威圧><調教><飼育><指導><裁縫><刺繍><料理><家事全般>


 ……うん、気が付けば現実に沿った物を取得していた。<盾>とか最たる物で、閃やら薫子の危うさを知っていたので守れるようにと取得したしな。

 ちなみに異彩を放つ<家事全般>は所謂趣味スキル──戦闘でも生産でも補助でもスキル。強いて言うならやりたいことに+αするだけのスキルだ。生産モドキも出来るものの、アイテムではなく置物しか作れない残念性能。分かりやすく言うなら料理を作っても味はするが満腹度が回復しない欠陥アイテムになるのだ。そもそも作ってもアイテム扱いされないとすら記されていた。……なんで取ったんだろう、今更だが疑問だ。


 何とも言えない気持ちになったのでアイリスと遊ぶ。と言っても、掌に乗せて撫でたり、頭に乗せた状態で走ったり、アイリスの魔法を盾で防いだりしただけだが。




 ちなみにログアウトしたら二時間以上経っていた。さっさと飯食って勉強とか終わらせねぇとな。

アバター/吸血鬼ジョージ

種族スキル/陽光弱体化

保有スキル/<盾><素手><威圧><調教><飼育><指導><裁縫><刺繍><料理><家事全般>

ステータス/STR180(LVUP+40/内ボーナス37)/VIT0/DEX0/AGI0/INT0/MMD0


各パラメータ詳細

STR/筋力値──近接攻撃、攻撃速度、武器制限に影響

VIT/体力値──物理防御、状態異常、防具制限に影響

DEX/器用値──間接攻撃、技術補正、道具使用に影響

AGI/敏捷値──移動速度、攻撃速度、行動補正に影響

INT/魔力値──魔法威力、魔法抵抗、MP回復量に影響

MMD/精神値──魔法抵抗、精神異常、MP回復速度に影響

隠しパラメータ

LUK/幸運値──クリティカル、アイテムドロップ率、レアドロップ率に影響

コミュニケーション/都市ごとのNPCとの交流状況。<親愛><友好><無関心><険悪><敵対>の五段階。

<友好>以上でイベント発生、<親愛/MAX>で???発生。

<険悪>でイベント発生、<敵対>で交流不可能、イベント発生、販売NPCの場合店舗使用不可能。

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