出会い4 吾唯足知
11月24日 京都・龍安寺石庭前にて
細川勝也 龍安寺はどうですか?
真司 はい。とても落ち着きます。
細川勝也 龍安寺で働いている細川と申します。
朝から小一時間、ずっと座っているので
少し気になったので、
声を掛けさせていただきました。
真司 もう1時間になるんだ。
いろいろと考えていたら、時間が経つのは
早いですね。
あ、私は土屋真司といいます。
よろしくお願いいたします。
細川勝也 土屋くんは高校生かな?
真司 はい、高校3年生です。
福岡から一人旅の最中です。
細川勝也 そうですか?
でも、若いのにお寺に
来るなんて、何か理由があったんですか?
真司 今、就職活動中なんです。
それでまだ内定がもらえていなくて、
自分を見つめ直す一人旅です。
細川勝也 それは、大変ですね。
今は就職も大変なんですか?
真司 求人も増えてきて、良くはなっては
いるんですけど、僕は決まらなくて。
細川勝也 時間はありますよ。
そんなに焦らなくても大丈夫。
真司 なんか、そんな感じがしてきました。
この石庭を見ていると、
ちょっと気持ちが落ち着いて、
不思議な感じですね。
細川勝也 そうですか。
土屋くんは感受性があるかもしれないね。
真司 石庭の石と波紋がいいですね。
細川勝也 この石庭の石は全部で何個ありますか?
真司 えーと・・・1、2、
14個ですか?
細川勝也 正解は15個。
真司 えー、14個しか見えないけど。
細川勝也 こちらから見てください。
あの石の陰にもう石があるでしょう。
真司 本当だ。
細川勝也 この石庭は15個の石がおいて
あるんだけど、
どの場所から見ても、14個しか
見えないように配置されているんですよ。
真司 なんか、不思議。
意味はあるんですか?
細川勝也 いろんな説はありますね。
ひとつは見えないけど満足しなさいって
意味が一番広がっているかな。
真司 満足?
細川勝也 この建物の反対側にあるつくばいを
見ましたか?
真司 まだ見てませんけど、つくばいって何ですか?
細川勝也 茶室に入る前に手や口を清めるために
水を入れておく石のこと。
一緒に見に行きましょう。
真司 はい。・・・・
細川勝也 これが、水戸光圀から寄贈されたって
言われているんですよ。
真司 水戸光圀って、水戸黄門のこと。
細川勝也 ここに書いてある文字を読めますか?
真司 五と矢と、あとは。
細川勝也 これは、吾唯足知って書いてあるんですよ。
真司 ちょっと待ってください。
メモしますから・・・
字は、吾、唯、足、知ですか。
そうか、口のが共通になっているんだ。
細川勝也 意味わかります?
真司 さっきの満足と関係があるんですよね。
細川勝也 われ、ただ、たるをしる。
簡単にいうと、
「満足することを知っている者
は貧しくても幸せであり、
満足することを知らない者は
たとえ金持ちでも不幸である。」と
いう意味と言われています。
真司 満足を知りなさいってこと?
細川勝也 土屋くんは、すぐに理解できるね。
その通り、欲しいものをもとめて
ばかりいてはいけない。
今でも十分でしょう。
満足しなさいってことです。
真司 なんか奥深いですね。
就職活動もそうかな。
いい会社いい会社って求めすぎてもいけない。
ある程度で満足しなさいかな。
細川勝也 一概にそうは言えないけど、
ちかいものがあるかもしれないね。
真司 われただたるを知る。
いい言葉を知ることができました。
やっぱり、勧められてここに来てよかった。
細川勝也 時間はたっぷりあるんでしょう。
ゆっくりと龍安寺の空間を楽しんで
くださいね。
真司 いろいろと説明ありがとうございました。
(つづく)