出会い1 仕事はやりがいが必要?
11月22日 島根県浜田港の防波堤にて
真司 なんで、漁師になったんですか?
久村大蔵 目の前に海があったからかな(笑)。
真司 嘘でしょう。
久村大蔵 代々、漁師でね。
赤ん坊の頃から、船に乗せられていたよ。
真司 漁師って仕事は楽しいですか?
久村大蔵 これから冬になっていくと、
寒さが耐えられないくらい辛いことも多いよ。
でも、大物が取れたときや
大漁のときは、楽しくてしょうがないね。
地平線しか見えない海の上はとても気持ちいいよ。
真司 久村さんは、お子さんも漁師なんですか?
久村大蔵 息子は、普通の会社員をやっているよ。
大学を出て、今は大阪。
漁師は俺の代で終わりだね。
真司 漁師は減っているんですか?
久村大蔵 年々減ってきているね。
つらい仕事だからかな、
若い人はやりたがらないよ。
農業と同じでね。
真司 でも、農業も漁業も人々の暮らしを
支える大事な仕事ですよね。
久村大蔵 良いこと言うじゃないか。
その大事な仕事をする人が近い将来
いなくなるかもね。
真司 俺、今就職活動の真っ最中なんですけど。
漁業や農業は考えたこともなかったですよ。
久村大蔵 水産工業高校からは時々漁師に
なりたいとやってくるけど、
昔に比べたら、続ける若者が減ったね。
1年ももたないくて、去っていくよ。
真司 俺も絶対無理かもしれません。
久村大蔵 どんな仕事でも一緒だよ。
楽なことばかりじゃなし、辛いこともあるよ。
真司 やっぱりやりがいが必要なんでしょうね。
久村大蔵 やりがいか。
俺たちも獲った魚を売って生きているけど、
その魚が食卓にならんで、
喜んでもらっていると思ったら
嬉しいもんな。
真司 どんな仕事でもやりがいですよね。
久村大蔵 兄さん、突然話しかけてきたと思ったら、
色々と聞いて、かなり悩んでいるみたいだね。
そんなに難しく考えるなよ。
さっき冗談で言ったけど、
海があって、魚がいるから漁師を
やっているだけかもしれないぞ、
俺たちは。
どんな仕事でも理由はあるけど、
やっていることは単純なことかもしれない。
そんなに難しく考えるなよ。
真司 ありがとうございます。
なんか、少し元気が出てきました。
久村大蔵 兄さん、お前気に入った。
其の辺でいっぱい付き合えよ。
人生の楽しみを教えてやるよ。
真司 でも、今日は遠慮しておきます。
就職が決まったら、また挨拶に来ます。
その時は、お酒も飲めるようにして
おきますから、よろしくお願いします。
久村大蔵 そうか、まあがんばれよ。
(つづく)