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社長

話を聞いた2人の顔から笑顔が消え、凍りついた様に時間が停止していた。ただ、マサオミだけが、何がおかしいのか、肩を震わせて笑いをかみ殺している。


「ハハッ…、冗談ですよね?」

リンの言葉にユウトも笑いながら同調する。

「それ最高っスよ!さすがっス!」



しかし、マサオミの口から出た言葉は2人の期待を裏切るものだった。


「ソレガ冗談ジャネエンダヨ…、今日1番ノコワイハナシダナ…。ククク…。」


(狂ってる)

とても尋常ではないマサオミの様子にリンは戦慄した。ユウトはずっと黙ったまま動かない。


「えっと…」

リンが緊迫した空気を和ませようと話し出したその時…。



パン!!


突然、破裂音が階段ホールに響き渡った。



一体、何が起こったのか、リンの思考は停止していた。ただ見た。マサオミの胸から血が流れている。自分を挟んでマサオミの反対側には…!?


銃を持ったユウトがいた…。


ユウトが叫んでいた。「フ…フザケンジャネエゾ…コノヤロウ!オレガイッタイドンナツモリデ!」

ようやく思考が戻ったリンだが身体が自分のものではないかの様にうまく動かない。かすれる様に声だけを発する事ができた。

「アンタ、ナニヤッタノカワカッテルノカ?」

ユウトは血走った目をリンに向けた…。とても正気のものではない。「ウルセエウルセエ!イツモメイレイバカリシヤガッテ!モウウンザリナンダヨ!」ユウトは続けた。狂った様に叫ぶと、銃をリンに向けた…。

と思っていたが、どうやら銃口はリンの斜め後ろに向けられている。

マサオミは死んでいなかった。息も絶え絶えながらポケットから何かを取り出そうとしている。それを見たユウトはさらに狼狽した。

「ヨケイナコトスルンジャネェ!!」


パン!

パン!

パン!


先ほど聞いたものと同じ破裂音とともに、マサオミの頭から鮮血が飛び散った。

何度かの銃声の後、マサオミは全く動かなくなった。


マサオミが動かなくなったのを確認したユウトは静かに銃口をリンに向けた。

その目は虚ろで、表情からは何の感情も読み取れなかった。


パン!


胸に焼ける様な痛みを感じながらリンはこれまでの人生を思い返していた…。高校までの恵まれた生活…。歯車が狂い始めたのは大学受験の失敗から。落ちに落ちた末、奈落の底で出会い、親友となったユウトと入社したのはブラック企業であった。2人の待遇の悪さは想像を超えるものだった。連夜会社に泊り込みの毎日。休日出勤は当たり前。そして、会社は彼等が辞めるのを決して許さなかった。

社長のマサオミは2人を奴隷の様に扱い、自らの旅行に無理矢理付き合わせていたが、社畜と成り果てた2人に選択の余地はなかった。今回の旅行も同じく付き合わされたものである。

薄れゆく意識の中、リンは親友の事を思った。(そういえば、ユウトは結婚したい子がいるって言ってたな…、ああ、もう籍をいれてたんだったか?)

リンの視界は真紅に染まっていく…。その色がさらに濃く、黒くなり、意識を失った。


3日後…。

リンは病院のベッドの上で警察の取り調べを受けていた。どうやら命は助かった様だ。但し、無事だったのは彼1人。マサオミはユウトの弾丸に貫かれ死亡。ユウトはスコットを撃ったあと、自らの頭を撃ち…自殺した様だ…。とのこと。

一体あれは何だったのか…。リンは考えた。99階のマサオミとユウトの様子は普通ではなかった。

そもそも、あの高級ホテルのエレベーターが止まる事なんてあり得るのか?

ユウトは最初から社長の事を殺すつもりだったのか?

そして、警察から聞いた不可解な話が他にもある。

ホテルの部屋にはマサオミから2人への感謝が綴られた遺書ともとれる手紙と退職金と書かれた3000万円の現金が発見されたという。どうやら彼等の会社はかなりの額の不渡を出しており、社長のマサオミは債権者に見つかる前に残った金を2人に渡したかったようだ。ユウト宛ての手紙には結婚のお祝いの言葉も書かれていた。

さらにユウトに撃たれた時、マサオミの手には、ホテルの部屋の鍵が握られていた。その死顔もまるでサプライズを楽しむ子供の様に笑っていたらしい…。

「社長…、あんた一体何がしたかったんだ?」リンは呟くと、目を閉じた。

最後までお読み頂きありがとうございました。

この作品は、SNSゲーム内のチャット内でワイワイ言いながら書いた私の初めての作品です。この作品をを通じて、書くことの楽しさを感じることができました。本来は実名(といってもチャット内のですが…)だったものを名前を変更し、投稿していますので、突然違う名前が出てきたときは、私の訂正忘れですので、ご指摘いただければと思います。

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