sideヘレン 11:29
仕方なかった。事実は事実として受け入れるしかない。
アタシはアンドロイドで、叔父さんはアタシを作り出した張本人で、"本当の"ヘレンは事故で死んでいて、そのヘレンの細胞でアタシは作られていて…etc.etc。そして叔父さんはUD研究に携わっていた。
…とにかく色々な事実が判明した。この日記は持っていこう…。アタシはポーチに日記をしまおうと振り返ったときに気付いた。シュウが外でゾンビたちと必死に戦っていた。
アタシにははっきりわかった。あれじゃシュウがやられてしまう。3対1だ、普通勝てない。
アタシは危険を顧みず。ゴルフクラブを持って外に飛び出していった。
けどちょっと遅かった。シュウが噛まれる寸前だった。
「シュウ!」
「シュウちゃん!」
茜がシュウを庇おうと飛び出した。けどいきなり現れた軍人さんによってそれは阻まれた。
「うわぁぁぁ!」
代わりにシュウは噛まれた。と思いきやまたもや突然現れた軍人さんに庇われていた。
「っ!バカ野郎!」
茜のところにいた軍人さんが銃を撃った。大きな音に耳がキーンとした。
耳が正常になった時にはゾンビは頭に風穴を空けて倒れていた。
その光景を見た茜は可哀想に吐いてしまった。シュウは驚いたまま目を見開いていた。アタシはただ目を背けてしまった。
軍人さんは噛まれたもう一人の軍人さんに駆け寄っていった。「おい、谷村。谷村!しっかりしろよ!」
「おい、あ、相棒。た…頼まれて、くれない、か?」
「な、なんだよ、言ってみろ」
「そう、な…泣くなよ。せっかくの…二枚目が台無しだぜ。頼みってのは、お、俺を殺してくれないか」
ビックリするような発言だった。自分を殺してほしい。それは今の彼の本当の願いなんだろうけど…。
「ふざけるな!こんなとこで死ぬな!俺たちは最強のコンビだろう!」
「ああ、そうだったな、けどごめんな、今日で解散だよ。本当に勝手ですまなかった…」
「おい、谷村?谷村!しっかりしろよ相棒!」
彼はもう戻ってこない。死んだ人間は帰ってこない。
「くそっ、畜生。…じゃあな相棒。安らかにな。行くぞ君たち」
彼はアタシたちに声をかけ、行こうとしたがそれはかなわなかった。
「おい、アンタ!後ろだ!」シュウが叫ぶ。
「なんだよ?…まさか、そんな。ぐっ、うわぁぁぁ」
さっきの谷村と呼ばれた軍人さんがゾンビとなり襲いかかった。
「なに、すんだよ!バカ野郎!」
必死に引き剥がそうとしたのが間違えだった。噛みつかれた肩の肉が食いちぎられた。
「ぐあぁぁぁ!」
激痛に軍人さんが叫ぶ。だけど、それでも怯むことなくゾンビは迫ってくる。その時パァンと乾いた音が響いた。
「ハァ、ハァッ。」
シュウが拳銃を構えていた。多分シュウがゾンビを撃ったのだろう。だが、それはゾンビの頭を掠めただけで、軍人に当たってしまった。
「あ、あぁ、うわぁぁぁぁ!」シュウは叫びながら何度も引き金を引いた。
そのうちの一発が頭に命中した。誰がどう見てもまぐれだったけど、それでよかった。なんとかして奴を殺すことができたから。けれども素直に喜べなかった。
シュウは人を誤射とはいえ一人殺してしまったし、それに彼を庇って一人死んでいたから…




