プロローグⅠ-大正真夜中殺人通- リメイク前
時は大正、世は絢爛
蒸気煙る帝都では
魑魅魍魎が跋扈して
険しきを冒す青年の
浪漫溢るる冒険奇談
今日も今日とて始まりは
俄突然前触れもなく
然しそれは必然で
荒波に唯、揉まれ逝くだけ……
愉快痛快冒険活劇の
はじまり、はじまり……
「あぁ~……畜生!!眠いぜ、まったく」
「あぁ、そうだな……ふぁぁ……」
帝都の全ての住民が寝静まった丑三つ時
眼鏡をかけた男と太った男の二人は警備員として、真夜中の東京駅周辺を見回っていた。
「しっかしえらく洒落てんなぁ。この駅はよぉ。今や帝国を代表とする建物だそうじゃねぇか」
「あぁ、全く、帝国の誇りこと東京駅さまの見回りをまかせてくれるたぁ俺達も出世したもんよ」
「がはは、違いねぇ」
談笑をしつつ、襲いかかってくる睡魔と格闘する。
「どうだ、今度出世祝いに一杯引っ掛けようぜ」
「そうだな、そいつぁいい考えだ。今度、家にある秘蔵のを持って行くぜ」
「おっ、そりゃぁ期待できそうだな」
真夜中の帝都に二人の笑い声が響く
「ところで」
と、愛用のつるまき眼鏡を拭きながら、眼鏡をかけていた男が切り出す。
「アイツはどうしたんだ?」
「アイツ?ん……あぁ、真田の事か」
「そうだ。あいつさっき便所に行ってからもう、半時ばかし経つだろ?」
自分達は何時も三人一組でこの駅の見回りをまかされている。
真田とかいう冴えない男は前までいた園雫の代わりに急に今日は行ってきた奴だ
その、真田と言う男は半時ばかし前までは俺達と一緒にいた。
しかし、真田は腹が痛くなった、と抜かして辻便所(公衆便所)に行ったきり帰ってきていないのだ。
眼鏡男の言葉にハッとした太った男は手をゴキリと鳴らしながらいった。
「そうか……そういやぁそうだな……。畜生、あの野郎。舐めてやがるな……便所で寝てるに違いねぇ。ちょっと行って、張り倒してくる」
そう言い、太った男はすっかりたるんだ腹を威勢よく叩きながら辻便所へ向かっていった。
「わかった。やりすぎないようにな。頼んだぜ」
「あぁ、すぐ戻る」
すぐに戻ると言いながら。
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「おい真田ぁ!」
辻便所の前で大声を張り上げる。
「寝てねぇでとっとと出てきやがれ!」
手を叩きながら男は催促する。
「テメェ寝てねぇでよぉ、さっさと面出せっつってんだよ!」
我ながらドスの利いた声で脅せたと満足しながら真田の返事を待つ。
が――
便所からは自らの声が響いた以外、何も帰ってこない。
余りの勢いにビビったか――?
いや。
「……舐めてやがるな」
その反応に苛立ちを覚えた男はドスドスと音を鳴らして便所の中に入る。
「真田ぁ!いい加減にしやがれ……ぇ?」
ビチャリ。
何か、液体を踏んだようだ。
「ッ!?なんだ……?」
思わずびくりと震えた後、あわてて足元を見てみると、ズボンが少し、飛び散った液体で汚れてしまっていた。
「あーあーあー……俺の一張羅が……」
嘆きながらハンカチで汚れた個所を拭おうと、しゃがむと
何か、生臭い、むせ返るような匂いを感じた。
「なんだこの気持ち悪ぃ匂い……」
そして、
「……ッ!?」
その匂いの出所が、足元に広がっている謎の液体から発せられていると気付き、次に、その液体が真田が入っているであろう個室から伸びている事に気付く。
「……ッ!!……おい真田ぁ!どうかしたのか?」
嫌悪感と恐怖を感じつつ、少し気遣った声音で訊ねる。が。
返事は何も帰ってこない。
「おい、真田?」
そう言いながら、閉まっている個室の前に立つ。
「どうしたんだ?おい?」
扉を叩こうと、手を胸の前に持って行った瞬間。
キィ……
独りでに扉が少し、開く。
「……ッ!?」
ゴクリ、と、思わず生唾を飲み込む。
開けてはいけない。
自らの微量ながらも残っていた野生本能であろう直感が、全力で警戒鐘を鳴らす。
が、
「おぃ……真田ぁ?」
そう言いながら、
男は使命感からか、勇気を振り絞り少しだけ開いたドアに手を掛け、個室の中を見る。
キィ……
金具が軋む音だけが、トイレに響いた。
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「……ッ!!遅い!!」
東京駅前で、声が響く。
「あいつ等揃いも揃って便所でお寝むか!?」
いらだった声を上げる主は、眼鏡の男だ。
「あぁ、畜生!もういい、警備だの何だので四半時は我慢してやった。だがもう半時は経つぞ!?いい加減遅いだろう!!」
吐き捨てるように言いながら、便所へと足を向ける。
「だいたい、園雫の奴も奴だ!!アイツ、急に夜逃げ何かしやがってよ!!アイツが逃げたおかげで代わりに真田なんて糞が来やがった!!」
苛立ちを、床を踏み潰すように歩いて抑える。
「絶対あいつら俺の事を舐めてやがるな……」
言いながら、便所の前へとたどり着く。
駅からほんの、歩いて3分の便所。
「いいだろう、思い知らせてやる。駅に帰るまで四半時はかかる体にしてやる」
そう言いながら、便所の中へとはいって行った。
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べちゃり。
泥を投げ付けたような、音が鳴る。
べちゃり。
やわらかい泥を投げ付けたような。
べちゃり。
しかし投げ付けられた、泥は無く
べちゃり。
紅い袋が散らばっていた。
がり。
「ん……これは……眼鏡か」
カラン。
つるまき眼鏡が投げ捨てられる。
滅茶苦茶に、折られた眼鏡が。
水溜まりの中に影一人。
ソレは確かに、ヒトの形をしていた。
べちゃり。
べちゃり。
べちゃり。
【魔女】。
古くからヨーロッパで伝えられている人智の及ばない、超自然的な力で人畜に害を及ぼすとされた人間、または行使する者の事。
その多くは女性とされ、男の個体は数少なかったという。
どうも岡部と言う物です。以後、お見知りおきを。
さて、何かよくわからない唄から始まりましたこの作品、
今回自分が書いてみようと思っているのは(これが処女作ですが)
大正を舞台とした、魔物化け物何でもござれな物語です。
基本、スチームパンクという言葉を盾に
大正にはねぇだろといった物も出していきます。
まぁ、平成の世にもねぇ物も出していくと思われますが。
この作品、歴史上人物が出てくる可能性もありますので(天皇は確定)お気を付けを。
さらに付け加えると雪女、魔女、吸血鬼などは出てくることが確定です。
又、恥ずかしながら自分、日頃文章を書く事があまり無いので、拙く、読みづらい上、
本業が学生なもので、進行が遅くなったり、短くなってしまうと思われますが
なにとぞ、末永くよろしくお願いいたします
ちなみに、歴史上の出来事にからませたりします。