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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episodeー04 帝国の正義を決める者
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Scene:12 剣戟の晩餐(1)

 セルマは、キャミルに守られて、ひそかに宮殿に戻った。

 キャミルとシャミルは、皇女として最後の晩餐ばんさんに招待された。

「殿下。今日は、アシッド殿と思う存分お話ができましたか?」

 相変あいかわらず、変な遠慮ということに無縁なシャミルだった。

「うむ。これも二人のお陰じゃ。礼を申す」

「それで、殿下の結論は出されたのでしょうか?」

「わらわの中では結論は出た。もっとも、アシッドには話しておらぬがな」

「えっ、どうしてでございます? 殿下が決断されたことは、当然、アシッドさんにも関係することでございましょう?」

「それは、そうじゃが」

「今、これからアシッドさんをお呼びくださって、ちゃんとお伝えくださりませ」

「シャミル、殿下にも殿下の考えがあってのことだ。私達がとやかく言うことではないぞ」

「……いや、シャミル殿の言うとおりじゃ。正直に言って、わらわ自身、迷いがあったのじゃ。しかし、今、じっくり考えてみると、不意打ふいうちのようにアシッドに告げることになってしまうの。アシッドに今日のうちに伝えようぞ」

「善は急げと申します。すぐにご使者を出されませ」

「そうじゃな」

「私の副官をやらせましょう。口の堅い者ですので、ご安心ください」

 キャミルは、セルマの許可を得てから、マサムネとビクトーレに、アシッドを迎えに行かせた。

 その用件がすむと、セルマはグラスを掲げた。

「アシッドには悪いが、せっかくのご馳走ちそうが冷めてしまう。いただこうではないか。二人とも」

 シャミルとキャミルもグラスを掲げた。

「明日には、この国の未来が決まるかもしれませんね」

「でも、殿下とアシッドさんの間で合意されたとしても、すんなりと行くだろうか?」

「皇帝派の重鎮じゅうちん達は黙っていないかもしれないですね」

 シャミルの言葉にセルマは思い出したかのように言った。

「そう言えば、昨日、叔父おじのカリアルディ公爵から摂政せっしょうの話があっての」

摂政せっしょうですか?」

「そうじゃ。わらわはまだ政務をれないだろうと、即位とともにカリアルディ公爵に全権を委任せよと言うのじゃ」

「……」

「しかし、断った。わらわがこの国を変えようという意志があったからの。それに、そもそも、わらわは公爵を信頼しておらぬ」

「公爵閣下は何と?」

「かなり不機嫌になっておったが、わらわも心の中でアカンベーをしてやったわ」

 キャミルは、その話を聞いて不安を感じた。そしてすぐにその不安はすぐに現実のものとなった。

 奥の院の裏庭で突然、爆発がした。

 キャミルとシャミルはすぐに立ち上がり、庭に面した窓のそばに寄ろうとしたが、すぐにキャミルがシャミルの手を引いて、窓から遠ざけた。

「あぶない! シャミル!」

「えっ?」

 右手でシャミルの手を引いてテーブルの所まで戻って来たキャミルは、左手でセルマの手を引いて、部屋から出て行こうとした。

「この部屋は危ない。早く!」

 キャミルのその言葉が終わらないうちに、何かが飛んで来る音がしたと思えば、窓が爆発をした。

「伏せろ!」

 その場でしゃがんだセルマとシャミルをかばうように、咄嗟とっさに窓に背中を向けたキャミルにガラスの破片が襲いかかった。

「キャミル! 大丈夫?」

 シャミルがキャミルを見てみると、右頬みぎほほに小さな切り傷がある他に、体中にガラスの小さな破片が突き刺さっているようだった。

「心配いらない。それより早く、この部屋から出るんだ!」

 そうしているうちに、爆発音を聞いて、控えの間から、カーラとサーニャがセルマの部屋に飛び込んで来た。

「船長!」

 無事なシャミルを見て、安堵あんどしたかのように大きく息をいたカーラとサーニャがすぐに近くに寄って来た。

「私は大丈夫です。それよりキャミルが」

「私のことも心配いらない。それよりカーラ! 陛下とシャミルのそばにいてくれ!」

「もちろんだ! キャミルはどうするんだ?」

 キャミルがその質問に答える前に、廊下の方から、どよめきと剣戟けんげきの響きが聞こえてきた。

「カーラ! 二人を頼むぞ!」

 そう言うと、キャミルは、廊下を音のする方に向かって走って行った。

「シャミル殿! キャミル少佐を一人で行かせるでない!」

 セルマが心配そうな顔をしてシャミルに訴えた。

「はい! 我々も行きましょう!」


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