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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episodeー04 帝国の正義を決める者
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Scene:03 狙われる姫君(3)

 キャミルが辺(あた)りの気配(けはい)を注意深くうかがっていると、小さいが聞き覚えのある音が聞き取れた。

 キャミルが、その音がした方を仰(あお)ぎ見ると、反重力グライダーを背負った五人組の黒ずくめの男達がキャミル達の方に飛んで来るのが、生(お)い茂った枝葉(えだは)の間から見えた。

 男達は、キャミル達の近くに着地すると、一斉に剣を抜いた。

「何者じゃ! ここにおわすをセルマ皇女と知っての狼藉(ろうぜき)か?」

 侍女長(じじょちょう)が男達を一喝(いっかつ)したが、そんなことで怯(ひる)む男達ではなかった。

 男達は無言で、キャミル達に迫って来た。

 キャミルは、抱っこしていたセルマを侍女(じじょ)の近くに降ろした。

「殿下! ここでしばらくお待ちください」

「キャミル少佐。どうするのじゃ?」

「殿下の命を狙う不逞(ふてい)の輩(やから)どもは、私が討ち取ってご覧に差し上げましょう」

 背中を向けていたキャミルに向かって男達が一斉に襲いかかった。

 しかし、キャミルは、すばやく振り返りざまにエペ・クレールを抜き、横に一振りした。それだけで、五人の男達全員の剣はすべて跳ね返されていた。

「銀河連邦宇宙軍少佐キャミル・パレ・クルスである! 治安維持が我らに与えられた使命なれば、それを乱す貴様達を見逃す訳にはいかん!」

 そう言うと、キャミルは五人の男達に打って掛かった。

 男達は、連邦軍でも一、二を争う剣の達人であるキャミルの敵ではなかった。

 キャミルは、セルマ達がいる方に男達を行かせないようにしながらも、男達の背後に回っては、その背中に背負った反重力グライダーをエペ・クレールで破壊した。普通の剣であれば不可能な、軽金属で覆(おお)われた機械の破壊も、エペ・クレールであれば容易(たやす)いことであった。そうして、男達全員の逃亡手段を奪っておいてから、あっという間に全員の剣を弾き飛ばすとともに、太腿(ふともも)を軽く傷付けた。

 五人の男達は太腿(ふともも)を押さえながら、のたうち回っていた。

「皮を切っただけだぞ。それだけの痛みに耐えることもできずに、よくも殿下を殺しに来られたものだな」

 エペ・クレールを鞘(さや)に収めたキャミルも、暗殺者としてはお粗末な痛がりように呆(あき)れてしまった。

 間もなく、近衛兵(このえへい)達が駆けつけて来て、男達を連行していこうとしたが、キャミルが呼び止めた。

「待て! 隊長は誰だ?」

「私ですが」

 小柄(こがら)で太った男が、一歩、前に進み出てきた。

「どこで何をしていた?」

「はあ?」

「近衛兵(このえへい)でありながら、賊(ぞく)が離宮(りきゅう)の上空から侵入してくるのに気がつかなかったのか?」

「何分(なにぶん)、我々の手勢(てぜい)だけでは、この広い離宮(りきゅう)の周(まわ)りすべてを警備することは不可能にて……」

「ならば、そのような危険な場所に殿下がお出掛けにならぬように、お諫(いさ)めすべきであろう!」

「そ、それは……」

 近衛兵(このえへい)隊長が言い淀(よど)んでいる間に、キャミルの側(そば)にセルマが近寄って来た。

「キャミル少佐。わらわがどうしてもと言って、ここに来たのじゃ。その者どもを責めるでない」

 我(わ)が儘(まま)と聞いていたが、部下に責任を押し付けることなく、部下を庇(かば)うセルマの態度に、キャミルも少しセルマのことを見直した。

「分かりました。殿下の部下達に部外者の私が出過ぎたことを申しました。お許しください」

「キャミル少佐。許すも何もない。わらわの方こそ礼を申す。そなたはわらわの命の恩人じゃ。かたじけない」

「私は自らの責務を果たしたまででございます。それより……」

 キャミルはセルマの後ろに控えて立っていた侍女(じじょ)と召使(めしつか)い達に近づいて行くと、再び、エペ・クレールを抜いて、侍女(じじょ)達に突き付けた。

「キャミル少佐。何をするのじゃ?」

 キャミルは、驚いたセルマの方を向かず、侍女(じじょ)達から注意をそらすことなく言った。

「あのロケット弾を、あれほど正確に着弾させるには、誰かが標的の位置を知らせていたと考えるしかない。そして殿下の側(そば)にいたのは、私の他には、お前達しかいない。つまり、お前達の中に、ロケット弾を誘導した者がいるはずだ!」

 侍女(じじょ)や召使(めしつか)い達は驚いてお互いの顔を見渡した。

「この中に裏切り者がいるというのか?」

 セルマの問いにキャミルは、更に侍女(じじょ)達に近づきながら答えた。

「知らず知らず協力していたということかもしれません」

「どういう意味じゃ?」

 エペ・クレールを突き付け、自分の情報端末をチラチラと見ながら、侍女(じじょ)三人と召使(めしつか)い二人の周(まわ)りを一周したキャミルは、エペ・クレールを仕舞(しま)うと、一人の侍女(じじょ)に近づいた。

 そして、キャミルは、裾(すそ)の長いメイド服のような服を着たその侍女(じじょ)のスカートをいきなり膝(ひざ)の辺(あた)りまでたくし上げた。

「何をなさいます!」

 侍女長(じじょちょう)がキャミルをにらみつけながら言ったが、キャミルはたくし上げたスカートの裏地を侍女長(じじょちょう)の方に向けた。そこには空豆大の機械が取り付けられていた。

「これは?」

 セルマも顔を近づけて、その機械を見た。

「小型のGPS発信装置です。この装置が発する電波に誘導されて、ロケット弾は飛んで来たのです」

「わ、私は何も知りませぬ!」

 スカートをたくし上げられていた侍女(じじょ)は必死で否定した。

「知っていたのか、知らなかったのかは、近衛兵(このえへい)達に調べてもらいましょう」

 五人の暗殺者達が足を引きずりながら連行されて行くのに続いて、その侍女も近衛兵(このえへい)達に連行されて行った。

「マイラは、わらわが子供の頃からずっと、わらわの側(そば)にいた者じゃ。何かの間違いじゃ!」

 連行されていった侍女(じじょ)を庇(かば)おうとするセルマにキャミルが優しく言った。

「殿下。先ほども申し上げたとおり、マイラという侍女(じじょ)が知らない間に、スカートの裏に、先ほどの装置を取り付けられたのかもしれません。いずれにしろ、近衛兵(このえへい)達が真実を明らかにしてくれるでしょう」

 辺(あた)りを見渡したキャミルは、とりあえずは、差し迫った危険を見つけることはできなかった。

「殿下。宮殿に比べて、ここは警備が手薄で危険です。第二、第三の攻撃がないとは限りません。とにかく、ここから立ち去りましょう」

「……うむ。分かった」

 朝から高かったテンションも鳴りを潜(ひそ)めてしまったセルマは、大人しくキャミルの勧めに従って、離宮(りきゅう)から宮殿に戻った。


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