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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episodeー03 命を賭して守るべきもの
69/234

Scene:08 海賊船フェンリスヴォルフ号(2)

 思いも寄らぬ者から「リンドブルムアイズ」という言葉を聞き、シャミルは目を見開き、唖然あぜんとした表情で、メルザを見つめた。

「メルザさんは、リンドブルムアイズが何かをご存じなのですか?」

「いいや、リンドブルムアイズが何かなんて知らないよ。そう言うあんたは何故なぜ、リンドブルムアイズを知っているんだい? ジョセフから聞いたのかい?」

「父上から直接聞いた訳ではありません。父上は、私の家には滅多めったに来ませんでしたから」

「ふ~ん。それじゃあ、どうして知っているんだい?」

「父上からいただいたメールの中に出て来ました」

「ジョセフは何て言っていたんだい?」

 シャミルは、初めてリンドブルムアイズについて語った父親からのメールの内容を思い出した。何度も読み返していたから、一語一句いちごいっく漏らさず頭に入っていた。

『シャミル、元気かい? 今日は君に大事なことを知らせる。実は、私は、探検のかたわら、ずっと、リンドブルムアイズというものを探している。これは私の祖先の持ち物だったもので、その血を受け継ぐ者だけが持つことを許され、また、その血を受け継ぐ者ではないと探し出すことすらできないものだが、シャミルが生まれる以前に失ってしまったものだ。私はそれを取り戻そうとしているが、まだ、行方が分からないままだ。私に、もしものことがあったら、リンドブルムアイズは君が引き継ぐべきものだ。必ず見つけて欲しい』

 シャミルは、すべてをメルザに伝えることはしない方が良いという自分の中の警戒心に素直に従った。

「父上がずっと探し求めていたものだそうです。でも、リンドブルムアイズがどんなものかは父上も教えてくださいませんでした」

「そうかい。ジョセフに代わって、あんたもリンドブルムアイズを探しているということかい?」

「はい」

「どんなものかも分からずにかい?」

「それはあなたも同じなのでは?」

「そう、確かにリンドブルムアイズがどんなものかは知らない。しかし、それを手にした者は、強大な力をさずかるらしいよ。ジョセフ自身の口から聞いたんだから、間違いないだろう」

「強大な力?」

「ああ、どんな力なんだろうね。海賊稼業をしている私にとっては、のどから手が出るくらい欲しいねえ。でも、リンドブルムアイズは、ジョセフの血を、それも濃く受け継いでいる者じゃないと、探し出せないらしい。私じゃ駄目なのさ」

「そのこともご存じなのなら、もし、メルザさんがリンドブルムアイズを探し出しても、無用の長物かもしれませんよ」

「だから、あんたに来てもらったのさ。あんたがそばにいてくれると、リンドブルムアイズを探し出すことができるはずだし、どんな力を与えてくれるのかも分かるかもしれないからね」

「メルザさんがリンドブルムアイズを探し出すまで、ずっと、私を連れ回すという訳ですか?」

「この船には、むさ苦しい野郎どもしかいないから、私も息が詰まっていたところさ。あんたみたいに可愛いそばにいてくれたら、私の航海も楽しいものになりそうだよ」

 メルザはそう言うと、再度、シャミルに顔を近づけてきて、シャミルのくちびるを人差し指でなぞりながら微笑んだ。

「私の宝物にしたいね。リンドブルムアイズが見つからなくとも、あんたを手に入れたことで十分満足だよ」

 シャミルが思わず顔を右にそむけると、メルザはいとおしそうにその左手でシャミルの髪を撫でた。

 シャミルは不気味さを感じていたが、不思議と嫌悪感は湧き上がらなかった。

 ふと、シャミルに一つの疑問が生じた。アスガルドで会った時、シャミルは一人だった。メルザも一人だったが、メルザの実力をもってすれば、シャミル一人を拉致らちすることは簡単だったのではなかろうかと。

 シャミルは、再び、メルザの方に向いた。

「メルザさん。なぜ、アスガルドで会った時に私を拉致らちしなかったのですか?」

「私は、おたずね者の賞金首だよ。アスガルドに一人乗り込んで行くにも、相当な準備と警戒をして行っているんだ。私は、色々と評判があるだろうけど、本当は用心深い小心者しょうしんものなのさ。もっとも、私も、まさか、ジョセフの娘に会うとは思ってもいなかったからね。そこまで考えがいたらなかったって言うのが正直なところだね」

「アスガルドには、何をしに来ていたのですか?」

「聞きたいかい?」

「ぜひ」

「ジョセフから呼び出されたのさ」

「えっ!」


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