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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episodeー03 命を賭して守るべきもの
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Scene:06 女狼メルザ(4)

「それよりキャミル。フレキ空域には、なぜ今、海賊が集結しているのでしょう?」

「恒星フレキの第五惑星ゲルズは居住不適用惑星なのだが、最近、オレイハルコン鉱脈が発見されて、多くの鉱山業者が採掘場建設のために、人と資材を運び入れている。人が動けば、当然、物と金も動く。そして、フレキ空域には、居住可能惑星がないことから、こちらの警備態勢もそれほど整っていない。そこをねらって、海賊達が集まってきているということだ」

「そうなのですね。実は、今回の依頼主さんも鉱山業者さんなんです。調査予定の衛星に少しでも居住可能性があれば、採掘場さいくつじょうで働く方々の施設を建てる予定だと言ってました」

「なるほど。その依頼主も、ゲルズに物資を搬送はんそうする途中に、フレキⅣの衛星に寄ることもできると思うが、それをしないということは、フレキ空域に海賊が集まってきていることを知っているんだろう。通常の運行ルートから外れると、宇宙軍の警備も手薄になって、海賊に襲われる確率はぐっと上がるからな」

「私が事前に確認したところでは、確か、今、フレキⅣはゲルズとは反対側を公転していたはずです」

「だからといって油断はするな。海賊達を恐れて迂回うかいしてゲルズに向かう船団もいて、それをねらって、海賊達もフレキ空域のあちらこちらに出没している。今回は、鉱山業者からの要望もあって、フレキ空域への進入禁止措置を採らなかったから、シャミルもフレキ空域に行くことはできるが、さっき言ったみたいに、今、非常に危険な状態だ。できれば今回の探査は見合わせた方が良いのではないか?」

「心配してくれてありがとう、キャミル。でも、海賊がいるからと言って、一度受けた依頼を断るのは、探検家として失格ではないかと思っています。そう言う危険な空域に行くからこそ、探検家と言える訳ですから」

「シャミルなら、そう言うと思った。海賊の出没情報は宇宙軍の公式放送でいつでも確認できるから、常にそれを確認しながら警戒をおこたらないでくれ」

「分かりました。……そういえば、メルザさんもフレキ空域に行くとおっしゃってました」

「シャミル。海賊相手に敬語も不要だ」

「あっ、……でも、本当にそんなにひどい人とは思えなかったんですよ」

「実は、私は、そのメルザを追って、アスガルドに来ていたんだ」

「そうなのですか?」

「ああ、昨日、メルザは、大胆だいたんにも首都空域で商船を襲って、積み荷を奪うだけではなく、乗員を皆殺しにした極悪非道ごくあくひどうな海賊なんだぞ」

「そんな……、どうして乗組員まで殺さなければいけないのでしょう?」

「分からん。単に人を殺すことが好きなだけという噂もある」

「そんな人にはとても見えなかった」 

「シャミルは、そんな極悪人と、まだ会ったことがないから、分からなかったのだろう。私も海賊達を何人かとららえているが、そのほとんどは、はったりだけで海賊をやっているような奴らだ。しかし、メルザは違うようだ。私も直接会ったことはないがな。メルザが女狼めろうと呼ばれるのは、獲物の息の根を止めるまで食らいついた牙を収めることがないからだと聞いている」

「そうですか」

 シャミルは、自分が感じたメルザに対する印象に自信がなくなってきて、少し、うつむき加減になり、テーブルに置かれているコーヒーカップをぼんやりと見つめた。

 そんなシャミルをなぐさめるように、キャミルが優しく言った。

「シャミルがフレキ空域に行くというのであれば、私も司令部に掛け合って、フレキ空域に行くようにしよう」

「本当ですか、キャミル!」

 一気に明るくなったシャミルが顔を上げてキャミルを見た。

「ああ、メルザもフレキ空域に向かうという確実な情報も得られたんだからな」

「それじゃあ、一緒に行けますか?」

「いや、それはさすがに無理だな。連邦艦隊の戦艦が一探検家の護衛をしていたなどと言われかねないからな」

 いかに相手がシャミルであっても、公私のけじめをきちんと付けるキャミルであった。

「そうですね。残念だけど仕方が無いですね。でも、同じフレキ空域にいてくれるだけでも心強いです」

「そんなことはないと思っているが、もし、シャミルがフレキ空域で海賊に襲われたら、すぐに駆けつけるから」

「はい。……ありがとう、キャミル」

「シャミル。フレキ空域に着いたら、情報端末のGPSシグナルを、私の情報端末の周波数に合わせて付けっぱなしにしておいてくれ」

「分かりました」

「絶対に、シャミルは私が守るから」

「はい」

 キャミルの真剣な眼差しにシャミルの笑顔が返された。

 ウェイトレスが持ってきたコーヒーを一口すすったキャミルは、ふと疑問に思うことが浮かんだようで、少し不思議そうな顔をしてシャミルに訊いた。

「しかし、メルザは、どうして白昼堂々と、一人でアスガルドにいたのだろう?」

「少なくともアルヴァック号を探しに来ていた訳ではないと思います」

「何か別の要件で第二宇宙港に来ていて、たまたま、懐かしいアルヴァック号を見つけたということか?」

「そうだと思います」

「しかし、賞金首であるメルザが、首都アスガルドに入国しているだけでも大問題だ。宇宙港の入国管理ゲートをどうやって通過したんだ? そして、アスガルドまで何でやって来たのだろう?」

「……分かりません」

「ああ、すまん。シャミルなら何でも分かっているだろうなって思って、何でもシャミルに訊くくせが付いているのもしれないな。今、私が言ったことは、軍なり警察なりが考えるべきことだったな」

「いいえ。キャミルに頼られるのは嬉しいですから。でも、キャミル。メルザさんの顔って分かっているのですか?」

「えっ、どういうことだ?」

「襲った船の乗員を皆殺しにするって言ってたじゃないですか。そうすると、メルザさんの顔を見た人で生きている人はいないのではないかなって思ったんです」

「ああ、そういうことか。確かに最近のメルザの顔は分からないようだな。海賊データベースに登載されている写真は、おそらく、かなり以前のものか、モンタージュだろう」

「そうだとすれば、他人のふりして入国することは容易たやすいですよね」

「まあ、そうだな。……だが、そこまでして自分の顔をさらさないのには、何か重大な理由があるとしか思えないな」

「そうですね」

 シャミルは、また一つ心配なことができた。自らの顔を明らかにしない者がもう一人いたことに気づいたからだ。


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