表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episodeー03 命を賭して守るべきもの
62/234

Scene:06 女狼メルザ(1)

 依頼主に対する惑星探査の結果報告を終えたシャミル達は、アスガルド第二宇宙港に向かっていた。

 大手民間旅客会社が運行する恒星間旅客定期便がひっきりなしに発着する第一宇宙港の隣に併設へいせつされた第二宇宙港は、探検船や商船、クルーザーのような個人用宇宙船などが係留けいりゅうされるハーバーを兼ねた、旅客用以外の宇宙船が発着する宇宙港である。

 カーラが運転するレンタル・エアカーには、助手席にサーニャが、後部座席にシャミルが座っていた。

 シャミルは、エアカーの窓越しに何気なく見ていた第二宇宙港のターミナルビルの向こうに、威容いようを誇っている巨大な黒い球を見つけた。直径二千メートルを超えるギャラクシー級戦艦は、手前にあるターミナルビルを模型の建物のように見せていた。

 アスガルドのすぐ近くには、軍事の中心であるスヴァルトヘイムが控えていることから、アスガルド自体には宇宙軍の基地はなく、宇宙軍の戦闘艦も、アスガルドに着陸する時には、この第二宇宙港を利用していた。

「キャミルだわ!」

 この距離では、その船体に記載されている師団章と船名は判別できなかったが、見慣れた船体は、まぎれもなく、それがアルスヴィッドであることを示していた。

 しかし、「アルスヴィッド」という船名ではなく、「キャミル」の名前が出たことがおかしかったようで、カーラとサーニャも思わず笑ってしまっていた。

 シャミルは、すぐに左手首に付けた多機能端末で、シャミルの携帯通信端末を呼び出した。

「まだ、任務中じゃないのかい?」

 カーラの予想に反して、すぐにキャミルが出た。

「どうした、シャミル?」

「何か用事がないと連絡してはいけないのですか?」

 シャミルが、ちょっとねたように言うと、通信機の向こうのキャミルは少し慌てているように返事を返してきた。

「い、いや、そう言う訳ではない。シャミルは、いつでも連絡してもらって良い」

「ふふふふ。キャミルは今、アスガルドにいるのですか?」

「ああ。近くの空域で任務を終了した後、一日だけ休暇をもらったので、アスガルドに寄ったんだ。スヴァルトヘイムには、乗組員達の娯楽施設があまりないからな」

「今、休暇中なのですか?」

「ああ、そうだ」

「もう! どうして私に連絡をしてくれないんですか!」

 通信機の向こうのキャミルが、汗をかいている様子が浮かぶようだった。

「い、いや、シャミルも忙しいと思って……」

「キャミルが休みの時には、惑星探査を途中で放り出しても会いに行きますよ」

 エアカーの前の座席で、カーラとサーニャが「おいおい」とつぶやいた。

「でも今日は、私もアスガルドに来ていて、ちょうど、お仕事も終わったところなんです。キャミル、これからどこかで会えますか?」

「ああ、大丈夫だ。今、どこにいるんだ?」

「第二宇宙港に向かっています」

「私は、まだ、アルスヴィッドにいる。……そうだな、午後四時頃であれば、確実に外に出られると思う」

「今、午後二時ですから、……それでは、第二宇宙港のターミナルビルの中に『気まぐれなキス』という可愛い名前の喫茶店があります。そこで、午後四時に待ち合わせでいかがですか?」

「分かった」

「キャミル、遅れないでくださいよ」

「わ、分かっている。それでは『気まぐれなキス』で」

「はい」

 通信機を切ったシャミルは、上機嫌で、前の座席のカーラとサーニャに話し掛けた。

「カーラとサーニャはどうします? 一緒に行きますか?」

「遠慮しとくよ。どうせ、お邪魔虫だろうからな」

 姉妹水入らずの時間を邪魔するつもりはないカーラが言うと、サーニャもうなづいた。

「えっ、そんなことはないことはない……ですけど」

相変あいかわらず嘘が下手へただな、船長は」

「本当だにゃあ」

「そ、そうですか? ……よ~し! もっと大人の駆け引きができる女になれるように頑張ります!」

「良いよ、船長は今のままで」

「そうだにゃあ」

「そ、そうですかぁ」

 何だか、それは無理と言われたみたいで、ちょっと落ち込んだシャミルであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ