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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode−01 惑星ヨトゥーンのラグナロク
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Scene:01 運命の出会い(1)

 おだやかな航海だった。

 超高速探査船アルヴァック号は、連邦の首都惑星アスガルドに向かって、既に首都空域と呼ばれるエリアを、順調に航海を続けていた。

 アルヴァック号は、宇宙空域のみならず、惑星の大気圏内であっても超高速が出せるように、全長約四十メートルの流線型の船体を持つ、乗員定員十名ほどの探検航海に特化した小型宇宙船であった。

 そのアルヴァック号の船長室では、船長のシャミルが机に向かって、今回の探検航海の航海日誌をPC端末の画面上で確認をしていた。

 銀髪のようにも見えるプラチナブロンドのストレートヘアは、背中の中程なかほどまであり、よく手入れがされているようでサラサラしていることが見るだけで分かった。色白な肌に、長い睫毛まつげ縁取ふちどられた大きな目にはエメラルドグリーンに輝く瞳。すらっとした鼻に薄い唇の口。ヒューマノイドであれば、誰が見ても美少女としか言いようがないととのった顔立ちが、PC端末のスクリーンに映り込んでいた。

 えりの白い上着はボタンが無く、そのセンターに青い一筋のラインがえりからすそまで引かれていた。腰には、上着の上から幅広の黒いベルトをめ、薄いピンク色のズボンに、つや消し加工された黒いブーツをいていた。

 また、ベルトの右側には小さなベルトポーチが、左側にはナイフシースが付けられており、ナイフシースには、つかに青く輝く宝石のような石がはめ込まれているナイフが収められていた。

 探検船の船長、すなわち探検家というと、荒くれ船乗り達を率いて、過酷な航海にも耐える精悍せいかんな顔つきをしたたくましき男というイメージが一般的ではあるが、シャミルは、そんなイメージをこうから否定する、まだ、あどけなさが残っている、若く美しい女性探検家だった。

 シャミルは、航海日誌を読み返しながら、今回の探検航海における出来事を思い出していた。

 今回の探検航海の行き先は、連邦の領土空域の辺境にある惑星ヨトゥーンだった。

 ヨトゥーンは、約六か月前に別の探検隊によって初めて発見された惑星であり、その探検隊がそのまま、探査のためにヨトゥーンに着陸したが、すぐに音信不通になってしまったという。その探検隊に探査依頼を出していたのは、今、シャミル達が向かっているアスガルドに基盤を持つ豪商ボルディン商会だった。そして、今回、惑星探検者ギルドを通じて、ヨトゥーンの探査をシャミルに依頼したのもボルディン商会であり、その依頼内容は、失踪しっそうした探検隊の捜索を含めた、ヨトゥーンの再探査であった。

 しかし、シャミルがヨトゥーンで見つけたのは、失踪しっそうした探検隊ではなく、銀河協約第三項において保護されるべき「保護対象種族」と呼ばれる、発展途上の文明を持つヨトゥーン族であった。

 まだ星間移動手段を開発できておらず、異種族との接触が未経験の種族については、その自律的進化の妨げとならないように、高度な文明を持つ連邦所属の種族が接触することが禁止される。したがって、シャミル達がヨトゥーン族を発見した時から、惑星ヨトゥーンには立ち入りできなくなってしまい、シャミル達はただちにヨトゥーンを後にしなければならなかった。

 シャミルは、保護対象種族との接触は初めての経験であったし、テラ族とまったく同じ容姿を持ったヨトゥーン族のことを、本音ではもっと調査をしたかった。

「あの方々ともう一度会いたい」

 探検家としての知的好奇心を満たすための欲求とは別に、まるでいやしを求めているかのような感覚が、シャミルにそう思わせていた。

 シャミルは、机に頬杖ほおづえをつきながら、ヨトゥーンでの思い出にひたっていたが、船内に鳴り響いた警報がシャミルを現実に引き戻した。


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