Scene:03 回想――出会い――(2)
シャミルは、凸凹コンビと一緒に探検家ギルド本部の地下にあるレストランに入った。商談もできるように、そこそこ高級感溢れる店だった。
四人掛けのテーブルにシャミルが凸凹コンビと向かい合って座ると間もなく、ウェイターがお冷やとメニューを持って来た。
凸凹コンビの二人はメニューを見ながらシャミルに訊いた。
「何を頼んでも良いのかい?」
「はい、どうぞ」
「ちょっと高いのでも良いのにゃあ?」
「は、はい」
凸凹コンビの二人は、シャミルのその言葉を待っていたかのように、ウェイターにこれでもかというくらい大量に注文をした。シャミルは昼食を済ませて、それほど時間も経っていなかったことから、飲み物だけを頼んだ。
注文を復唱してから、ウェイターが去って行くと、凸凹コンビは自己紹介をした。
「アタイはカーラ。あんたも言ったとおり、バウギ族だよ」
「ウチはサーニャだにゃあ。ミミル族なんだにゃあ」
「私は、シャミル・パレ・クルスと申します。テラ族です。よろしくお願いします」
シャミルが椅子に座ったまま丁寧にお辞儀をすると、凸凹コンビの二人も、それにつられてシャミルに向かってお辞儀をした。
「しかし、あんた、まだ学生さんに見えるけど、歳はいくつなんだい?」
「十六歳です」
「十六歳か……。あれかな。学校の勉強についていけずに、探検家のチームに入ろうと思ったってことかい?」
「あ、あの、学校なら卒業しました」
「中学校だろう? でもまあ、探検航海は知識っていうより、度胸と体力、それとちょっとばかりの運があれば大丈夫だからね」
「は、はあ……、そうなんですか?」
「ああ、……しかし、初々しいねえ。アタイ達にもこんな頃があったなあ、サーニャ」
「そうだにゃあ。ウチが初めてカーラと一緒に探検航海に出たのは、ちょうど、あんたと同じくらいの歳だったにゃあ」
「そうなのですか? それでは探検家になられてどれほど?」
「もう三年か、……四年だったかにゃあ、カーラ?」
「はっきりとは憶えていないよ。でも、まあ、それくらいだろう」
「そうですか。本当に大先輩ですね。今まで、どんな所に行かれたんですか?」
「連邦内の空域は、ほとんど行ったんじゃないかな。連邦外の未知空域にも何回かは行っているぜ」
「そうですか。ふふふふ、お話を聞くのが楽しみです」
「まあ、カーラとサーニャといやあ、探検家仲間では、ちょいと名の通った二人さ。あんた、人を見る目を持ってるねえ」
「そうなのですか……。ところで、お二人はどんな船に乗られているのですか? 連邦外の未知空域にも行っているということは、かなりの高速船に乗られているのですよね?」
「うっ、……そ、それは」
途端に二人の滑舌が悪くなった。
「ざ、残念ながら、今は、船の調子が悪くてさ。ちょっと修理に出しているんだよ」
「そうなのですか? ……だとしたら、今、依頼を探していらっしゃったですけど、どうやって航海をするつもりだったのですか?」
「まあ、船を持っている奴に依頼を再紹介して、一緒に行こうというつもりだったんだけどさ」
「ああ、なるほど」
「そう言うあんたも、その歳じゃ、まだ船を持っていないんだろう? 誰か船を持っている探検家を知っているのかい?」
「いえ、あの……、一応、私の船があります」
「えっ! あんたが船を?」
「その歳でかにゃあ?」
「あっ、はい」
「学校に行けなくなった娘のために船を買い与えるくらいに、あんたの家は裕福なのかい?」
「あの、確かに、親からお金は出して貰いましたが、それは貸してもらっているだけで、ちゃんと返さなければいけないんです」
「ふ~ん。でも、まあ、その歳で船長さんかい。羨ましいねえ」
カーラとサーニャは本当に羨ましそうにシャミルを見ていたが、ふと思い出したようにカーラが言った。
「あのさ、……何なら、アタイ達があんたの船に乗って、一緒に航海してやっても良いぜ」
「はい?」
「いや、だからさ、あんたも最初の探検航海で不安だろう? アタイ達があんたの船に乗って、指導方々、一緒に航海してやるって言っているんだよ」
「そうなのですか。……まあ、願ってもないことですけど」
「そうだろ! アタイ達は全然、構わないぜ。なあ、サーニャ?」
「もちろんだにゃあ!」
カーラは愛想笑いを浮かべながらシャミルに問うた。
「どうだい? 悪い話じゃないだろう?」
「ええ、それはもちろんですが……」
「報酬は三等分で良いぜ。指導料はサービスだ」
「……はい」
「それじゃあ、契約成立かい?」
「そうですね。最初の探検航海ですし、経験者のお二人が側にいていただけたら心強いです。どうかよろしくお願いします」
「まあ、大船に乗ったつもりでいて良いぜ」
「そうだにゃあ。小さな船でも大船になるにゃあ」
凸凹コンビの二人は、安堵したような顔をしていた。
そこにちょうど、注文した料理が運ばれてきた。カーラはともかく、サーニャがこの量を食べられるかと思ったが、二人ともあっという間に平らげてしまった。
「ああ、満腹満腹」
「これで、また三日間くらい飯抜きでも大丈夫だにゃあ」
「飯抜き?」
カーラは慌ててサーニャの口を塞いだ。
「はははは。……それじゃあ、早速、あんたの処女探検となる探査依頼を探そうじゃないか」
「そうですね」




