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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episodeー02 ヴァルキュリアの嘆き
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Scene:07 惑星ヘグニ上空再び(1)

 惑星ヘグニ上空には、相変わらず第三及び第七師団、そして第七十七師団の応援艦船が集結して、ヘグニから時折ときおり出て来ては攻撃を仕掛けてくるヘグニ艦隊と応戦をしていた。しかし、その回数はぐっと減少してきており、敵艦隊の規模も小さくなってきていた。

 一方、惑星軍による上陸作戦のための情報収集は着々と進んでおり、ヘグニでの拠点建設のための一斉上陸作戦実施のXデーが近づいていた。

 キャミルは、ヘグニ包囲網に復帰後、連日、アルスヴィッドの艦橋かんきょうに詰めていた。いつ、前回と同じように突然、ヘグニ艦隊が現れても、自らがただちに指揮ができるようにしたかったのだ。

 そんなキャミルを心配したようで、副官席に座っているマサムネが、艦長席の方に振り返って、声を掛けてきた。

「艦長。どうぞ、お休みください。ここは私が残っていますので」

「ありがとう、マサムネ」

 キャミルはおだやかな笑顔を見せて、マサムネに言った。

「けっして君を信頼していない訳ではない。これは私の心の問題なのだ。それに、私の体なら大丈夫だ。無茶はしていない」

「……分かりました」

 キャミルが休まないことはマサムネも分かっていたから、それ以上は何も言わなかった。

 その時、ヴァルプニール通信システムに着信があった。

 通信士が通話状態にすると、通話モニターにシャミルの顔が映し出された。

「こんにちは。こちらは公認探査船アルヴァック号船長シャミル・パレ・クルスです。艦長さんはいらっしゃいますか?」

 連邦艦隊の戦艦に対して、まるで友人の携帯端末に通信してくるような雰囲気のシャミルだったが、惑星ヨトゥーンでの出来事で、シャミルがキャミルの異母姉妹であり、その人となりを知っているアルスヴィッドの艦橋かんきょうスタッフは、苦笑しながら、キャミルを見た。

「シャミル。私は今、軍事行動中だ。何か緊急事態でもあったのか?」

 いくら相手がシャミルであっても、公務と私事とはきっちりと分けて行動しているキャミルは、ややあきれた様子で返信をした。

「とんでもなく慌てているという訳ではないんですけど、ヘグニ族に関することなので、絶対、キャミルにお知らせしておくべきだと思ったものですから」

「ヘグニ族に関すること? どんなことだ?」

 予想だにしていなかったシャミルの話の内容に、キャミルはかすように訊いた。

「実は、今日、ハシム殿のご依頼でニズヘッグⅦという惑星の探査に行ったのです。その惑星は、アンモニア系大気を持つ惑星なのですが、その地表でヘグニ族と思われる生物に会ったのです」

「ヘグニ族に? その惑星はどこにあるんだ?」

「ヘグニ空域の隣の空域ですよ」

「ヘグニの隣の空域にある惑星にヘグニ族が……。シャミル、その証拠となるものはあるか?」

「ええ、探査中にビデオカメラで撮影した映像と、アルヴァック号の艦橋モニターのバックアップ映像があります。これから送りましょうか?」

「そうしてくれ」

「では、すぐにお送りします」

 シャミルが言い終わらないうちに、映像ファイルが添付されたメールがアルスヴィッドに送信されてきた。通信スタッフがただちにそれをモニターで再生を始めると、そこにはシャミル達がニズヘッグⅦで巨大なトカゲに襲われた際の映像と、円柱形の宇宙船から攻撃を受けた際の映像が収められていた。

 キャミルもヘグニ族を直接に見たことは無いが、作戦参加の際に受けたレクチャーで見た映像におけるヘグニ族の容姿とまったく同じであった。

「まったく生物の痕跡こんせきがない地表に、突然、現れたのです」

「どういうことだ?」

「これは私の想像ですが、ニズヘッグⅦの地下に、ヘグニ族が隠れているのではないかと思ったのです」

「地下に?」

「はい。そうすれば、ヘグニ族や、その宇宙船が突然、現れたことも説明がつきます」

「そうだとすると、ヘグニ族は、いつの間に、ニズヘッグⅦに行ったのだ? ……いや、それを考えるのは我々の役目だったな。シャミル、ありがとう。貴重な情報だ」

「いえ、キャミルのお役に立ててうれしいです。それでは、さようなら」

「ああ」

 シャミルとの通信を切ってから、キャミルは、シャミルからもらった映像をもう一度、再生させながら、二人の副官に話し掛けた。

「マサムネ、ビクトーレ。どう思う?」

「シャミルさんが言った、地下から出て来ているという説は説得力がありますね」

 マサムネがシャミルの説を支持した。

「そうだな。地下に宇宙船を格納できるほどの基地があることは間違いなさそうだ。しかし、問題は、いつ、何のために、ニズヘッグⅦに基地を作ったのかだ」

「密かにヘグニ本星から脱出を図って、ニズヘッグⅦで態勢を立て直して、反攻を掛けようと言う魂胆こんたんでしょうか?」

 今度は、ビクトーレが推測すいそくを述べた。

「しかし、ニズヘッグⅦが、いくらヘグニ族の生息に適している惑星だとしても、何もない惑星に基地の一つや二つを作ったところで、首都惑星のヘグニに取って代われるものではあるまい」

「そうもそうですね。これから開拓するなんて悠長ゆうちょうのことでも考えているのでしょうか?」

「とにかく、これからヘグニ戦線の司令本部に報告をしてくる」


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