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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode−01 惑星ヨトゥーンのラグナロク
30/234

Scene:10 束の間の休息

 惑星ワイハ。

 ここは、連邦中の資本が集中投資をして、海水浴場、サーフィン会場、大規模遊園地、カジノ、劇場、スキー場など考えられる限りの娯楽施設が建設され、惑星まるごとがリゾート地としてにぎわっている惑星だった。

 その亜熱帯地域にある最高級リゾートホテルのプライベートプールサイドのビーチチェアに、サングラスを掛けたシャミルが、淡いピンク色のビキニ姿で横たわっていた。 

 プールの中では、同じくビキニ姿のカーラが、その持て余る体力を消費しているかのように、クロールで何往復もしていた。

 水が苦手なサーニャは、シャミルが横たわっているビーチチェアのそばに座って、テーブルの上に並べられた高級デザートを思う存分、味わっていた。

「お~い」

 シャミル達がいるプールサイドの反対側から、手を振りながら近づいて来た、海水パンツ姿のハシムは、水着姿のシャミルを見て、だらしなく鼻の下を伸ばしていた。

「ひゅう~、どこにそんな立派な果実を隠していたんだ、シャミル?」

 あどけなさも残るシャミルの顔立ちからは、なかなか想像できないナイスバディに、ハシムも目を奪われたようだった。

「まったく、俺は、未知の惑星より、あんたを徹底的に調査したいぜ」

 シャミルは、サングラスをはずし、少し上半身を起こして、ハシムに笑顔で言った。

「ハシム殿。本当にありがとうございます。こんなに優雅な気分になれたのは初めてです」

「シャミルが喜んでくれて良かったよ。まあ、シャミルのお陰で、俺も良い思いをさせてもらったからな」

 ボルディン商会は、事実上、解散させられ、その有していた事業は分割されて、それぞれ他の商会に買収・承継されていった。

 ハシムも、惑星イリアスを拠点にするボルディン商会の子会社である医薬品の製造販売会社を買収して、また一つ事業の拡大を実現できたところだった。

「シャミル、これを受け取ってくれ」

 ハシムは持っていたホテルのルームキーをシャミルに差し出した。

「これは?」

「もちろん、俺の部屋の鍵だ。シャミルが泊まっている部屋より豪華な、このホテルで一番のロイヤルスイートさ」

「ハシム殿はお金が有り余っているのですか?」

「いや、俺は無駄な金は使わない主義なんだ。これは投資さ」

「投資?」

「俺の未来の奥さんへのな」

「うふふふふ」

 プロポーズとも取れるハシムの言葉に、シャミルはまるで冗談に笑い転げているように無邪気な声で笑った。

「素敵だろう。今夜はこの鍵を使って、俺の部屋においで」

「ハシム殿。ハシム殿の部屋には、ベッドはいくつあるのですか?」

「ベッドは一つあれば十分だろう」

「私は寝相ねぞうが悪くて……」

 シャミルが恥ずかしそうに言うと、にやけた顔のハシムが答えた。

「はははは。俺はまったく気にしないぜ。でも、控えの間が二つあって、それぞれにベッドがあるぜ」

「そうですか」

 シャミルが鍵を受け取ると、ハシムが満面の笑みとなったことは言うまでもない。

「いつでも来てくれよ、シャミル」

「だそうですよ」

 シャミルはそう言うと、その鍵をハシムの後ろに放り投げた。

 ハシムが慌てて鍵の行方を追いながら振り向くと、黒のワンピースの水着を着たキャミルがその鍵を受け取っていた。

「キャミルじゃないか! 珍しいな。どうしたんだ?」

「シャミルが誘ってくれたから、今日は久しぶりに休暇を取って、やって来たのだ」

「そうなのか。しかし、お前の水着姿も久しぶりに見たな。……小学校以来か?」

 引き締まった体ではあったが、シャミル同様、魅力的なスタイルであった。

「変な想像をしているんじゃないだろうな、ハシム?」

 キャミルが腕組みをしてハシムをにらむと、ハシムは慌てて弁解をした。

「す、するわけないだろう。俺も、まだ死にたくないからな」

 ハシムは、キャミルに渡ったルームキーの方が気になるようだった。

「それより、その鍵は?」

 その時、キャミルの後ろから、なぜか水着姿のマサムネとビクトーレが現れた。

「ちょうど良かった。この二人もせっかくの休暇なのに私についてくると言ったので連れて来たんだ。お前の部屋のベッドに寝かせてやってくれ。二つ空いているんだろう?」

 キャミルはそう言って、鍵をマサムネに渡した。

「なぁにい~! それじゃあ、キャミルは?」

「シャミルの部屋のベッドも三人は一緒に寝られるくらい大きいと言っていたので、シャミルと一緒に寝る。つもる話もいっぱいあるからな」

「なんでこのんで、野郎どもと同じ部屋で寝なきゃいけないんだ!」

「マサムネとビクトーレの二人に、一つベッドの中でやけ酒の相手をしてもらえ」

 カーラがプールの中からにやにや笑いながら、ハシムに言った。

「変な冗談を言うな! お、おい! お前達も何、頬染ほほそめているんだよ?」

 狼狽うろたえているハシムに、カーラとサーニャが容赦ようしゃなくおねだりをした。

「あっ、デザートがもう無いにゃあ! お代わりにゃあ!」

「おい、船長の部屋には、アタイとサーニャも泊まるからな。酒とつまみとデザートをたんまり持って来ておいてくれよ」

「おい、待て! それじゃあ、俺もシャミルの部屋に行く」

「ハシム。さっき言ったはずだぞ。今夜は、私とシャミルが水入らずで夜通し話すのだ。邪魔をするな」

 キャミルにがつんと言われて、残る望みであるシャミルに懇願こんがんするしかなかったハシムだった。

「シャミル、頼む。せめてディナーだけでも二人っきりで楽しもうじゃないか?」

「ご飯は大勢で食べた方が楽しいですよ。みんなで一緒に食べましょう」

「そうだな。それが良い。私とマサムネとビクトーレの分はちゃんと払うから心配するな」

「そんな心配はしてねえって」

 一気に落ち込んだハシムに、シャミルが無邪気に微笑みながら、とどめを刺した。

「ハシム殿。これからも惑星探検のご依頼をお待ちしています。今日のお礼として、必ず、あなたに素晴らしい惑星をプレゼントします!」


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