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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode−01 惑星ヨトゥーンのラグナロク
25/234

Scene:08 作戦会議(1)

 惑星イリアス。

 イリアス族の故郷であり、キャミルとハシムの故郷であった。

 その首都であるムスペルという街に、ハシムの商会の本店があった。ボルディン商会の本店ビルとは比ぶべくもないが、伝統ある煉瓦れんが造りの建物を改築したおもむきのある建物であった。

 その会議室のテーブルに、シャミルとキャミルがそれぞれの副官を連れて座っていた。

 横には、今回の依頼主であるハシムが座っていた。

 ヨトゥーン空域でキャミルに救出されてから、今回の依頼主であるハシムの元を訪れたシャミルは、ヨトゥーンから持ち出した、人参にんじんのような植物と赤い粉をハシムに渡した。

 その日から三日後。

 ハシムに呼び出されたシャミルは、ハシムの商会まで来ると、キャミルまで来ていたことから、ハシムの話の内容は、ある程度、予想できていた。

「ハシム。私まで呼び出すとは、余程よほどの話なんだろうな?」

「キャミルだって、そう思ったんだから来たんだろう?」

「シャミルから、ヨトゥーンでの話は聞いた。辺境警備艦隊の関与が疑われることは明らかだ。事と次第によっては、同じ軍の人間として看過かんかすることはできないからな」

「相変わらずフットワークが軽いな」

 ハシムは嬉しそうに微笑むと、ふところから透明なビニール袋に入れられた赤い粉を取り出して、テーブルの上に置いた。

「シャミルが持ち帰った、この赤い粉を専門の鑑定会社に調査をしてもらった。こいつは……」

 ハシムは、勿体もったいぶって、いったん言葉を切った後、らすように、シャミルとキャミルを交互に見渡した。

「新型の麻薬の原料のようだ」

「麻薬!」

 全員が驚いてハシムを見ると、ハシムは満足げに微笑みながら話を続けた。

「シャミルのようなお嬢様や、キャミルのような高級軍人には縁が無いだろうが、今、裏社会では、その新しい麻薬の話で盛り上がっているんだ」

「なぜだ?」

 キャミルが答えをあせっているようにハシムに訊いた。

「その新しい麻薬は、これまでの麻薬のように吸引きゅういんや注射で体内に取り込むのではなく、普通の飲み薬と同じく水で飲むだけというお手軽さが受けている。そして、もう一つ注目されているのが、警察の現場で使用されている麻薬探知機ですぐに探知できないということだ。つまり、俺がやったみたいに、専門の検査機関に持ち込んで、成分分析検査をしなければならないが、その検査には、三日ほど掛かってしまう」

「なるほど。取引現場に踏み込んでも、それが麻薬かどうかがすぐに分からないのでは、警察も機動的な取り締まりがしにくいな」

「そういうことだ、キャミル。容疑者を拘留こうりゅうしておいて、押収したブツが麻薬じゃなかったってことになったら大変だからな」

「しかし、ヨトゥーンで犯罪が行われていることは確かなようだ。しかも、それに軍の人間も絡んでいるかもしれないということか?」

 キャミルがひとごとのように言ったことには答えず、ハシムはシャミルを見ながら話し掛けた。

「シャミル。シャミルは、そのフェーデ教会の教祖という奴を見たんだろう。見覚えのある顔じゃなかったのか?」

「はい。じかにお会いしたことはありませんが、写真で見たことがあるかたでした」

「誰だったんだ、シャミル?」

 キャミルがちょっといらついた様子で訊いた。

「ヨトゥーンに探査に行って行方不明になっている探検隊のリーダーだった、ゲルセミという探検家のかたでした」

 ハシムは、シャミルの答えに満足そうにうなづくと、話を続けた。

「シャミル。君の頭の中では、もう物語の筋書きは全部見えているんだろう」

「はい」

「さすがは俺の嫁だ」

 さりげなく、シャミルを「俺の嫁」呼ばわりしたハシムだったが、シャミルは華麗にスルーした。

「ハシム殿も見えているのではないのですか?」

「ははは。じゃあ、俺が考えついた筋書きを披露ひろうするか」

「お願いします」

「間違っていたら、その都度、指摘してくれ、シャミル」

「分かりました」


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