表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-08 仮想現実の国盗り物語
185/234

Scene:11 御前会議

 午後零時。

 清洲城きよすじょうにおいて御前会議ごぜんかいぎが始まった。

 列席したプレイヤー家老は、伽魅琉キャミルを含め、十二名だった。

 新参だったが、マサカド退治で名を上げていた伽魅琉キャミルが、信長から最初に指名された。

「そちの意見はいかがじゃ?」

「はっ! ここはいくさあるのみ! すべての敵を蹴散けちらしてやりましょうぞ!」

 伽魅琉キャミルの好戦的意見に同意したのは誰もいなかった。

伽魅琉キャミル殿! 伽魅琉キャミル殿は、今の状況が分かっておるのか?」

「分かっているからこそ、日本を統一しようとしているのです」

「ログアウトできないことではない! 痛みを感じるバグのことじゃ!」

「もちろん知っています」

「そのバグが直るという確かな情報が無い以上、進んでいくさに参加しようなどと思う者はいませんぞ!」

「そうでしょうね。しかし、我が陣営には、『竜之目党』がいます。今の異常事態を打破するために、自らの命を投げ出す覚悟をしている者どもです」

「……そうであったな」

「兵が集まらないのは、どの勢力も同じです。それであれば、我が竜之目党の百人の軍勢のみでも、合戦では、大きな力となるはずです」

「しかし、他の勢力にも、竜之目党と同じような武士団ギルドが無いとは限らない。そして、一旦いったん、宣戦布告をしてしまうと、勝敗が着くまで戦争を止めることはできないのですぞ。ここは各勢力とも穏便おんびんに事態の好転を願っている時であり、一人織田家のみが突出することは避けなければならない」

「このままログアウトできなくても良いのですか?」

「このままログアウトできないと言い切れるのか?」

 ある程度の地位にある者は、その地位に憐憫れんびんとしてしまう。織田家の家老達が、どの勢力も兵を起こさないことが予想される今回の日本統一イベントで、無茶をする必要は無いと考えてしまうことも、やむを得ないことだった。

「また、今回、無理をして、周辺勢力と軋轢あつれきを残すことになってしまっては、今後のためにならない!」

「現在、織田家は大名家の中では、上位の勢力を保っているが、他のすべての勢力を敵に回すだけの圧倒的な戦力を有している訳ではない。そんな状況で、周辺勢力の全てとの友好度を下げてしまうことは危険だ」

「次のイベントまで、領国内の内政を充実させ、軍事力の増強を図る方が得策とくさくかと」

 他の家老達からは、合戦見送りの意見が相次いだ。

「他に意見は無いか?」

 信長が家老達を見渡しながら言った。

 しばらくの沈黙の後、信長が何かを告げようとした時、控えの間から声が掛かった。

火急かきゅうの伝言なれば、失礼いたしたい」

「苦しゅうない! 入れ!」

 控えの間のふすまが開くと、忍者身分の家老と言える忍者頭にんじゃがしらプレイヤーが座っていた。

 その後ろには、紗魅琉シャミルも控えていた。

「何事じゃ?」

 信長が甲高かんだかい声で問いただすと、忍者頭にんじゃがしらも混乱しているようで、目を泳がせながら報告した。

「今川家の家老が、当家への仕官を求めて参っております」

「寝返りだと?」

「して誰じゃ?」

「そ、それが、か、家老全員でございます」

「何?」

 御前会議に列席していた者全員が、呆気あっけにとられてしまった。

「どう言うことじゃ?」

「こちらにおります上忍じょうにん紗魅琉シャミルが、全員を寝返らせてございます」

「何と!」

紗魅琉シャミルとやら! 近こう寄れ!」

 信長に呼ばれて、前に進み出た紗魅琉シャミルは、正座をして座った。

天晴あっぱれである! 褒めてつかわす」

「ありがとうございます、お殿様」

「その者は、我が竜之目党の者でございます」

 誇らしげに紗魅琉シャミルを紹介した伽魅琉キャミルは、家老達を見渡した。

「いかがですかな? 今川家には今、家老プレイヤーは一人もいません。軍団を編成することすらできないのです。目の前に、ただのご馳走ちそうがぶら下がっているにもかかわらず、誰も食べないのですか? 早くしないと他の勢力に食べられてしまいますよ」

 今まで、開戦を反対していた家老達は口を開くことができなかった。

紗魅琉シャミルには、これから斉藤家の調略ちょうりゃくに行ってもらいます。そして、我々は、軍馬を駿府城すんぷじょう、そして稲葉山城いなばやまじょうに進めましょうぞ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ